一章
初の投稿作品です。
みなさん楽しんでくれたら嬉しいです。
「いったー‼︎」
すごい音と痛みで目が覚めた。
朝は貧血で体がだるくてやっぱり苦手だ。
そしてやっぱりこれがまだ現実なんだなぁと思う。
「優ちゃーん?すごい音がしたけど大丈夫ー?早く降りてこないと遅刻するわよ〜。」
「大丈夫、今いくよー。」
いつも通りの声だ。いくら願ったところでこの生活が変わることなんてなかった。
ギシ、ギシ、ギシ
聞き慣れた階段の音、もう六年も聞いてる。
「おはようございます、義母さん。」
「おはよう、今日もすごい派手な音だったわね〜。」
「すいません、朝はどうしても苦手で。それより兄さんは?」
「あぁ、多分洗面所じゃないかしら。あなたも少しは兄さんみたいに身だしなみに気を使ったら?」
あぁ、またこれだ。もう何回言われただろう。
「義母さーん、洗顔どこにあるか知らないー?」
兄さんの声だ。
「昨日僕が使ったから多分お風呂場だよー。」
「あぁそうか、ありがとう優。それとワックスどこだー?」
「ワックスなら昨日私が掃除した時に戸棚に入れたわよー。」
学校行くのにワックスってどういう事だよ。
そう思いつつ僕はパンに頬張りつく。
いつも通りだ。いつもの食パン、卵焼き、牛乳、なにも変わってない。
多分今から起こる事も昨日と同じだ。
「優〜、もう学校行くぞー、早く準備しろよー。」
これだ。
何で双子の兄弟が毎朝一緒に登校しなくちゃ行けないんだよ。
「あらぁ〜、やっぱり仲良いわね〜、気をつけて行きなさい〜。」
「ありがとう義母さん、いってきまーす。」
「ありがとうございます、義母さん、いってきます。」
はぁ、またか。こんなの見せしめじゃないか。
まぁいい、多分このまま行けば
「おーい!晃くーん!」
「おぉ、おはよう」
「おっはよ〜、ねぇねぇ、昨日のテレビ見た?超面白かったよ〜。」
「マジで見てねぇわ。サンキュー教えてくれて。」
「あー!晃くんじゃーん!おは〜。」
「晃くんだー!」
「晃くーん!おはよう〜」
まただ、この人達も飽きないな、朝からそのテンション。
ある意味尊敬するよ。
「晃、先行ってるよ。」
「あ、おい待てよ優。気にせず一緒に行こうぜ。」
「いいよ、本読みたいし。じゃあね。」
「おい優!」
「いいじゃん晃くーん。うちらと一緒に行こ〜。」
「そうそう、優くん晃くんと同じ双子なのに何であんなに違うのかな?」
「それに優くん暗いしなんか苦手なのよね〜、ちょうどよかった〜。」
「それひど〜。」
聞こえてるっつーの。
お前らと行くなんてこっちから願い下げだわ。やっぱり一人だと楽でいい。
兄さんといるより静かにいれるし。
「おはよう!」
え?
「おーはーよーう!」
「え?あぁおはようございます。」
「相変わらず硬いね、優くん。」
「はぁ。」(誰だっけこの人)
「あ?もしかして分かんない?わたしわたし、玲奈。」
あぁ、そうだ玲奈さんだ。入学した時からずっと僕に関わってくる。
どうせ兄さん目当てならさっさとそっちに行けばいいのに。
「兄さんなら後ろにいるよ。」
「え?あぁ違う違う。だって晃くんちょっと完璧人間すぎて逆に怖いじゃん?」
初めてそんな事を言う人に会った。
入学した時から僕にばかりきて兄さんの方に行かなかった不思議な子だ。
まさか僕以外に兄さんに恐怖を覚える人がいるなんて思ってなかった。
「ねぇ?優くん聞いてる?」
「え?あぁすいません、何でしたっけ?」
「やっぱり聞いてなかった〜。もう三年間も一緒のクラスなんだし敬語やめない?」
「あぁそうですね。善処します。」
「そう言ってもう三年目!そろそろタメ語でいいって〜。」
「そうですか。分かりました、よろしくお願いします玲奈さん。」
「敬語じゃん!とりあえずよろしくね?優くん。敬語って距離感あるじゃん?だから普通に話そ!」
「そうですね。よろしく、玲奈。」
なんでこんな目に。まぁ別に嫌いなわけじゃないし兄さんと比べたりしないからどちらかといえば好きの部類に入ると思う。
それでも、多分最後は離れて行く。分かりきってる。
「はーい、今日はここまでー。各自復習しとけー。」
「やっと終わったー。」
「昼飯行こーぜ、昼飯ー。」
「晃くん!一緒に食べよ!」
「あー!ずるい!私もいい?晃くん!」
「私も私もー!」
やっと昼ごはんだ。うちの学校は十二時から一時までの間ならどこで誰と食べてもいい。
まぁ男子は近場で食べてる。
女子は
言わずもがな兄さんと食べてる。
しかも学年五十五人中五十人はクラスにきて兄さんと食べてる。さすがだよ兄さん。
「優くん!一緒にお昼食べよ!」
また玲奈だ。
一人でいたいのになぜ来る。
どうせ教室で食べるから特に変わらないけど。
こんな感じで玲奈との昼ごはんは三ヶ月は続いていた。
まぁそれ以外に何もなかったから昼ごはん以外はいつも通りだった。
体育祭
三年生最初の行事、体育祭。
兄さんは当然みんなからの推薦と自分での立候補で
体育祭リーダー
そして全員リレーアンカー
さすがだよ、兄さん
僕はもちろん何もしない。
はずだった。
なのになぜかまた兄さんが。
「誰か応援リーダーやらない?」
「応援リーダーか〜。」
「めんどくさそうだよね〜」
「お前やれよ。」
「やだよ、めんどくさい。そういうお前がやれよ。」
「晃くんは応援リーダーしないでしょー?」
「それなら微妙だよね〜。」
そんなの立候補が出るはずない。
みんな兄さんと違ってこんな事するはずがない。
もちろん僕だってしない。
「優やらないか?」
は⁉︎
「あー優くんしなよ〜。」
「優くん何も役してないよね?」
「ならちょうどいいじゃん〜」
「そーだな〜優やれよ〜。」
「晃は体育祭リーダーやってるんだしさ〜。」
待て待てお前ら。
冷静に考えろ。
何で自分がやらないくせに僕に押し付ける。
しかも兄さんがやってるから?
僕と兄さんが全く違う事ぐらい三年間でよくわかっただろ?
僕に押し付けるなよ。
「どうだ優?やらないか?」
「誰もやらないならやってもいいですよ。」
「じゃあもう優で決めていいよね?」
「いいんじゃない〜?」
「さんせーい。」
はぁやっぱりこうなった。
僕はこんな事になったら断れない。
「じゃあ私、女子の応援リーダーする!」
「あ、玲奈さんか。みんなそれでいい?」
「うん。いいよー。」
「やった!よろしくね。優くん。」
「あぁ、よろしくね。」
しかも最悪の展開だ。
兄さん目当ての人ならどうせ兄さんの方ばかりに行って応援の方は僕に任せるはずだ。
けど玲奈ならそれは別だ。
なぜか僕ばかりに来る。
兄さんに興味がない人なんているんだな。
つくづく思い知った。
体育祭自体は楽しくなくはなかった。
応援リーダーと言っても最初の応援合戦さえ終われば後は何も無かったし楽は楽だった。
まぁ兄さんは終始人気だったしリレーの時なんてもはや声援というより絶叫だった。
なぜかその一つ前は僕だったけどね。
なんだかんだあってとりあえず体育祭は終わった。
終わってみれば案外あっけなく終わった感じだった。やっぱり行事は嫌いではない。
そして、中間テスト。
僕たちの学校は体育祭の後に一学期の中間テストという中々ハードな感じ。
まぁ解けないところもなければ完璧でもない。
順位は十五位、まずまずだった。
兄さんは当然一位。
しかも五教科百点満点中合計点四百九十八点。
同じ人間とは思えない点数だ。
そして中間テストが終わればいつもの地獄が始まる。
「優今回何点だった?てか何位?」
「合計点四百四十六点。十五位だよ。兄さんは当然一位でしょ?」
「まあな。けど点数だけが全てじゃないし十五位でも凄いよ。」
それは一位が言うと嫌味にしかならないよ。
「あ!いたいた!晃くーん!」
「ねぇねぇ?晃くんまた一位?」
「おう、まあ今回パーフェクト狙ってた分ショックだわ。」
「何それ〜、私なんて八十七位だよ?」
「私四十三位〜。」
まただ。テストが終われば兄さんが僕のところに来てその後女子が集まる。
「じゃあ先行くよ、兄さん。」
「分かった。また帰りにな。」
兄さんの態度もだいぶ変わったな。
「えー、帰りはうちらと帰ろうよ。」
「そうそう、うちらとの方が楽しいよ。」
「そう…だな〜。」
兄さんは部活もしてたし帰りは遅かった。
野球部のエースで四番でいつも試合は楽しそうだった。
帰りは一緒に帰ってたからいつも教室を開けておいてもらって本を読んでる。
教室の鍵管理はいつもしていた。
野球部は強豪だったし甲子園出場も決まって引退はさらに伸びた。
「何読んでんの?」
後ろから誰かがのしかかって来た。
「やっぱり玲奈か。」
「やっぱりって何〜?もっとリアクションしてくれてもいいじゃん〜。」
「もう何回めだよこれ。さすがに分かるよ。」
「もう〜、もっとオーバーにしてくれてもいいのに。」
「ごめんごめん、気をつけるよ。」
いつもこんな感じだ。
体育祭が終わってからさらに仲良くなったしこんな会話もしょっちゅうしている。
朝はいつも兄さんと一緒に出た後女子が来たら先に行くからそのタイミングで玲奈も来る。
今じゃ兄さん以外で敬語を使わない唯一の相手だ。
「ねぇねぇ?今度の日曜暇?勉強教えてくれない〜?」
玲奈はこんな感じで頭はあまり良くない。
テストは百十一位という誇れない点数でも
「凄いでしょ?ゾロ目ゾロ目。」
と逆に開き直っている。
「日曜?別にいいよ、暇だし。」
「やったぁ、じゃあ十二時半ぐらいに図書館集合で。遅れないでね?」
「分かった。十二時半な。」
友達と休日に遊ぶなんて小学校一年生ぶりだ。
まぁ勉強だし特に気いる必要もないだろう。
日曜日
「遅いな、もう一時半なのに。」
「ごっめーん、待った〜?」
玲奈だ。
「そりゃ待ったよ十二時半だよ?待ち合わせ、一時間遅刻してるよ。」
「ごめんごめん、せっかく二人で会うからデートっぽくしたいな〜、なんてね?」
玲奈はいつもこうだった。
今更この言葉に驚かないしいつも通りだ。
勉強はまぁまぁ進んだ。
図書館ということもあり、分からないところは僕に聞いて分かる間は僕は本を読む。合理的だ。
「今日はありがと!楽しかったよ。」
「うん。ありがとう。また月曜日ね。」
玲奈とは五時半ぐらいに別れた。
「ただいま帰りました。」
「あら〜おかえり優ちゃん。遅かったじゃない。何してたの?」
「すいません、義母さん。図書館で本を読んだり勉強したりしてました。」
「優〜せっかくテスト終わったんだぜ?そんな勉強しなくても大丈夫だって〜。」
「そうよ、優ちゃん。たまには羽を伸ばして休むのも大切よ?」
「はい、義母さん。兄さん。今度の休みはゆっくりします。」
「それはそうとさ、優。」
「どうしたの?兄さん。」
「もう十月だろ?高校どうするんだ俺は耀先高校にするけど。」
「そうだなぁ、とりあえずは桂鳳高校かな〜。」
耀先高校はこの辺りでトップクラスの高校、テスト点四百八十点が最低条件。化け物だ。
桂鳳高校はこの辺りではまぁまぁ上位の学校だ。
上位といってもテスト点四百点ほどあれば入れる高校だ。
「え?優桂鳳高校なの?一緒に耀先高校にしよーぜ。」
「僕の点数じゃまだ足りないよ。それにここからだと遠いし。」
「そっか、まぁ高校が離れても俺たちは兄弟だからな。」
兄弟か、それはとても僕には重い言葉だよ。
いつも比べられる気持ち、兄さんには分からないだろうな。
「そうだね。これからもよろしくね、兄さん。」
「あぁ、優。」
「いいわねぇ〜男兄弟の絆って。さぁ晩御飯よ。冷めないうちに食べましょう。」
「あれ?義父さんは?」
「今日は遅くなるって、先に食べちゃいましょう。」
「それもそうだな、いただきまーす。」
「いただきます。」
そして三月入試も終わって卒業式だ、みんな各々高校も決まって新しい門出の時だ。
「玲奈は聖麗女学院だっけ?」
「そう!制服超可愛かったの!また一緒に遊ぼうね。」
あの勉強会の後もちょくちょく遊んだりはしていた。
すると僕にはあまりにも衝撃的な言葉が耳に入ってきた。
「えー⁉︎晃くん桂鳳高校なの?耀先高校は?」
「そうだよ!三年生になってずっといってたじゃん!」
「そんなに勉強できるのになんでー⁇」
「んー?まぁやりたい事も無いし桂鳳にした。」
「まぁ晃くんならどこいってもトップだろうね〜。」
僕は絶句した。
全く言葉が出なくて玲奈が言ってる事も全く耳に入ってこなかった。
僕は気づいたら動いていた。
「おい‼︎桂鳳高校ってどういう事だよ!お前耀先高校だって言ってただろ!」
「どうしたんだよ優、そんなに怖い顔して。」
「質問に答えろ!なんで桂鳳高校にした!」
「なんでって優も行くし、ここから近いから。」
「お前は!高校が違っても兄弟だって言ってただろ!なんでそれで同じ高校にするんだよ!」
「落ち着けよ優。確かにそう言った。でも俺は優と同じ高校に行きたいから同じところにした。それが俺の進路だ。」
もう言葉すら出なかった。
やっと、やっと兄さんと比べられる地獄が終わったと思った。
やっと一緒に登下校するのが終わると思った。
やっと兄さんの呪縛から解放されると思った。
なのに、なのに兄さんは
僕から離れなかった。
一章はどうでしたでしょうか。
兄弟の醜い嫉妬から始まる絶望の高校生活です。




