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【完結済】髪が短いだけでボーイッシュだなんて決め付けないで!~JKがオネエやお嬢様を仲間にしながら謎解き・脱出する話~  作者: YoShiKa


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30/30

30.アカネ、寝起きで迷い込む






 白い光が溶けて消えたあと、私たちが立っていたのは公園の一角だった。

 揺れている無人のブランコ。

 誰もいないシーソーに、すべり台。

 おもちゃのスコップとバケツが置かれたままの、砂場。


 セミの声と肌を焦がす日光が、木の間から落ちている。


「……」


 ハッとしてスマートフォンを取り出した。

 そこには、何件もの通知が溜まっている。

 電波は、しっかりと届いていた。


「……公園、ですよね」

「そうみたい」


 噴水の真ん中に、白い石があって、そこにたくさんのカエルがいる。

 カエルっていっても、作り物だけど。

 見た目そのままに"カエル公園"って昔は呼んでいた。

 通学路の、途中にある公園。


「……あちらが、駅ですよね」


 アオイがおずおずと問いかけてくる。


「そーねェ、バス停が向こうにあるハズよ」


 そしてアヤトキは、公園の外に視線を向けた。

 ふたりとも、この公園を知っているみたい。

 公園を囲む低い木の向こう側を、自転車に乗った子どもたちが通りすぎた。

 噴水近くにある時計を見ると、八時少し前。

 遠くから、車の音も聞こえている。


「……出られたんだ」


 ぽつりとそう言うと、アオイがへなへなとその場に屈み込んだ。

 私も、ゆっくりと隣に屈む。

 長袖を着ているアオイは、とても暑そうに見えた。


「……スカイさん、どうなってしまったのでしょう」

「わかんないよ……出られない、よね」

「スカイさん……」


 アオイが、泣きそうな声を漏らした。

 公園を見渡しても、スカイはいない。

 スカイは、頼んだことは何でもしてくれた。

 書架のときは、本気で焦ったくらい全力だった。

 最後に、何を言っていたのかな。

 どうして、あんな強引にボックスに入れてきたのかな。


 何を考えていたのか。結局、わからないまま。


「……何を、言ってたのかな……」


 声は、全く聞こえなかった。

 あんなに騒がしい人なのに。

 ボックスの外で、私たちに何を言っていたのか。


 私たちを見上げるスカイは笑っていた。


 もしかして、また檻に入れられちゃうのかな。


「……スカイも、入れてあげたらよかったのかな……」


 思い返すと、後悔しかない。

 あの数字に気がついたとき、何か言えば良かったのに。

 数字の意味がわかんないけど、意味があったはずなのに。


 ぐすっとアオイが鼻を鳴らした。

 見ると、両手で顔を覆っている。

 そういうことされると、悲しくなってきた。

 スカイだって出たかったはずなのに。

 私たちだけ出ちゃって。


「ちょっと、泣かないのよ。スカイは助けてくれたんだからァッ」


 アヤトキが私たちの正面に屈んで、ふたり揃って抱き締めてきた。

 とんとんと撫でられて、やばい。ちょっと泣きそう。


「アンタ達がここで泣いてたって、スカイは喜んだりしないでしょッ」


 そうかもしれないけど。

 でも、出そうになっちゃうのはどうしようもない。

 じんわりと目の前が滲む。

 アオイはもう泣き出しちゃっていて、私もそろそろやばい。


 スカイといっしょに出る方法、本当になかったのかな。





















「女の子を泣かしちゃいけねェんだぜェエエッ!!?」

「ぎゃああぁぁああっ!?」

「わぁああぁああぁッ!?」



 大声が聞こえた瞬間、私は後ろに転んで尻餅をついた。

 ついでに、アヤトキも横向きに倒れて悲鳴を上げている。

 アオイは逆に、顔を覆っていた手を下ろして立ち上がった。


「──スカイさんッ!」


 そして、名前を呼んだ。


 私たちの正面。

 ちょうど、アヤトキの真後ろだった場所。


 そこにスカイが立っていた。


 白衣を羽織って、ひらひらと手を振っている。


「スカイさんだぜェエエエエッ!!」


 大声が公園に響き渡る。

 私もアヤトキも、理解が追いつかない。


「──どういうコトなのよッ!?」


 アヤトキが回復する方が早かった。


「アンタッ、ホンットーに!? ホントにスカイね!?」

「言ってんじゃねェエかよォオー! 青木澄空でーすッ!」

「うわ、ホンモノだ……」


 ニセモノも何もないとは思うけど、思わず出ちゃった。

 横座りになって抗議しているオネエを置いて、先に立ち上がる。

 そして、スカイに近づいて手を伸ばす。


「んぶっ」

「ホンモノだっ」


 頬に触れると、感触があった。

 ぐいぐいむにむにしても、消えたりしない。


「アカネちゃん、それはやめてあげなさい……」


 後ろからオネエにやんわりと注意された。


「スカイも、ちょっとは抵抗しなさいね」


 流れでスカイまで注意された。


「ごめん」

「イイぜーっ、気にしてねェからァアアッ!」


 手を離すと、スカイは笑いながら後ろに下がって、その場でぐるんと回った。

 羽織っただけの白衣の、長い裾がひらりと広がる。

 ついでに長すぎる髪も大きく揺れた。


「けど、どうやって出たの?」


 この上ない疑問。

 問いを投げると、スカイはぴたりと動きを止めた。


「みんなが約束を破らなかったからだぜェエエッ!」

「約束ゥ? 何よ、それ」

「ないしょにしなかっただろォオオッ!? うそもつかなかったよなァッ!」

「ええと、それは花壇の……?」


 スカイの言葉に誰も追いつけない。

 困惑気味の私たちに向かって、スカイは笑みを浮かべた。



「ないしょにしないで! 隠さなかった!」


「うそをつかないで! 嘘はつかなかった!」


「ウラギリモノハイラナイ! 裏切ったら、戻れない!」


「誰も裏切らねェでェエッ、嘘もつかなくってェエッ、隠さなかったからァアッ!」



 声を上げるスカイが、大きく腕を広げた。

 アヤトキも、アオイも、ぽかんとしている。

 私だって、よくわからなかった。


 スカイが誰と、何の約束をしていたのか。


 私たちが誰に、どういう約束をさせられていたのか。


「スカイ──」


 知りたくて、名前を口にした私を見てスカイは笑った。

 一歩だけ踏み出した。

 なのに、言葉と同時に足も止まる。

 あのとき、スカイは何を言っていたのだろう。

 上がるボックスを見上げていたときも、笑っていたけど。



「だから、みーんな大正解なんだってェ」



 みんなと言われて振り返る。

 だけど、そこには誰もいなかった。


 さっきまでいたはずの、ふたりの姿がない。


 公園はとても静かで、セミの鳴き声も聞こえてこなかった。

 静まり返った公園に人の姿がない。

 沈黙は雄弁──そのフレーズを、ふと思い出した。

 もう一度、スカイを見ようと前を向いた瞬間。

 ぎらついた光が目に飛び込んだ。


 とっさに目を閉じて──




「──……は?」




 開いたら、天井が見えた。

 思わず声を出して起き上がる。私はベッドにいて、いや、自分の部屋にいた。

 部屋の明かりはついたまま。

 テレビもつけっぱなし。今はニュース番組になっていた。

 カーテン越しに差し込む光が、朝だと知らせている。


 スマートフォンは枕元に転がっていて、いじったまま寝落ちしたことを思い出した。


「……ゆめ?」


 つぶやいてみたけど、現実味がない。

 夢にしては、ずいぶん疲れる夢だったな。

 身体を見ると、学校指定のジャージを着ていた。


 

 何か硬いものがポケットに入っている。


 まさかと思いながら探ると、金色のカードと名刺が出てきた。

 これ。確かに受け取って、自分でポケットにねじこんだ記憶はある。

 未成年に営業するとか、何事だよ。


 私の名前が書かれたキンピカのカードを裏返してみると、名前ではない文字が並んでいた。



 "Did you enjoy"



 頭を抱えそうになったそのとき。テレビから黄色い悲鳴が聞こえてきた。


 数ヶ月ぶりに姿を見せたという長髪のバンドマン。

 テロップで示されたその名前に、私は思わずカードを落とした。


 笑って手を振り、仲間に促されて歩き出す青年。

 見覚えがあった。

 いや、見覚えなんて話じゃない。




 数秒後、私はスマートフォンと名刺を手にした。

完結までお付き合いいただき、ありがとうございました!

夏季集中連載全30話、これにて終了です。

読んでくださった方、ブクマに入れてくださった方、評価してくださった方。

みなさん、ありがとうございます!


他にも連載しているものがありますので、よろしければ覗いていってくださいませ。

ちなみに名刺は例のアレです。そうアヤトキのアレです。



そのうち続編も書きたいかなぁと思います。

(せめて話数分くらいブクマついたら嬉しい…)

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