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【完結済】髪が短いだけでボーイッシュだなんて決め付けないで!~JKがオネエやお嬢様を仲間にしながら謎解き・脱出する話~  作者: YoShiKa


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17/30

17.アカネ、声の主を探る






 今度は、三人で階段を上がる。

 先頭がアヤトキ、次にアオイで、最後が私。

 シンガリは任せるとかオネエに言われたけど、どういう意味なの。


「何かあったら、すぐに逃げるわよ? イイわね?」

「異議なし」


 この場合の逃走は、戦略的撤退ってヤツだと思う。

 逃げるが勝ちっていうし。あれ、違うかな。


 階段を上がり切ると、真っ直ぐに廊下が伸びている。

 ひたすらにストレート。

 アオイを見ると、突き当たりを指差した。


「あそこで、さきほどは左に廊下が続いていました」

「良かったわ。行き止まりじゃないのね?」

「はい」

「じゃあ、行くしかないね」


 下は軽い迷路みたいだったけど、逆にこっちは一本道。

 紺色の絨毯が敷かれた廊下を歩いていく。

 窓はない。ドアも見当たらない。

 このムダに長い廊下シリーズ、ちょっと飽きてくる。

 アオイの言ったとおり、真っ直ぐ伸びていた廊下は急に左側に折れていた。

 角を曲がったあたりで絨毯が途切れ、石畳の道になっている。

 急に雰囲気がガラリと変わった。


「……何あれ」


 更に進んでいくと、鉄格子が見えてきた。

 右手側には壁だけが続いている。

 壁には、レリーフって言うのかな。ヘビっぽい彫刻がある。あくしゅみー。

 左手側には、等間隔で檻みたいな部屋がずらりと並んでいる。

 何だろう。洋画とかに出てくる刑務所みたい。

 刑務所っていうか、もっと古いかな。本当に、ただの牢屋っぽい。

 ゲームに出てくるやつかな。


「……やーね。これこそ、地下にありそうなものよねェ」

「アヤトキが入ってたら見ものだったとは思う」


 助けなきゃいけない感がひしひし伝わってくると思う。

 まず、知り合いが牢屋にいたらビビる方が先だろうけど。


「はぁあッ!? イヤよッ! こんな狭くてさびしいところ!」

「そこじゃないだろ」


 騒ぐアヤトキを先頭に、アオイと並んで進む。

 今のところ、声は聞こえて来ない。

 ひょっとして、空耳だったのかも。


 確認しようと思ってアオイを見たとき──




 ガンガンガンガンガンガンガンッ!


 金属を激しく叩く音がした。

 そして、



「── 出 せ よ ォ オ オ オ ッ ! 」




 響き渡ったのは男の声だった。

 だけど、アヤトキじゃない。


「ぎゃあぁあああっ!?」


 悲鳴を上げたアヤトキが、私とアオイの手を取って駆け出した。

 私もアオイも、悲鳴どころではない。

 急に腕を引っ張られて、肩が痛かった。

 牢屋から離れて廊下を曲がる。

 そして、更に走って走って、階段へと辿り着いた。


「──何なのアレ!?」


 アヤトキの第一声に応じる息がない。

 乱れた呼吸を整えるのに、私もアオイも精一杯だよ。


「だ、誰か、誰かいましたね……」


 壁に手をついて息を整えていたアオイが、がんばって声を出した。

 私は廊下に座り込んだまま、立てない上に声も出ない。

 アヤトキは両手を膝に当てて、肩を大きく上下させている。


「はぁー、んもう、やだ、ビックリしたわァ……」


 私はアヤトキの声にもびっくりしたけどな。

 廊下を振り返るけど、追いかけてくる様子はない。

 声の方も、さっきの一度きりで終わっている。


「……っはぁー、誰か、閉じ込められてたね……」


 いくらなんでも、あのヘルプだと誰も助けてくれそうにないけど。

 そもそも、こんな奥まったところに通りかかる人なんていそうにない。

 男の人っぽいけど、誰なんだろう。


「……もしかして、私たちのように迷っている人かも……しれない、ですよね」


 呼吸が整い始めたアオイが、遠慮がちに言う。

 その可能性は、全くないわけでもないけれど。

 どう、なんだろう。

 ちらりとアヤトキを見ると、困ったように首をかしげられた。

 私に一任しないでほしいな。


「……戻ってみる? 檻の中だったら、様子見くらいできそうだし」


 鉄格子を壊せるのなら、私たちが近づいた時点でやってそうだし。

 私の提案に対して、アヤトキとアオイが顔を見合わせた。

 いや、私は別にそんな積極的に戻りたいわけじゃないよ。


「ほっといてもいいと思うけど」


 そう言ってみると、アヤトキもアオイも困ったように視線を外し合った。

 何してんだよ。


「そー、ねェ……困ってるかもしれないし、ねェ?」


 アヤトキが首をかしげながら、私とアオイを見た。


「行ってみますか?」


 アオイは、私とアヤトキを見て問いかけてきた。

 リーダーシップとかないのか。


「……動物園だと思えばイイのよね」

「そんな、人をケモノ扱いにしてまでか」


 動物園って。

 アヤトキの言葉のチョイスに、ちょっとした悪意があるような気がした。

 一足先に歩き出すと、アヤトキがあわてた調子で駆け寄ってきた。


「んもうっ、単独行動はダメって言ったでしょっ」

「だって」


 なかなか決まらないし。

 うだうだしているのめんどっちいし。


 眉間に皺を寄せると、アヤトキはアオイを振り返って手招きした。


「あの角を曲がったら、おしゃべり禁止ね? せめて小声で話しましょ」

「なんで?」

「ギリギリまで近づくためよッ!」


 相手は野生動物かな。

 アニマルチャンネルでそういうの見たことある。

 アオイがさっそく、小声で「はい」と答えた。

 今はまだいいだろ。


 ゆっくりと歩いて、角まで近づいていく。

 左に曲がると、やっぱり石の廊下が続いている。

 今度は私とアヤトキが前、後ろからアオイがついて歩く形。

 静かに──と思ったけど、床が石のせいで靴音が鳴っちゃう。

 サイレント作戦、意味なし。


「──……」


 それでも一応、誰も声を出さない。

 ゆっくりと、なるべく静かに歩いていく。

 オネエはヒールを脱げとか思った。

 よくそれであんなに走れたな。


 奥に行くと、一番大きな檻──じゃないか。牢屋があった。十畳くらいはありそう。

 四角い部屋の中に、丸い檻がはめ込まれている形。

 壁の前にも鉄格子があって、意味があるのかもわからない。


 少し明るい廊下とは対照的に薄暗い中、誰かが床に座り込んでいた。

 あぐらを掻いて、うつむいている。

 長い髪が床に広がっているけど、何だ。すごい超ロングだ。

 白っぽい服も長い。白衣かな。


「……」


 それぞれに目配せをすると、アヤトキがうなづいた。

 ゆっくりと、牢屋に近づいていく。

 鉄格子は古いものではなさそうで、さびている様子もない。

 牢屋の人は、ぴくりとも動かなかった。

 寝ているのかな。寝ていてほしい。


「……どうするのォ?」

「どうするって言われても」


 小声で言葉を交わしながら、周りを眺める。

 鉄格子には扉なんてついていない。

 でも、格子同士の幅は、手が入るかどうかくらい。

 人が抜け出せる隙間じゃなかった。


「何かないのかな?」

「鍵、ですか?」

「やだァ、カギアナ自体がないわよォ?」

「鍵自体はあるけどね」


 ずっとポケットに入ったままになっている。

 音楽室で手に入れたクローバーみたいな頭の鍵。

 それを取り出してみるけど、確かに鍵穴がなかったら意味がない。


「ここの格子は全部はめ殺しになってるのかしらねェ」

「はめごろし?」

「動かないってコト。フィックス窓みたいな感じよ」

「ああ、そういうことか」

「仲良くしてんじゃねぇよォオオッ、俺も入れろよォオッ!」

「ぎゃあああぁあああッ!?」


 いつの間にそこまで来たのか。

 鉄格子越しとはいえ、手が届く範囲まで来られていた。

 悲鳴を上げたアヤトキが思い切り鉄格子ごと蹴りつける。

 鉄格子を握っていた男の人は、すぐに後ろへと下がった。

 当たってたら、痛そう。


「びっくりするでしょッ!? いきなり近づかないでッ!」


 ガンガンガンッと連続で鉄格子を蹴り続けるオネエ。

 怖すぎる。

 男の人は、もう距離を取っている。

 アオイが完全に怯えているけど、いいのかオネエ。


「許可なくレディに近づくなんてサイッテーよッ!?」


 レディじゃないけどな。

 ひとしきり暴れたオネエが、やっと脚を下ろした。

 大丈夫かな。ヒール折れてないかな。

 アヤトキにかかれば、ヒールも凶器だな。

 ちらりと見ると、男の人は首をかしげている。

 長い髪で顔のほとんどが見えていない。


「……うん。ヤバそう」


 髪が長すぎるのも怖い。

 伸ばしっぱなしでああなった、という感じでもないしな。

 ファッションなのかな。


「アイツ確実にヤバいわよォッ!」


 アヤトキが声を上げると、アオイが困った様子で眉を下げた。

 こんなに騒がれたら、私でも困る。


「あの雄たけびみたいな声、聞いたでしょっ!?」


 あんたもな。

 そう思ったけど、ひとまず飲み込んだ。

 流れ弾に当たりたくないし。

 八つ当たりされたくもないし。


「で、でも……」

「ムリよ、ムリ!」

「困っている人かもしれないですし……」


 アオイががんばって言い返すと、アヤトキはぐっと言葉に詰まった。

 さわいでいるときでも、アヤトキは一応話を聞くタイプのオネエだ。


「何だよォオ、君らもこそこそ近づいて来たじゃねェかよォオオー……アオイコだろォオっ!?」

「うっさい、ちょっと黙ってて!」


 男の人が騒ぐから、今度は私が鉄格子を叩いておいた。

 会話に入ってくるから、面倒くさいことになるんだよ。

 本当に黙るあたり、めっちゃ素直な人かもしれないけど。

 刺激するとアヤトキがおかしくなるから、大人しくしておいてほしい。


「三対一だけど、こっちはか弱いレディーばっかなのよ? 何かあったらどーするの?」

「レディー的には、二対二だけどな」


 確かに万が一のことがないとは言い切れない。

 それは、どのメンバーにも言えることだけど。

 互いに初対面。知らない人ばっかりだし。

 でも、オネエは最初に会った人だから、なんとなく協力しちゃった。

 アオイは同年代だっていうのが、割りと大きかったかも。


 もう一度、男の人を見る。

 白衣姿で顔が見えないくらいもっさりとした長髪。そして、あのしゃべり方。

 危ない人ナンバーワンだ。この場所じゃなくても、街中でも近づいちゃいけない人っぽい。

 展示室で遭遇しても、いっしょに行動したかどうか怪しいくらい。

 ていうか、スキンヘッドのチャイナドレスオネエより怪しいのがもうヤバい。

 個性が渋滞している。


「話を聞いてみるというのは、どうでしょう?」

「んんー、そーねェ。それくらいなら、いーかもしれないけど……」

「でも、あれってまともに話が通じる感じかな」


 微妙な気がしてくる。

 こそこそと三人で話していると、男の人がまた鉄格子を揺らした。


「──うぉいっ、こっから出せよォオオッ!」

「アンタを出したら確実にヤバイって、目に見えてんのよッ!?」


 アヤトキの一喝で、男の人はまた大人しくなった。

 素直なのか何なのか。

 すとんとその場に腰を下ろして、首をかしげながら私たちを見上げている。

 顔はよく見えないけど、声からすると若い人っぽい。

 白衣の袖から出てる手とか、首元の感じも若い気がする。


「……けれど、かわいそうな気もします……」


 アオイがおずおずと声を出した。

 閉じ込められた人なら、確かにかわいそうだけど。


「だけどっ、どう見たって噛み付くタイプでしょ!? 噛み殺されるわッ!」

「ケイドウミャクなら一発だぜェエエッ!?」

「ほらぁあああっ、もうヤバイコト言ってる!」


 うん、まあ。うん。

 にぎやかさだったら、大体同じくらいだと思うな。


 鍵が使えそうなところはないけど、それならどこかに仕掛けがありそうな気がする。

 壁を眺めていると、ヘビの彫刻が一定間隔になっていることに気がついた。

 ちょうど、それぞれの牢屋の前になっている。感じ。


「……あ」


 近づいて眺めると、ヘビの目に丸い玉が埋め込まれていた。

 どれもこれも、目がある。

 でも、色が違う。


 仲間外れの色──地下の壁に書かれていた問題文をスマートフォンで確認した。


 有り得るかもしれない。

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