神速の剣
もうそこからは蹂躙と言っても過言ではない、足の切断、腕の切断、様々な斬り方をした、だがそれでも敢えて即死に繋がる攻撃はしていない、まだ希望を持たせるのだ。
「ほら、頑張ってこの弱そうな男を倒してくださいよ」
爽やかな笑顔を振りまく……これが正に鬼畜だ。
「あっ、あなた達は数で勝っていますわ!全力でやりなさ……」
言葉が途切れた……それはクロムがやられた訳では無い、グレイを取り巻く数十人がもう既に苦しみ、倒れ、戦意喪失していたからだ。
「い、いやよ!来ないで化け物!」
「女性には手を出したくないのですが……手練の獣人がどこにいるか教えてくれませんか?」
「そこまでだ!」
声がした方に振り向くと、そこには鷹の獣人がいた。
そしてそのうちにクロムは逃げ出した。
「あぁ、あなたが手練の獣人ですね、オーラが違いますね。」
「貴様をここで葬ってやる、この神速の剣がな!」
鷹のような獣人は腰に二本の剣を差していた、そしてその目は正義感が滲み出ている……が、あくまでここは世界征服を企む獣人の基地だ、どこかズレているのだろう。
「では私は朱の刃です、まぁ覚えなくてもいいですよ」
「どういう意味だ?」
「「ここであなたは終わりですから」」
「ぐっ!」
突如後ろに現れたグレイの剣を鷹の獣人はかろうじて避ける。
「分身を避けるとは中々ですね、じゃあこのトラップはどうですか!」
グレイはワイヤーを取り出して投げつける、そしてそれはスピードをあげ、鷹の獣人を斬り裂こうと波打っている。
「な、なんだこれは!」
またもや、かろうじて避けるが今度は左腕に少し当たってしまった。
ボトリ
腕が落ちる。
「グァァァァァァァ!!」
「かすった程度でこれですから死ぬ気で避けて下さいね」
笑顔で答える。
「フゥ……フゥ……貴様、だけは、殺す!」
もう既に肩で息をしていた。
「ほら次行きますよ!」
だが今度は鷹の獣人は剣を取り出した、そしてワイヤーに切りかかる。
そのスピードは紛れもなく音速のスピードだった。
「これで終わりだ!」
スパッ
剣が綺麗に切れた……。
「どんまいです」
ニコッ
という音が出そうなくらいの笑顔を見せる、その瞬間、剣を切ったワイヤーが速度をあげ胴を真っ二つに切り裂く。
「ぐっ、獅子王様は、貴様よりも強……」
そこで鷹の獣人は力尽きてしまった。
「次は誰ですかね」
グレイは奥へ歩いていった。




