サシャラside
や、やっと書けた・・・
女性視点は難しい
「魔界軍が魔王を召喚したようだ」
王のその言葉に、場にいる全員が戦慄した。勿論その意味が分からない者は居ない。
過去にも同じことが何度もあった。そのたびに勇者を召喚していた。しかし、全員魔王と相討ちになってしまい、弱点や城の構造は分かっていない。光の巫女も同じように後を辿っていた。
私もかれこれ9回ほど召喚や、魔王城まで同行したりと、様々な場所に立ち会っている。そのたびに、勇者が死んでしまうと同時に、世界が救われることに悲しみを覚える。今では涙も渇れてしまった。
王が言葉を紡ぐ。
「光の巫女よ、今回も――――――」
「皆まで言わなくてもわかっています。それが私の役目ですから」
その言葉に、視線がこちらに向く。そう、私は光の巫女。勇者を召喚し、死地に向かわせてしまう存在。
今回もまた、誰かを不幸にさせてしまう。
そんな自分が嫌だ、とっとと死んでしまいたい。誰かと変わりたい。
いっそ自分で――――――
「―――巫女殿?」
呼ばれた声に気づく。そうだ、ここは自室じゃない。考え事は後だ。
「いえ、何でもありません。準備してきます」
「うむ、すまないが・・・よろしく頼む」
その声を聞き、踵を返す。
(今は、召喚に集中するだけ。それからのことは、後で考える)
召喚の間はいたってシンプルだ。
広さ5メートルの部屋に柱が4つあるだけ。真ん中には3メートルの魔方陣が描いてある。勿論、勇者様を召喚するためだ。その周りに私と他の召喚魔法の使い手7人で囲み呪文を唱える。
これも10回目。もう言葉は覚えた。
『召喚の義によって申し上げる。』
魔方陣に光が灯る。
『我ら、光の巫女とその使いの力を用い。』
光が増す。けれど、まだ言葉を紡ぐ。
『ここに、我らの勇者を迎えたまえ!』
光が辺りを包む。周りのものが目をつむる。直視出来ないほどだ。
流石の私も目を細める。まだこの強さには慣れない。
「――――――来ます」
光が薄れていく。勇者様がこちらの世界に来られる。
そして、また私が・・・
今回来られた勇者様は今の私より2つ位年上だろうか。
今までの勇者様と同じような服を着ている。動作も同じように呆然としている。ここに来たときは意識がはっきりしないようだ。
「お目覚めください。勇者様」
声を掛ける。やっぱり反応がない。何度か呼び掛ける。
「お目覚めください。勇者様」
まだだ。世界を跨ぐときはからだと意識が、離れるのだろうか。
「お目覚めください!勇者様!」
勇者様の目に、光が灯る。
だけど、やはりなにか分かってないようだ。
そりゃそうですよね、急にどこか分からない場所に居るんですから。そのまま周りを見始める。
私や周りの人達を見ても驚く。この服もこすぷれだと思われているのだろう。
・・・そろそろ声をかけよう。
「勇者様」
目の前の青年がこちらを向く。だけど、その目がいつもの方たちと違う。
まるで、何も分かっていないような目をしている。
・・・おかしい、召喚前には呼び掛けがあるはず。それに答えたからここにいるのでは?
「いきなりの召喚にも関わらず、お応えいただき、誠に感謝致します。お分かりかと思いますが、私たちを救って頂きたいのです」
周りの空気が変わる。普段は何も質問を掛けないし、質問すること事態が特殊だった。
何時もなら読んだあと何かしら反応があるのだ。
「呼ばれたけど俺でいいの?」とか、
「俺の力を示すときが来たか」とか、
大体皆さん応じてくれる。
だけど、この人は違った。もしかしたら何かあったのかもしれない。
そして案の定、
「ちょ、ちょっとまて!俺が勇者って、一体何の冗談だよ!」
あぁ、やはり。この方は何も分かっていない。
だけど、喚ばれたということはそれなりに実力があるということ。
「冗談などではありません。貴方は、私たちの希望の“勇者”なのです」
「・・・分かった。何がどうなってるのか分からんが、話を聞きたい。一番偉い人とか居ないのか?」
なんと、かなり冷静な方なのですね。何度もこんなことが会ったのでしょうか。
王は別のところにいることを話しそこに行きたいと言っているが、
「その服で行かれるのですか?背中に血痕がありますが」
その言葉が駄目だったのか突然、
「・・・ああああああああああああああ!!!!!!」
絶叫を上げた。
「ど、とうされました!勇者様!!」
声を掛けるが、まるで聞こえていないかのように声をあげ続ける。
「誰か!光法を!」
「はい!」
右隣にいた者が声をあげる。
彼は王法師にも認められていたものだ。彼なら大丈夫だろう。
「王にも報告を!」
「はい!」
「私も行きます!」
左隣の二人が走り去る。これで少しは安心ですね。
「・・・光法の効きが悪いです」
「それでもなにもしないよりましです。話し掛けてみますからそのままお願いします」
「はい」
彼の前に行き、声を掛ける。
「お、落ち着いて下さい!」
「これが落ち着けるか!」
良かった!返事を返してくれた!なんとか会話ができる。
「一人でパニックになられていてはこちらが困ります!その事を話していただければ、何か分かるかもしれません!」
「分かるわけないだろ!」
「分かります!」
なめてもらっては困る。
「お忘れですか?ここは、勇者様にとって異世界。勇者様の世界とここでは、出来ることや出来ないことが違うのです」
勿論できないことはある。しかし、彼の世界よりはできることがあるはずだ。法術の無い世界だから、仕方ないだろう。
「・・・分かった、話す。だから、何とかしてくれ」
「承知しました。ですが、ここにいるのは『召喚法』の使い手のみ。勇者様が王と話をする間、私が手筈を整えておきます」
「本当に頼んでいいんだな」
「勿論です。私は、勇者様の巫女ですから」
そして、最後に殺してしまうなら、今のうちに力になりたい。
「・・・信用しよう。この世界の最大の誓いは?」
「・・・我が身にかけて、です」
なぜそんなことを?
「そうか。それと、あんたの名前は?」
「サシャラです。サシャラ・エルフォールド」
「分かった。言葉だけだが、勘弁してくれ」
「?」
一体何をする気だろうか。名前は教えるつもりだったからいいとはいえ、
「サシャラ・エルフォールド!私は!我が身にかけて!其方を信用すると誓おう!」
「な!?」
なななな、何を言っているんですかこの人は!
普通はそんなことしないでしょう!だって世界によって重みが違うのに!
あぁ、もう、やっぱり周りも慌ててる!「勇者様!?」「お気を確かに!」とか聞こえるし!
と言うか君たち!そんな言葉使っちゃダメとあれほど言ったでしょう!
そんなことより撤回させないと!
「勇者様!今すぐお取り消し下さい!その言葉は、軽々しく使うものではありません!」
「いや?お前は大丈夫だ。俺がそう判断したから使っただけだ」
止めてください!?
「いや?お前は大丈夫だ。俺がそう判断したから使っただけだ」
「い、今までの会話のどこにそんな確証を「俺ってさぁ」っ!はい!」
「昔、大変な思いをしてきたから、大体その人がなに考えてるか目を見れば分かるんだよな」
その言葉にハッとする。周りも息を呑む。この者たちは、私の事を分かっているため、この言葉に反応したようだ。
私の姿を見て(・・・・・・)。
「・・・本当ですか?」
「あぁ、だからサシャラの目を見たとき、こいつは大丈夫だって判断できたんだ」
「・・・そうですが」
顔が熱くなるって!
なんで顔が熱くなるの!急すぎない!?
思わず俯く。いやだって、そもそもそんな事言われたこと事態が初めてで・・・そっか。
初めて言われたから、気持ちが高揚して顔も熱くなったんだ。そうに違いないうん。
「そういうことだ。頼んだぞ、サシャラ」
頼られたならやることは一つだけ。
その期待に答えるだけ!
「はい!」
さぁ、頑張りましょう。
次は戻しますのと
めっちゃ増えましたすんません