冷凍食品の運勢を当てにしないようにしよう
タイトル長ぇ
昨日の美優からの依頼を受けてから一夜、慶喜は学校で困ったことになっていた。
「おい……、あれって……」
「いや、まさか……」
「どういうこと……?」
慶喜の教室、一年二組は喧噪に包まれていた。他のクラスの生徒達も集まり始め、その目線の先には二人の生徒がいた。
「ねぇ、なんか皆こっち見ているけど慶喜君何かしたの?」
「……」
慶喜はため息をつきたくなったが、ここでため息をついたら格好の的である。
(俺が原因じゃねぇよ。お前だよ清河)
今一年の生徒達から誤解を受けられると、今後の展開に支障が出ると判断した慶喜は騒ぎがさらに大きくなる前に行動に出た。
「清河さん、昨日のお金は大丈夫だって。たかが、百四十円なんだから」
「え? どういうことですか?」
(ちょ……、気付けよ……! 俺のパスをスルーするなよ!)
「え? ほら、昨日清河さんに渡したいろはすだよ。あれのお金を渡しに来たんじゃないの?」
(気付け! 今俺が何を言いたいのかわかるよな!)
どうやら慶喜の思いは通じたらしく、美優は場を改めようと言葉を返した。
「そ、そうだった! それを渡しに来たことを忘れてたなんて、私バカみたい」
「だから、大丈夫だって! ほら、そろそろ朝の挨拶も始まるし!」
慶喜が美優を追い返すと、教室に集まっていた生徒達も自分のクラスに戻り始めた。
「そりゃ、そうだよな……」
「にしても、あいつ清河さんの好感度を上げたいがためにそこまでするなんて……」
「かっこわる~い……」
慶喜は聞こえないふりをしていたが、もちろんすべて聞こえている。
普段からすることもないので、人の話を盗み聞きしている慶喜にとっては、数人から放たれる言葉を顔と同時に記憶できる。しかし、顔は一日経つと忘れるが……。
(はぁ、朝っぱらからなんでこんなに疲れなきゃいけないんだ。これだから清河の依頼は受けたくないんだ。面倒くさいし……)
朝から疲れた慶喜は朝の挨拶で先生が話しているにもかかわらず、夢の中へと入っていった。そのせいで、その後の授業に遅れそうになったの時は、さすがの慶喜も焦った。
四時間目が終わり、昼休みへと入った。
慶喜は昼休みに入ると同時に教室を出て、部室へと向かった。教室を出た後すぐに、美優が話しかけようとしていたが、いかにも気付いていないというように、目線を合わせず歩いた。
部室の鍵を開けた後、部室の中で黙って座っていると美優が部室の中に入ってきた。慶喜は中に入るのを確認した後、二人を隠すようにドアを閉めた。
美優はその意味がわからかったが、とりあえず椅子に座ると慶喜が口を開いた。
「清河さん、朝から俺のクラスに来て、俺と話していたら周りの生徒はどう思うか考えてくれ……」
「え? あ、あ~! そういうことだったのね! それで……」
どうやら美優は今言われて初めて気付いたようで、慶喜は大きくため息をついた。
(なんだろうな~、すんごい怒りたいのに、怒ったら絶対俺の評判がた落ちするに違いないよな~。ある程度の評判は気にしないけど、いじめを受ける気にはならないし)
「清河さん、基本的に俺とあまりここ以外で話したらダメだ。俺とそういう関係なんじゃないかというだけで、彼氏はできないと思った方がいい」
「わかりました。それじゃ、今ここなら、朝私が言いたかったことを言っていいんですよね?」
「だから、もしそこで俺がダメって言ったらどうすんだ?」
慶喜の言葉に美優は昨日と同じように笑って、やっぱり慶喜君は面白い、と言った。慶喜は面倒くさそうに背伸びをすると姿勢を正した。
一度受けた依頼は面倒くさくてもやるのが慶喜である。途中で投げ出すことは基本的にはない。
「今日はこれからどうすればいいの? もう、お昼になっちゃったけど大丈夫なの? 私、何もしていないんだけど……」
「それなら問題ない。今日は清河さんが何かをすることはない。どちらかというと俺が行動する日なんだよ」
「どういうことですか?」
「清河さんは亮雅って奴を知っているけど、俺はその亮雅って奴を知らない。そうなると、アドバイスしようにもできないんだ。だから、今日は俺が亮雅を知る日ってわけだ」
ここまで来ると、大体の人は慶喜がどんな人物なのかはわかってくる。なんだかんだ言って慶喜は真面目なのだ。相談する相手としてこれほど頼もしい人はそうそういないだろう。唯一の欠点が面倒くさがり屋という点だけだ。
美優もそれには気付いていた。しかし、美優が一つだけ気になる点と言えば……
「失礼だとは思うんですが、慶喜君ってどうして友達がいないんですか? 結構話していて面白いし、いない理由が見当たらないんですが……」
(理由が見当たらないのは、ただ単に見逃しているだけだ。ちゃんと目の前に置いてある)
「そんなの簡単だ。俺が友達を作るのが面倒だからだ。それ以外の理由はない。友達なんて作ろうと思わなくても作られてしまうが、本気で友達を作ろうとしなければ友達はできない。q.e.d.」
「q.e.d.ってなんですか?」
「証明完了という意味だ。今使った理由はなんとなくだ。なんかかっこよく聞こえるだろ」
美優は首を傾げてわからないと表した。これがわからないとはどういうことかと慶喜は思ったが、口には出さなかった。議論してところで時間の無駄だと判断したからである。どうせ、決まらない。
「とりあえず、俺が今日調べてわかったことは、サッカー部ということ、以上だ」
「え? 全然ダメじゃないですか?」
(は? これで全然ダメだと? いやいや、休み時間のたった15×3=45分で部活を調べられただけですごいことだと俺は思うのだが。それに……)
「話すきっかけになるだろ。清河さんの依頼は亮雅と話したいってだけだろ? これだけで十分話せると思うのだが……」
「そ、そうかなぁ……」
美優はどうも信じられないような顔をしていたが、慶喜には自信があった。
「あいつはどうも人と話すのが慣れていた。一回話すだけで、後はあっちから話を振ってくれるだろ。下手にいろんな話をしようとすると焦って話せなくなるぞ。こういうときはザ・人任せでいいんだ」
慶喜の趣味は盗み聞き。人と話さなくても人のことをわかったようになれる、これが慶喜にとっての暇つぶしの遊びなのだ。これによって、慶喜は人の性格を話さなくてもある程度当てれるようになった。
「だから、とりあえず明日は亮雅と話してみな。きっと、俺の言うとおりになるから」
「う、うん……」
それから、美優が最初に部室を出て、慶喜が五分後に部室を出た。慶喜が教室に着くと同時に昼休みの時間が終わるチャイムが鳴った。
(今日の弁当楽しみだったのに……)
とことん、今日は慶喜の運がなかった。
家に帰った後、弁当の中身に冷凍食品があったのだが、その容器の底に書いている占いには運勢が最高と書かれていた。異性の子から話しかけられると書いてあり、それのどこがいいのか慶喜にはわからなかった。




