08 ショッピングモール3
「ねぇねぇ!あそこいこ!」
その先にはゲームセンターがあった。
どうしよう、ゲームなんて最近ずっとやってないぞ。しかもゲームセンターなんて初めてだ。
「そう言っても、サナってゲームできるの?」
「私は触れないけど、あれが欲しいの!」
欲しいとなると、クレーンゲームですね。ああゆうのはどうやっても取れる気がしない。だけど、さっきサナの欲しい本を買わなかったし、せめてなにか1つでもあげないと可哀想だ。
サナが欲しいって言ってたのは、なにかのキャラのクッションだった。まだ箱のやつよりも取れそうな気がする。
━━5分後
全く取れない。なんだこのリング!回転ばっかして!もう諦めよっかな。
「やめちゃうの?あとちょっとでとれそうなのになー。」
「ふぃっ!」
びっくりした、こんなとこで人に話しかけられるなんて。
「えっと、いつから見てました?」
「最初のほうから。」
まじか、つまり後ろに人がいるのにずっとやってたのか。
「すいません!まってましたよね?」
「あー、いいよ。今ぶらぶらしてただけだから。」
よかったぁ。優しい人で。それで綺麗な人だな。巻き毛?の茶髪で少し僕よりも身長が高くて。
「ちょっと、あんま女子をジロジロみない方がいいと思うけど。」
ニヤニヤとからかいながら言ってきた。
「あ、すいません!」
「ま、いいよ。それよりあとちょっとだし取っちゃお。」
「あ、そうですね。」
クレーンゲームに向き直すと、背中に柔らかい感触がきて、そして手に手を重ねてきた。
「え、あ、あの。」
「おねーさんが手取り足取りでやってあげるよ。」
ほぼほぼ僕は何もせず取ってくれた。
「はい、これ。」
「ありがとうございました!」
その一言を言いすぐさまその場から離れた。
息が荒くなる。走ったせいではない。あの人のせいだ。自販機で水を買い、すぐに飲みきる。
「やったぁ!可愛い!」
サナは満足気だ。良かった。まだ背中の感覚が残っている。
あの人は何だったのだろうか。
そんなことを考えながらまた歩き始める。