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【完結済】髪が短いだけでボーイッシュだなんて決め付けないで!~JKがオネエやお嬢様を仲間にしながら謎解き・脱出する話~  作者: YoShiKa


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25.アカネ、カードを得る






「で、このカードをどうするの?」


 名前が書かれている理由は、無視するとして。

 カード自体の使い道に迷う。


「カードキーのようなもの、という事でしょうか」


 アオイが困惑した様子で首をかしげた。

 その横で、アヤトキも首をかしげている。


「キーにしたって、押し込むところもないわよねェー?」


 確かにドアには、それらしい機械なんてついてない。

 ちょっとした凹凸の模様があるだけ。


「……ん?」


 ちょっとした凹凸の模様。

 色んなサイズの長方形が無作為っぽく並んでる。

 そのうちのひとつが、いい具合にカードと同じくらいか、一回り大きい気がした。


「……」


 ぺた。

 カードを押し付けてみる。かなりぴったりサイズ。

 だけど、何も起きない。


「4が答えでしたから、全て重ねるのかもしれませんね」

「ああー、そうかも。みんな、ちょっと貸してー」


 アオイの一言にうなづいて、後ろに手を出す。

 一枚、二枚、三枚、よし集まった。

 カードをひとつに重ねてから、再びドアに押し当てた。


 すると、呆気なくガチャと鍵の開く音がした。


 カードを落とさないように回収して、ちらりとアヤトキを見る。

 アヤトキは、ゆっくりとうなづいてからドアノブに手をかけた。


「……開いた」


「開いたわね」


「開きましたね……」


 普通に開いた。

 何のひねりも演出もなく、ただただ当たり前のように開いた。

 三人で顔を見合わせたけど、進まないという選択肢はない。

 理由は簡単。

 ここにいたからって、どうにもならないから。


「……カード、どうする?」


 とりあえず、カードの持ち主たちに差し出してみた。


「もらっておこうかしら」

「じゃあ、アオイも」

「はい」


 全員分のカードをそれぞれに返した。

 私が持っていても、仕方がないだろうし。

 スカイにカードを返したところで、アヤトキがグイッとドアを押し開いた。


 そこにあったのは、床も天井も壁も石で出来た廊下。


 ゲームのダンジョンっぽい。


 ただ、明らかに今までとは違う感じがする。

 建物というよりは、洞窟に近いっていうか。

 入ったことないけどさ。


「何か、ひんやりしてるわねェ……」


 ドアを開いた姿勢のまま、アヤトキが振り返る。

 確かに、少し涼しい空気が出てきてるっぽい。


「風があるみたいですね」

「外かな?」


 ここから外に繋がっているのなら、ゴールっていうことになるけど。

 ぬか喜びはしたくない。


 後ろにいるスカイは静かなままで、振り返るときょとんと目を丸くされた。


「──まぁ、考えても仕方ないし、行こうよ」

「そーねェ。アタシは賛成よ」

「はい。私も、アカネさんについていきます」


 三人の意見が揃ったところで、スカイを振り返った。

 今度は三人分の視線を受け止めたスカイは、不思議そうに首をかしげている。


「聞いてなかったな!?」

「行くって言ってんのよ!」

「ほらっ、さっさと来て!」

「とっとと行くわよ!!」


 オネエと私の連続口撃になった。


「オーケェエイ!」


 スカイの返事は、軽い。

 これでもかと軽い。

 ついて来る気になったスカイに背を向けて、ひょいっと一歩を踏み出した。


 良かった。落とし穴とかなかった。


 私に続いてアヤトキ、そしてアオイ、次にスカイが出てくる。


「アカネちゃん、あんまり離れないよーにね?」

「わかってるよ」


 さすがにここで単独行動はしたくない。

 どんな命知らずだよって話になっちゃう。


 こっちの通路は丸いトンネルっぽくなっているけど、洞窟なのかどうかはわからない。

 天井までは、2メートルか、ひょっとしたら3メートルくらいはありそう。

 壁は遠くて私とアヤトキが並んで歩いても狭く感じないほど広い。


 確かにひんやりしていて、奥の方から風が来ているみたいではある。

 照明器具は見えないけど暗くはない。

 どうなってるんだろ。


 奥に進んでいくと、壁に白い線を見つけた。


「……何だろ、これ」


 白い線。

 というか、引っ掻き傷のような。

 クギみたいなもので、引っ掻いた感じがする。


「やなカンジね」


 白い引っ掻き傷は、進むにつれてどんどん増えていく。

 

 壁。

 天井。

 床。


 あらゆるところにあって、天井とかどうやって引っ掻いたんだって感じ。



「──……っ」



 何となく壁を眺めていると、文字があることに気がついた。

 ただの引っ掻き傷ではなくなっている。


 進むにつれて、文字は明らかに文章を形作り始めていた。



「……うっわぁ」



 角を曲がったところで、ギブアップ。

 私の足は、完全に止まった。

 隣を歩いていたアヤトキも立ち止まる。


 後ろでは、アオイが息を飲む音が聞こえた。 



 曲がり角の向こうにも、同じ床と壁が続いている。


 ただ、その壁には大量の文字が並んでいた。



  引き返せない引き返せない引き返せない引き返せない引き返せない

  偽りを許すな、偽りを許すな偽りを許すな偽りを許すな偽りを許すな

  戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ

  連なり連なり水の底 恐れるな躊躇うな 警告だ、これは警告だ

  仲間はずれ 偽りはいらない 嘘はつかないで 約束を守って

  鍵は名前。名前は鍵。連れ戻すための音にうそつきの羽を入れろ

  真実は眼、眼の先には真実、真実の口は箱の中、箱には何も入らない

  秘匿は罪 隠匿は罪 秘匿は罪 隠匿は罪 保身の業 自我の業

  決断は訴えの声を失わせる 迷いは劣悪

  最低最低最低最低最低 あんたなんかあんたなんかあんたなんか

  来るんじゃなかった 従わなければ 沈黙は雄弁 偽りの音


  卑劣を許すな、卑劣を許すな 許すな 偽りは盾、真実は矛


  青い青い青い青い青い 祈るな願わず選べ 青い青い青い青い青い


  うそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつき


  お前じゃないお前じゃないお前じゃないお前じゃない



  僕だけ僕だけ僕だけ僕だけ僕だけ僕だけ置いていかないで



  こちらどうぞ、どうぞどうぞ 可愛らしいお嬢さん、お手をどうぞ



  ここから出して いかないで 憂鬱の底は死の淵 憂いを知れ



  おねがい どこにも いかないで ここにいて ここから出て ここから ここから



 ぞくりと背が震えた。

 踏み出す一歩が、なかなか出てくれない。

 いろんな人の字で書かれている。

 ここに来た人たちの文字なのかな。


 ごくりと喉が鳴る。


「文字がいちいち怖すぎる……」

「見ちゃダメよ。意味なんてないわ」

「意味、ですか……」


 アヤトキの言葉を、アオイが繰り返した。


 意味があるのか、ないのか。

 読んでいられない。


 ぞわぞわと背筋の震えが止まらなかった。



 怖いというか。



 気味が悪かった。

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