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恋愛相談部  作者: 甲田ソーダ
第一章
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今後の予定を決めていこう

 六時間目に遅れたことで体育教師に怒られた後、慶喜は疲れたようなため息をつくと部室へと向かった。


 慶喜が部室に行くと先に美優が来ていて、ドアの前で困ったように立っていた。しかし、慶喜を見るとパッと顔を明るくした。


「慶喜君、遅いですよ! 何していたんですか?」

「ちょっと説教を喰らっててな」


 慶喜はそう言いながら部室のドアを開けた。

 慶喜は窓を半分ほど開けると、いつもの席に座った。美優はドアをきちんと閉めた後、同じくいつもの席に座った。


「それで、慶喜君なんで怒られてたの?」

「部室に来て最初の言葉がそれかよ……」


 どうやら美優は自分の相談より慶喜のことで頭がいっぱいのようだ。


(とりあえず、途中経過は予想以上に順調だからいいけどさ)


 慶喜は今日の六時間目のことを美優に話した。美優はそれを聞いた後、クスクスと笑った。その笑いはクラスメイトのようなものではなく、もっと純粋な笑いだった。


「もう、私達の会話をオルゴールにするなんてひどいね」

「仕方ないだろ。俺は話を聞くだけだぞ。何か行動する度に周りから見られるし」

「え? どうして?」


 全部清河さんの所為だよ、とはさすがに言えない慶喜であった。話を逸らすため、慶喜は美優に今日の二人の会話を聞いたときの感想を言った。


「今日、二人の会話を聞いて俺が感じたことはな……」

「話を逸らしましたね」

「それがどうした? とりあえず話を続けるぞ」


 慶喜は話を逸らしたことを素直に認めつつ、強引に話を変えた。美優はひとまずそれを置いておこうということで慶喜の話を聞くことにした。


「俺が第一に思ったことは清河さんだ。清河さんはどうも亮雅と話している時と俺と話しているときでは、どうも亮雅と話すときの方がぎこちなさを感じる。俺と話しているときは何というか……、もっと声に明るさがあるっていうか、もっと生き生きしている感じに聞こえるんだよな」


 慶喜がそう言うと美優は自分でもわかっているのか、困ったような顔をした。


「意識しちゃってどうも固くなっちゃうの。やっぱダメだよね……」


 美優は悲しそうな顔をして、下を向いた。さすがにそんな顔を美少女にさせた慶喜は気まずくなり、滅多にしないフォローした。


「まぁ、そこは……なに? うん、時間がなんとかしてくれるかもしれないし、そこまで意識することではないんだけどさ」

「うん……」


 そこで美優を励ますために違う話題に変えることにした。


「そういえば、料理が好きなんだってな。どんな料理を作れるんだ?」

「え、うん。えっと、よく作るのはキャベツロールかな」


 美優はいきなり料理の話をされるとは思っていなかったらしく、ためらいながらも自分の得意料理を話した。その顔にはさっきまでの悲しい顔はなく、どちらかというと驚いた顔をしていた。


「あの……、もしかして、フォローしてくれたんですか?」

「そういうのは、あまり言わないでほしいものだな。逆に恥ずかしい」

「慶喜君にもそんな感情があったんですね」


(いや、そりゃ人間だもの。俺をなんだと思っていたの? 怪人? だとしたら俺、三分だけのヒーローにやられちまうのか。だったら俺はバルカンがいいな。理由はそいつしか怪人の名前知らないから)


 美優の調子が戻り始めたところで慶喜は先ほどの話に戻った。


「それで、二人のぎこちなさをなくすために俺は考えた。それで一つだけ思いついたことがある」


 慶喜が人差し指を立てると、美優は期待するような目で慶喜を見つめた。


(いや、そんな期待されても困るんだけど。というか清河俺を信頼するの早すぎね? これがラブコメだったらマジチョロインだぞ)


「えっとだな……。今週の土日、できれば日曜日が好ましいが、そのどちらかで亮雅と買い物やら何やらしてみたらどうだ?」

「買い物ですか?」


 まぁ、小説などでよくある展開のことだ。二人以上で行動することで、関係を深くしていこうという、なんてことない作戦だ。

 慶喜はライトノベルなどをよく読むのでそれを参考にしたわけである。


「二人でなくてもかまわない。少しずつ慣れていけばそれでいいさ」

「どうして、日曜日を薦めるんですか?」

「そんなの決まっているだろ。土曜日はシミュレーションに使いたいからだ」


 土曜日で簡単な練習をして、日曜日でその練習を活かすというのが慶喜の作戦だ。

 昨日のことでもわかるとおり、慶喜は意外と準備を怠らない。そこが真面目である所以なのだが、慶喜は自分でそれに気付いていない。

 そこで、美優はあることに気が付いた。


「土曜日の練習って私だけで、ということですか?」

「そんなわけないだろう。まだ、亮雅の予定はわからないが土曜日に練習するときは俺が付き合うに決まっているだろ」


 その言葉に美優は安心したが、すぐにまた違うことに気が付いた。


「でも、その場合これって……」

「デートと言いたいのか? それはないから安心しろ。ちゃんと俺は変装して行くし、俺と清河さんはそんな関係でもないだろ」


(そんなことをしたら俺が殺されるかもしれないしな)


「そう……ですよね」


 そこで美優は自分が思ったよりもがっかりしていることに気付いた。その感情を口でうまく言えないのがもどかしかった。


「とりあえず、明日だな。明日は亮雅に土日の予定を聞くこと。それで、もし大丈夫なようであれば、友達でも誘ってみたらどうだ? できれば、男女比は同じ方がいい」

「その男性陣の中に慶喜君は……」

「もちろん、却下だ。俺はその日たぶん用事・・が入っているはずだからな」


 ということで、土日の予定が決まった。

 しかし、ここで忘れてはいけないのが昼の約束である。


「それと、昼も言った通り明日からは、木曜日と金曜日はサッカー部の方に行くこと。マネージャーの見学ということにしておけ」

「忘れていなかったんですね……」


 美優の胸はまたキュッと締め付けられるような気がした。それに気付かない慶喜は立ち上がって窓を閉めた。


「もう、帰るんですか?」

「……今日は何曜日か知っているか?」

「?」


 いきなり深刻な顔をした慶喜に戸惑いを隠せずに、美優は首を傾げた。


(さっき、自分で明日は木曜日って言っていたはずだけど……?)


 慶喜の真剣な表情を見て、美優はさっきの胸の痛みから解放され、その代わり、心臓がドキッとした。


(いつも以上に真剣な顔をしている。こんな顔もできるんだ)


「今日は水曜日だ。つまりそれは……」

「それは……?」


 慶喜は一拍溜めてから真剣な表情で言った。


「今日はサンデー、マガジンの立ち読み日だ。だから、今日は早く帰らせてもらう」

「……そ、そうですか」


 だんだん慶喜のペースに慣れてきた美優であった……。



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