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恋愛相談部  作者: 甲田ソーダ
第一章
16/131

遊ぶ場所を決めよう

 二人が昼食を食べ終わった後に行ったのは、たくさんのゲームがある階であった。

 そこにはコインゲームをはじめとした、音ゲーや射撃、その他いろいろなものが揃っていた。


「私、前にも言ったかもしれませんがゲームセンターとかあまり来たことないんです。慶喜君は来たことが?」

「たまに一人で来て、一人で楽しんだ後、悲しくなって帰る」

「そ、そうですか……」


 人の目線を気にしない慶喜もさすがに一人でゲームを三時間楽しんでいると、そんな慶喜を温かい目で見守る人の多さに気まずくなるのだ。

 慶喜はとりあえず辺りのゲームで美優がやれそうなものがないか見回した。


「俺が前に行ったときと変わっていないから、そうだな……。あれなんかやってみたらどうだ?」


 慶喜がそう言って指差したのは……


『新昆虫王者ムシキング』


「え……」


 美優は驚きを隠せなかった。慶喜がそれを指差したのもそうだが、何より驚いたのが


「あれってもうなくなったんだと思ってました……」

「俺もだよ……」


 辺りを見回してそれを見たとき正直驚いた。いかにも普通そうに指を指しはしたが、心の中では少しテンションがあがった。


「あれって男子だけじゃなく女子もやっていた記憶が俺にはあるんだが、清河はやったことあるのか?」

「一応ですが。少しやってすぐやめました」

「あれか? 女子達はあの……、着替えるやつとかか?」

「私は特にやりませんでしたけど……」


(確かにムシキングの方には人が並んでいたけど、あっちの方は並んでいる印象があまりなかったな。っと、それより)


 慶喜は気を取り直して、美優ができそうなものを探した。そこで見つけたものは……


「『エアホッケー』ですか。これも懐かしいですね」

「軽くやってみるか?」

「いいんですか?」

「ダメと言ったら?」


 慶喜がそう言うと美優は軽く笑って、台のところに書いてある金額を見た。


「四百円なので二百円ずつですね」


 美優は先に二百円を取り出し、お金を入れた。慶喜もそれに続いてお金を入れると音がした。どちらかの方にパックが出てきた音だろう。


「手加減してくださいね」

「能面を付けている時点で十分なハンデだろ」


 能面は前を見えはするが、視界が狭い。壁に当てる攻撃には対応するのは少し難しいのだ。


「慶喜君はっ、運動とかっ、得意ですかっ?」

「得意かどうかは置いといて面倒くさいな」

「得意かどうかをっ、聞いているんですっ」


 美優は打つ度に呼吸を止めていたが、慶喜はのうのうと打っていた。


「得意かどうかはわからん。普通レベルじゃないか?」

「そうっ、ですかっ」


 それから二人は話し合いながら打ち続け結局勝負は三対三の引き分けとなった。


 エアホッケーを終えた後、美優はベンチに座っていた。普段からあまり運動しない美優にとってエアホッケーは相当疲れたようである。

 やっていたときは慶喜と話せることに浮かれていたが、終わった途端に疲労が出てきたのだ。


「ほら、清河。これでも飲め」


 美優の後ろからペットボトルが出てきた。


「あ、ありがと……う?」


 そのペットボトルの中身は初めて慶喜と話したときに飲んだミネラルウォーターだった。


「慶喜君、これって……」

「ああ。嫌がらせだ」

「ひどいな~」


 口ではそう言っていたが、美優はこれが何よりも好きだった。もとからではない。つい最近そう気付いたのだ。

 美優はそれを少し飲んだ後立ち上がった。このまま、まったりしている時間も悪くないが、もっと慶喜と遊びたい、そう思ったのだ。


「慶喜君っ、次はどれにする?」

「まぁ、定番のものと言えばあれかな」


 そう言って慶喜が向かったのはUFOキャッチャーのコーナーだった。

 UFOキャッチャーの他に様々な種類があり、普通にクレーンを使って取るもの、決められたところに棒を落とすもの、紙に弾を当てて紙を破ることで景品をゲットするものなどがあった。


「UFOキャッチャーって全然取れないんですけど、何かいい方法はありませんか?」

「一に練習、二に練習、三四五は諦める」

「諦めるのですか……」


(どんなに頑張ったって絶対に取れないようになっているものがこの世には存在するんだ。特にゲーム機器系の奴はほぼ百パー無理だ)


 二人が適当に付近を回っていると、美優があるものをジッと見ていた。慶喜はその目線の先を追うとそこには小さいぬいぐるみが置いてあった。


「あれがほしいのか?」

「あ、慶喜君。あれって難しいかな」

「わからん。アームが弱いかどうかはやってみた方が手っ取り早い」


 そう言って慶喜はUFOキャッチャーの台へと移動した。取り出し口のすぐ近くにぬいぐるみはあり、少し移動させれば落ちなくもない状態だった。


「何事も経験だ。どうせ百円なんだし、五回くらいやってみたらどうだ?」

「わかりました」


 美優は財布の中から百円玉を五枚取り出し、そのうちの一枚を入れた。

 慶喜は念のため美優に操作の仕方を教えた。


(ラノベだったら大抵同じ失敗をするからな。ここは教えて損はないだろ)


「ボタンは横に動かすのが先だ。そのとき一度動かしたら再度動かすことはできない。上も同じだ」

「そうなんですか。ありがとうございます」


 そう言って美優は台の上に集中した。真剣な表情も美優がすると、男心をくすぐるのだろう。慶喜は特に何も感じないが。

 結果を言えば、美優は惜しいところまではいった。少し動かせば落ちるところにあるのだが、想像以上にアームが弱い。わざと少しずらして、ぬいぐるみを押そうとしたが動かなかった。


「ダメ……でしたね」

「そうだな」


 美優は悲しそうな目をして、違うところへと移動した。

 慶喜は能面の中で小さくため息をついた。



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