01 友達
「ねー、あそこの人さ雨の中ずっと立ち尽くしてるよ。」
「うわっ、ほんとだー、彼女にでも振られたんじゃない?」
「かわいそー。」
僕よりもひとつ上か同学年ぐらいの女子高生が思ってもないことを喋っている。声が大きいからこっちにまで聞こえてきた。
その通りだよ、振られたんだよ。だけど彼女じゃない、勇気を振り絞った告白だったのだ。振り絞る勇気すらなかったのかもしれない。
雨が服に染みてくる。まだ冬は終わったばかりだからめちゃくちゃ冷たいのだろう。だけど、そんなことは考える気にもならなかった。
それから少し時間がたち、動く気になれた時に怪しげな光を見つけた。周りはその光には気づいてないようだが、自分にははっきり見えている。これを追えば何かあるのかもしれない。そんな小学生のような安直な考えが浮かび、ただ、追っていた。
その光は路地裏で止まった。こんな不良とかが来そうな場所はすぐにでも出ていきたいが、ここからどうすればいいのかが分からない。見ているだけでは何も変わらない。少し深呼吸をする。触れれば何かが起こる?
僕は恐る恐る触れてみた。指先に光が触れた瞬間光は弾けそこには、
「力が、欲しいか?」
可愛い女の子が出てきた。
「君は、誰?」
「私か?私は悪魔だ!」
確かにそう言われて見れば角もあるし尻尾もある。
「そんなことより、力が欲しいか?」
「いや、力はいいや。」
「え?」
もうどうなってもいいと吹っ切れたのだろう。
「僕と、友達になってくれませんか?」
「え?うーん、いや、いいけど。」
少女は少し顔を赤らめていた。悪魔には友達がいないのだろうか。まぁ、僕も友達なんていないんだけどさ。
「あなたの名前は?」
「黒木翔、君は?」
「私は、サナチ、サナでいいよ。」
僕の初めての友達は悪魔だった。