分かり合える
獣王の拳が炸裂する、それをグレイは全て捌ききる。
「ふん!少しはやるようだな!」
獅子は鼻を鳴らした。
「ありがとうございます、まぁ少しだけですよ」
「だが次の一撃で貴様に致命傷を与えてやろう」
すると獣王は体制を低くし身体を丸めた。
「これは念の為、龍化をしておきましょう」
そう言うとグレイは深紅の鱗に飲まれていく。
厳密に言うと体から発生したものだが……。
そして最終的には顔もドラゴンの様なマスクに変化し、背中からは翼が出現する。
「準備は出来たか?」
「あなたが待ってくれたおかげで出来ましたよ」
「そうか……では行くぞ!」
獣王は一気に貯めていた力を放出させる、よって足から放たれた間合い詰めの一歩でグレイの目の前に迫った。
そして獣王はそのスピードのままグレイに拳を叩きつける。
その瞬間突風が辺りを舞った。
さらにメキメキという音が鳴り響く。
「まぁまぁの技術ですね。」
獅子は驚いた、この技を受けたものからは苦痛の声か無の声しか聞こえなかったから、だが目の前にいる男はただ堂々とそこに立って、自分の拳を手のひらで掴んでいる。
「いやぁ、生身だったら吹っ飛んでましたね」
だったらさっきの音はなんだと言うのだ……。
そして疑問と共に手に痛みが走る。
見ると殴った手の骨は粉々と言ってもいいほどに砕けていた。
獣王はその時悟った。
「そうか、次元が違うのだな……」
「どうしたんですか?」
「グレイとやら、我の負けだ」
獅子はあっさりと膝をつき諦めた
「分かりました、ですがワイルドモードで試さないんですか?」
「無駄だな、しかもお前はそれを分かっているな?嫌味なやつだ」
だがこれにはグレイも驚いていた、何故かパワーアップしていた、今回の獣王戦はもう少し激戦となると思っていたが、予想以上に力がついていたのだ。
「ではこちらの仲間になってください」
「よかろう、隷属か」
「では行きます、我、汝を迎える者、隷属し忠実に尽くせ!」
「仰せのま……すまぬ」
獣王の腹からは光の槍が突き抜けていた。
「ふひひ、あははは!!!!」
獣王の後ろには堕天使が立っていた。
「……きさまぁぁ!!!」
「いいよ!いいよ!僕が見たかったのはその顔だぁ!」
堕天使は見た目は銀髪のイケメンで高身長なのだが、今は顔を歪め現在の惨状を楽しんでいた。
「貴方が堕天使ですか、何故このタイミングで!」
グレイはもはや今はいつもの口調などで話せるほどの落ち着きはなかった。
「なんでって?そんなの簡単じゃあないかぁ!戦い、分かち合い、ラスボスの僕を倒そう!と一致団結!そんな喜びに満ちた瞬間を見逃せるかぁ!そして今からぁ!僕の裁きを受けてもらうよぉ!!!」
「狂っている……」
「ふははは!!!!」




