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Boys draw the ambitious  作者: SheRry
3/12

泡になって…

俺は人魚姫を朗読した。声優志望の俺からすれば、これは練習だ。俺は声優。クラスメイトは観客だ。俺はこの時間が大好きだ。聞いてくれることもだが、もう一つ…

「人間にしてほしい?ならばそなたの、声を代償に人間にしてやろう…。どうだ?人間になるか?諦めるか?」

「声を失ってでもいい。私は、人間になって王子様の傍に居たいんです。」

「声を失うだけではないぞ?王子が他の女と結婚したら二度と人魚の姿には戻れず海の泡になって消える…。その覚悟はあるか?」

「…ええ。それでもいい。私を人間にしてください。」


…そう。国語の時間など本を読むとなると決まって、龍との掛け合いになるのだ。俺は、それも大好きなんだ。


「浜辺で人間になる薬を飲んだ人魚姫は、いつの間にか眠ってしまいました。しばらくして目が覚めると、傍に王子様が立っていました。しかし、声を出したくても人魚姫は声が出せません。王子様は何も話さない人魚姫を自分のお城まで連れて行き、人魚姫を妹のように可愛がってくれました。ある日人魚姫は、」

「俺、結婚することにしたんだ。その子は、海で溺れた俺を助けてくれた娘なんだ」

「王子は、勘違いしたことに気づいていません。助けたのは私だと言いたくても、人魚姫には声がありません。」

王子様の結婚式が近づいたある夜、海に人魚姫のお姉さんたちがナイフを持って現れました。

お姉さんたちは、このナイフで王子様の胸を刺して殺せば、人魚姫は海の泡にならなくて済むと言いました。

人魚姫はナイフを受け取り、王子様が寝ている部屋へ忍び込み殺そうとしましたが、愛する王子様を殺すことができませんでした。

「人魚姫はナイフを海へ投げ捨て、自分も海へ飛び込み、海の泡になってしまいました。」


…人魚姫は、泡になるしかなかったのか?他にも方法があったんじゃないか?俺は、童話に対して、深く考えた。


「はい、そこ~。いつものことながらだが、感情移入しすぎない~。」

そこ…?…俺、泣いてる…。…いつもそうだ。悲劇などを読むと主人公に感情移入しすぎて泣いてしまう。

「泣いたってことは、作者の言いたいこと、伝えたいことがある程度理解できたってことか?よし、月神。この作品から何を感じた?」


「俺は、この話から、素直な気持ちほど儚いものはないと感じました。」

…俺もずっと憧れているヒーローがいる。だけど、俺は頑張ってもその人のヒロインにはなれない…。ヒロインになるのは、俺じゃないんだ。そんなことは、俺も、人魚姫もわかっている。だけど、それでも人魚姫は王子の傍にいたかった。ひとときの夢でもいい…。

「どんなものを代償にしてでも会いたい…。同じ世界に行きたい。その気持ちすげぇわかる…」

俺は、この姫みたいに声を差し出すことはできないけど、ヒーローと同じ世界に行けるように身を削る覚悟で努力する。…だけど、俺はこの姫みたいに…泡になって消えることができるんだろうか…。


って、何か重くなっちゃったな。…俺のこの想いは恋愛ではない。憧れだ。…絶対。

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