1話 すべての始まり
無。
それは果てしなく広く、つまらないという感覚の物体。
そんな中、不意に一筋の光が現れた。その光は天と地を創造した。
その光は神秘的かつ不思議な光だった。光は今で言う『人間』の形を見せた。
その光の名は、天御中主神。
日本で最初の神様だ。
「……??ここは…なんだろう。何をすればいい?」
僕、天御中主神はここにいた。空中をふわふわと漂って、とても気持ちがいい。
不意に、僕の頭の後ろで光り輝く物が姿を現した。
「うわぁっ??!な、何事!」
慌てて僕は振り返る。そこには華奢な可愛らしい女の子がいた。
「あれー?あなた誰ぇ?私?私は高皇産霊神!!よろしくねー!」
とっても元気な女の子から先に自己紹介をされてしまい、僕は少し申し訳ない気持ちが芽生えた。
「よろしく。僕は天御中主神。」
簡単に自己紹介を終えると、高皇産霊神は僕に擦り寄ってきた。僕自身の心臓が高鳴る事を感じてしまった。
「あははっ!天御中主神って長いからさ、ミナカって呼んでいい?私の事ムースって呼んでいいからさ。ね?いいでしょ?」
…そんな態度で詰められたらおkするに決まってるじゃないか。
「ありがとー!!改めてよろしくね!ミナカ!」
あれ、待てよ?男と女ってなんだ?まぁいいか。しかも何故僕の頭から男と女って出てきたんだろう…
そうこう考えていると、また新たな光が舞い降りた。
「あんらぁ??あそこの彼、ちょっといい感じじゃな〜い??ねぇねぇ、名前聞かせてよぉ〜!」
光から出てきたのは紛れもなく正真正銘のオカマだった。やばい、背筋がゾクゾクしてきた。
「えっと…ど、どうも。天御中主神です。ミナカと呼んでください」
僕が自己紹介を終えると、オカマは話しかけてきた。
「ミナカ…い〜いなまえじゃなぁ〜い!私は神産巣日神よぉ♡ムビって呼んでちょうだい。」
とりあえずオカマでいいか。いや、怒られそうだしいいか…
「そしてこっちが」
「高皇産霊神でーすっ!ムースって呼んでいいよ!」
こうして僕達は天と地と呼ばれる場所で三人、意気投合した。
どうやら僕には最高神になれるっぽい。でも影うすそうだしいいかな…
ムースはどうやら鳥が気に入ったらしく、いつも一緒に持ち歩いていた。
オカマ…ムビは『性』という不思議な話に詳しいらしく、分からない言葉が沢山出てきた。それを聞いているうちにムースが顔を真っ赤にしていたのだけれど、どういう事なんだろう。
そうそう。ムビの話で一番分からなかった言葉がある。『騎乗位』っていう言葉らしいけど…
まぁ、後で聞いてみるとしようっと。
そしてまた現れた光。でもこの光はすぐに空の方へと消え去ってしまった。
後で知ったことだけど、あの光二つと僕達三人を合わせて『こと天つ神』っていう物になるらしい。
「わぁー!!ミナカ!ムビ!あれ見て!いっぱい光が降ってきた!」
ムースの指さす方向を見ると、およそ八百万ほどの光の軍が地上に落ちては神となっていた。
こうも賑わってくると、誰が誰だかわからなくなってくる…
「あんらぁ〜!!イイ男がいるじゃなぁい!!ちょっと行ってくるわ!」
と、ムビが物凄い早さでナンパしに行った。もういいや。あのオカマは末期だ。
ん?あれは…
「ねぇムース。なんだろうね、あの緑色の物」
僕が見つけたのは緑色の長くさらさらとしたものだった。海というものが出来て、そこに生えている。
「あれは…植物って言うらしいわ。でも寂しいわね。これじゃあまりカッコ良くないわ」
うーん…せめて海の上に何かあればなぁ…そう思っていた。
「あら。それならこれ、使ってみる?天沼矛っていう矛で、地面を固まらせる能力があるの。ミナカ、やってみたら?」
「ええ!!僕が…?え、遠慮しとくよ…そうだ!あの子達にやってもらおう!」
僕は少し前、生まれたばかりの二人を呼び出した。伊耶那岐命と伊邪那美神だ。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
イザナミは兄イザナギのそばに縋っている。イザナギは落ち着いていて、僕は威厳を感じていた。
「イザナギ、よく聞いて。この天沼矛で『くに』という物を作って欲しいんだ…では任せた」
そう言って僕はさっさと高天原へ帰っていく。
高天原というのは僕達が作り出した最初の地で、足藁の中つ国ともう一つ、黄泉の国という物を作ったのだ。まぁほとんどムースが頑張ってくれたんだけどね…
そして、イザナミとイザナギの手で、新しい世界が作られる…
僕はそう思って、高天原で日向ぼっこを始めた…
※諸説あり