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恋愛相談部  作者: 甲田ソーダ
第二章
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49/131

敗北を認めよう

ガラケーの人のための問題

問題

②2乗

③2乗、2乗、2乗

解答

③2乗

「勉強したくないよ~」


 木曜日の朝、つまり作戦当日の朝に美麗唖は大きな声でそう言った。

 金曜日はあまり学校に出られないということで、事実上今日が香月が最後に皆と関われる日である。なので今日は朝から香月が部室に来ており、本来は違うのだがこれが本来の部室とでも言うかのようだった。


「勉強したくないよ~」


 美麗唖は誰も反応しないのが不服なのかもう一度言う。

 慶喜は黙って本を読み、美優は香月の宿題を手伝っていた。


「勉強したく「死ね」ない、あ、ごめん。……ん? なんか今のひどくない!?」

「さっきからうっせぇんだよ。集中できねぇだろ」


 慶喜の言葉に美優と香月も賛同し、美麗唖は「だって~」と言い訳じみた反応を返す。


「昼からコンサートなんだよ? そっちが気になって授業なんて集中できないよ」

「それは……わからなくもないけどさ、みっちゃん。そろそろ中間試験も近いんだよ?」

「いや~~~~~~~~! 最近試験やったばっかじゃん!?」

「あれは一年生の実力を見るための試験だ」

「確か慶喜君はそれで数学一番だったんだよね?」

「え、そうなの!?」


 香月は驚きながら慶喜を見る。

 そういえば香月には自分達の得意教科について話していなかったことを慶喜達は思い出した。


「数学が得意ってことはこの問題も解ける?」


 香月がそう言って慶喜に宿題を見せた。どうやら美優に尋ねていたのは数学だったらしい。

 慶喜は美優に不思議そうに見る。


「ストーカー君、どうしたの?」

「いや、なんで最初から俺に頼まなかったのかと」

「え、だって私知らなかったし」

「香月じゃなくて美優に言ってんだ」


 慶喜が数学を得意なのは少なくとも美優は知っているはずだ。いつもの美優であればこういうときに慶喜に頼ってくるはずなのだ。慶喜は美優を不思議そうに見ると、


「いや、なんというか。慶喜君、集中してたし……ね」

「……あぁ、なるほど」


 確かに慶喜は本を読むために美麗唖を無視しながら集中していた。美優は慶喜が集中していたのをどうやら今日の作戦に対しての集中だと勘違いしたらしい。

 慶喜は今回の作戦で一番重要な役割をやるつもりなのでそう勘違いしてもおかしくない。

 だがそれを知らない香月はなにがなんだかわからない表情をしていた。


(やっぱり昨日言っていてよかったな。言ってなかったら絶対香月に伝えてたな)


「志賀君?」

「……はぁ。問題を見せてみろ」

「え、あ、うん……?」



問題(一部抜粋)

①(√5-√3)(√5+√3)

②y=4x²+1のx座標が7のときの接線

③9x²+y²+4z²-6xy+4yz-12zxを因数分解しろ


(すごい……。パッと見ただけで志賀君すぐ書いちゃってる)


慶喜の解答

①2

②y=56x-195

③(3x-y-2z)²



「ま、こんなもんだろ」

「本当にすぐ解いちゃうんだね」

「ここ中間試験の基本問題だぞ」

「わ、私は別に中間試験受けないし」

「あ、そっか! いいな~~~~」

「虫はもっと勉強しろ」

「私ってもう虫なの!?」


 香月はさっきのことは完全に忘れており、うまくはぐらかせただろう。

 香月は慶喜の解答を見ながらどういう計算したのかと考えた後、「ふぅ」と息をついた。


「やっぱり香月ちゃんも勉強は嫌い?」


 美麗唖はどうしてもその話をしたいのか、もしくはその話を香月にしたかったのか、そう香月に聞いた。香月は少し考えた後、


「小学校までは好きだったけど、中学校に入ってからちょっと嫌いになった」

「小学校までは遊び感覚で勉強できるし、覚えられるからな」

「中学校になると難しくなるから嫌になるよね」


 全員同じ気持ちなのか頷く。


「得意な教科はそこまで嫌いじゃないんだけどね」

「わからない授業は誰でも嫌いになるだろ」


 慶喜の場合それが特にひどかった。数学は真面目に勉強していたが理科の時間は寝ていた。何度たたき起こされたか慶喜自身もう覚えていない。

 今になって思えば担当の先生に迷惑をかけたと謝りたくなるときが慶喜にはある。

 そこで香月が「でも」と言う。


「私は高校に入ってから勉強が楽しくなってきたよ」

「え、なんで?」


 美麗唖は信じられないものを見るかのように目を見開く。


「私は中学校二年生くらいから学校には行かなくなったからさ。たまに勉強したくなるときがあるんだよ。その時になってもっと勉強しとけばよかったって思えてきたから」

「贅沢な悩みだな~。私もモデルとかやってみようかな」

「お前がモデルとか。図鑑でも見るのかよ」

「だからストーカー君、私を虫扱いにしないで!」


 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ、と叫ぶ美麗唖を無視して話は続ける。

 そこで美優は人差し指を顎に当てながら、


「でも私の家族もよく勉強したいとか言うかな」

「嘘でしょ!? 私の家族は勉強って聞く度にビクッてするんだけど」

『……』


 その瞬間美麗唖以外の全員が美麗唖に同情の視線を向ける。


そっか。それはもう遺伝なんだ、と。


「やめて! そんな目で見ないで!」

「ノックダウンさせられた美麗唖はさらに勉強が嫌いになり、その同情の目線が今でも目に浮かぶと未来の旦那と子どもに言い聞かせたという」

「ストーカー君なんて嫌いだ……」

「よし」

「もういいよ。私の負けだよ」


 美麗唖はついに慶喜に敗北宣言した。何に敗北したのかは美優と香月はもちろん、慶喜も美麗唖自身もよくわかっていなかった。



ちなみに私も勉強は嫌いです

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