最悪のスタート
タイトルがパッと浮かんだので書きました。
遅筆な上、文章が稚拙ですが何卒よろしくお願いします。
体操座りあるいは体育座り、三角座りとも呼ばれる。
尻を地面に付けた状態で立てた両足の膝を抱え込むようにして座る。
胡坐や正座に並ぶかなりメジャーな座り方であり、元々は学校で集団行動指導の一つとして取り入れられたことから広まったとされる。
体を小さくまとめ委縮している様子から、悲しいときや落ち込んでいる描写として用いられることが多い。
そんな体操座りをして腕と膝の間に顔をうずめブツブツ呟いては時折顔を上げ、溜息を上げるとまた顔をうずめてブツブツ言いだす、という行為を繰り返している男が気が滅入っていることは誰が見ても明らかだった。
「ない、マジでこれはない。転生はまだいい、ん?いいのか?まあ、いいことにしよう。モンスターに転生するのもいい、よくないけど。ただ、たださあ、気が付いたら人の死体貪ってるってどうなの?食ってる最中は腹が減ってるせいか頭もまともに働かなかったしよ。何、何だよほんと。あれだよな、多分俺グールとかそんな感じのヤツに生まれ変わったんだよな?そうだよな?だから人肉食っても何も問題ない。うん。そうだ。そう思わなくちゃやってられない。あれ、そういう問題なのかこれ?いやでも…」
しかし実際にこの場面を見た人が彼の心情を察する余裕はおそらくないだろう。
薄暗い洞窟の中、骨だけになった死体とその横で独り言をつぶやき続ける血まみれの男。
否、厳密には男と呼べるものではない。
うずくまっているためわかりにくいが身長は1m程と子供のように小さくその顔に愛嬌と呼べるものは存在していない。
無理やり挙げるとすれば大きな目だが、それもギョロリとした濁った目でむしろ恐怖を煽らせる。
体も文字通りの骨と皮しかなく本来内臓が詰まっているべきお腹もベコリと凹んでいる。
さらには股間には生殖器どころか肛門すら存在せず、毛のないツルリとした土気色の肌があるだけである。
彼が男か女か以前に生物としておかしい見た目をしていた。
そして彼が呟いている内容についてだが、残念なことにほとんど当たっている。当たってしまっている。
前世の地球で死んでしまった彼、淵屋祈。
異世界のダンジョンでレッサーグールというモンスターとして第二の生を受けるも、本能のまま人肉を貪るという元人間として最悪のスタートを切ることとなった。
いざ書こうとしても、書き出しをどうしたらいいのかわからないってときあるよね。
…その結果が体操座りだよ。
しかもなぜか、そのくだりが一番スラスラ書けたっていうね…