深と浅
「会場から立ち去るキミを辛そうに龍輝くんは見ていたよ。」
「そう…だったんですか…」
「龍之介くんとは付き合いは長いの?」
「…はい。俺たちは幼稚園の頃からずっと一緒に過ごしてきました。」
「本当に、仲がいいんだね。」
「…俺、ずっと声優になるのが夢だったんです。【だった】じゃない…今でも、声優になりたいんです。それを龍にいつも言っていて…」
「…つまり、自分がなれていないのに親友が夢を叶えてしまって許せない…と?」
…そうなのか?俺のこのモヤモヤした気持ちはそんなモノなのか?ただの羨望…嫉妬なのか…?俺は、何が嫌で飛びだしたんだ?龍が声優だったこと?あれだけ嫌っていた龍輝が龍之介だったってこと?
「…あぁ…、そうか…」
「ん?」
「…俺、龍から声優になりたいとか聞いていなかった。もちろん、声優になったってことも…。俺は、何も知らなかった。龍とずっと一緒にいたのに…ずっと近くにいたのに、肝心なことは聞かされたいなかった…。俺は、それに腹が立ったんだ…。何で言ってくれなかったんだって。別に、声優って夢が一緒でもいい。逆に嬉しい。先に声優になってたって構わない。だって、そっちのほうが燃えるし。…なのに、…何で、何で言ってくれなかったんだろう…。俺、信用されてなかったのかな?俺のこと、龍は何とも思ってなかった…?ねぇ、上野さん…龍は俺のこと良く思ってなかったんですかね?」
「う~ん…深いことは、俺にもよくわからないな。でも、多分だけど、言いづらかったんじゃないかな?」
「言いづらかった?」
「うん。だって、君はずっと龍輝くん…この場合、龍之介くんって言った方がいいかな。龍之介くんに声優になりたい、なるんだって語ってきたわけでしょう?」
「はい…。」
「もし、龍之介くんが君よりもあとに声優という夢を志したとしよう。…言いづらくない?」
「そうかもだけど俺たちは、そんなに浅い関係ってことですか!?」
「いや、この場合は深い仲のほうが言いづらいんじゃないかなって思うよ。だって、浅い仲だったら別に相手のこと考えなくたっていいじゃない?相手のことを思うからこそ言いづらい…。特に、龍之介くんの性格からして言えないのわかるでしょう?」
…確かに。龍はいつも自分のことは後回しでずっと俺のことを思ってくれていた。でも、まだ俺は納得できない。これは、上野さんの憶測に過ぎない。…ちゃんと、
ちゃんと、龍と話さなきゃ…!




