楽しく遊ぼう
昼食を食べ終わった美優達はゲームセンターの階へと向かった。
「へ~、あれってまだあったんだ~」
そう言って美麗唖が指差したのが『新昆虫王者ムシキング』だった。昨日はそうでもなかったが今日はだいぶ人が並んでいた。
「僕も昔よくやっていたよ」
「お、俺も!」
亮雅に張り合うかのように大地は言ったが、美優は特にどちらも気にしていなかった。
(というか大地君、一体何を張り合っているの? バカなの? まぁそれより)
「私あれやってくるぜ~!」
美麗唖はそれを見た瞬間にテンションが上がっていた。さっきからやりたくてしょうがなかったほどだ。
そんな美麗唖を見て亮雅達は若干ひいていた。それはそうだろう。高校生が目を輝かせて子どもがやるゲームをやりたいというのだから。
しかし美優だけは、
「みっちゃん、私達のことは気にしないで遊んできていいよ」
「え! ホント!? それじゃ―――!」
そこで美麗唖のスマホから音楽が流れた。
「はい、もしもし~!」
『―――! ―――!』
「もう……わかったよ~。はい。は~い」
「どうかしたの?」
「なんでもないよ。でも、人も並んでいるし、美優ちゃん達を待たせるのも悪いから今日はあれ我慢するよ」
「別にいいのに……」
その言葉に男子二人も軽く頷いた。どうやら美優と話せるチャンスを失ったことにがっかりしているようだった。
(私がいなくなればその分美優ちゃんが亮雅君と話せると思うんだけどな~)
「き、清河さん! あれはどうかな!」
慶喜のミスかと美麗唖は思ったがそうではなかったらしい。
(そうか、亮雅君だけじゃなくあの邪魔者もいるからか。しかもあれ結構美優ちゃんに話しかけているから。おお~、ストーカー君なかなか頭がいいね!)
美麗唖がそんなことを考えている中大地が指差したのは、複数の人達で写真を撮る、いわゆるプリクラだった。
プリクラを薦めるとはお前は女子か、とも思ったが口には出さない美麗唖だった。
「まぁ、いいんじゃないか。どうかな清河さん」
「わ、私は別にいいけど……」
「私もオッケーだよ~」
確認の時も美優にだけ聞いたことに美麗唖は若干いらっとしたが、ここは美優のために我慢しておく。
中に入ると思ったより狭かった。
(大丈夫かな。ストーカー君の話だと美優ちゃんこれ初めてだと思うんだけど。でもさすがにこれくらいは)
しかし、美優は案の定プリクラを知らないようだった。
「み、みっちゃん……。ここって何するところなの?」
「写真を撮るところだよ」
「え……?」
美優は心の底から驚いているようだった。
「どうして写真を撮るだけなのにお金を取るの? 普通にカメラを使えばいいんじゃ……」
(いきなりプリクラの存在意義を否定しないでっ、美優ちゃん!)
それから四人でプリクラを撮ったが、さっきの美優の言葉を聞いていた所為か男子二人は気まずそうな顔をしていた。このときはさすがの美麗唖も可愛そうだと思った。
プリクラを撮った後、美優を見ると美優はあるUFOキャッチャーをじっと見ていた。そこには小さいぬいぐるみがあり、慶喜の話を聞いた限りだとどうやらあれが昨日取れなかったものらしい。
その視線に気付いたのか亮雅はここぞとばかり美優に言った。
「僕はこれでも得意でね。よかったら取ってあげようか?」
「え、でも……」
「任せて」
亮雅はそう言ってUFOキャッチャーにお金を入れた。
美優が見ている手前いつも以上に集中して、慎重に動かしていた。すると先ほどの発言は嘘ではなかったようで、昨日美優が失敗したものを一回で取ってしまった。
「はい」
「あ、ありがとう……!」
その美優の笑顔に見とれていた亮雅は一瞬だけ固まったが、すぐに周りを見て言った。
「こういう小さいものは結構簡単なんだけどね。ああいう大きいものは取りづらいんだ」
亮雅が言っているのは少し離れたところにあるクッションのことだ。
それを聞いた美麗唖は、
「ちょっとお花摘み~♪」
「みっちゃん、それを言いたいだけじゃないの?」
「バレちゃった! でも本当だから行ってくるね」
美麗唖はそう言ってまた行ってしまったが、なぜか行っている間にスマホを取り出していた。
その行動に美優は一瞬疑問を持ったが、たぶん電話か何かが来たのだろうと判断した。
すると今度は亮雅のスマホが鳴った。
「? 誰だろう?」
どうやらメールだったらしくスマホをしばらく見ていた。するとすぐに顔を険しくして、
「ごめん、清河さん。ちょっと外すよ。大地、ちょっといいか?」
「え、俺?」
そう言って亮雅達は美優から少し離れたところで誰かに電話しているようだった。
亮雅達の電話が終わる前に美麗唖が帰ってきた。
「ありゃ、あの二人どうしたの?」
「わからないけど、いきなり顔を険しくして……」
「女の子の前で怖い顔とは感心しないなぁ~」
美優達で話していると亮雅達が帰ってきた。二人の顔は美優を見ていたが、さっきまでの話したいという顔ではなく、何かを心配する顔であった。
「清河さん、実は……」
「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」
亮雅が話す前にすぐ近くで子どもが泣く声がした。
美優は亮雅が話すのを放っといてその子どもの近くに寄った。
「どうしたの?」
美優に声をかけられて一瞬だけ子どもはビクッとしたが、美優の顔を見ると安心したのか肩を揺らしながら言った。
「ひぐっ、ひぐっ。あのねっ、お母さんが、お母さんがっ、いないの」
そう言われて美優は美麗唖達を見た。
美麗唖達は軽く頷き、
「それじゃ、お姉ちゃん達が探してあげる」




