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恋愛相談部  作者: 甲田ソーダ
第一章
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待ち合わせの練習をしよう

 土曜日、慶喜は八時に目が覚めた。

 その顔には疲れや緊張、ましてや寝不足といったものは見えなかった。


「はぁ、面倒くせぇよなぁ……」


 慶喜はそう言うと布団から起き上がり台所へと向かった。

 冷蔵庫の中には昨日買って置いた野菜類が入っており、他にはオレンジジュースなどいかにも朝にはうってつけのものでいっぱいになっていた。


「適当に野菜炒めくらいでいいか」


 慶喜は冷蔵庫の中からキャベツ、もやし、人参などを取り出すと、慣れた手つきでそれらを切り、炒めた。

 野菜炒めをテーブルの上に置くと、昨日炊いておいたご飯とオレンジジュースをコップに入れ、野菜炒めのすぐ近くに置いた。


「いただきます」


 朝食すぎる朝食を食べると、慶喜はテレビをかけながら皿を洗い始めた。


『今日は朝から晴れが続き、明日も晴れるでしょう。明後日は曇りになるでしょう』


(明日は晴れか。まぁ、晴れてなくても関係ないんだけど)


 洗い物を終えた慶喜はやっと着替えることにした。

 今日は美優が隣にいることになっている。美優は間違いなくたくさんの人から注目を浴びる。となるとその隣にいる慶喜にも視線がいくことになるが、慶喜だとバレてはいけないのだ。


(目立たない格好って何色の服だ?)


 普段から外に出ることがない慶喜は違う意味でどんな服を着ていけばよいかわからなかった。

 とにかくいつも通りの服を着ることにして、他にメモ帳とボールペンを鞄に入れて、出かける準備をした。

 時計を見るとまだ、九時にすらなっておらず、適当にテレビを見ていた。


「面倒くせぇなぁ……。何が面倒くさいって休みの日に休めないのが一番面倒くせぇ」


 一人で文句を言っていると家を出る時間となった。

 そこであることに気付いた。
















 学校の裏に行くとそこにはもう美優がいた。

 半袖の黒と白のしましまの服に薄いピンクの長いスカート。普通の組み合わせの服だったが、美優が着ると美少女にだけ許された服に見えた。


「清河、自転車は?」


 慶喜がそう言うと美優は嬉しそうに振り向いた。


「あっ、慶喜……君……だよ……ね?」


 美優はなぜか疑問で尋ねたがそれは仕方のないことだった。

 なぜなら……

 慶喜の顔にはがついていたからだ。


「そうだ、俺だ」


 慶喜はもう一つの顔を横に動かすとそこには間違いなく本物の慶喜の顔があった。


「どうしてお面をしているの?」

「俺が俺だとバレないように。これだと目立つかもしれないが、それが俺だとバレることはないだろ」


 慶喜が家を出るときに気付いたことは、


(そうか。どうやって俺が目立たないようにするかじゃない。俺だとバレなければいいのか)


 ということである。そうして慶喜は家の中にある適当なお面を付けてきたのだ。そしてそのお面というのが、


「それでも能面はどうかと思うよ……」

「仕方ないだろ。これぐらいしかすぐ見つからなかったんだから」


 さすがの美優もそれには驚き、戸惑い、そしてひいていた。

 町中で能面をかぶる奴など見たことがない。そもそも今どき、家に能面があることのほうが珍しいだろう。


「それより清河自転車はどうした? まさか乗ってこなかったとかじゃないだろうな」

「う、ううん! それは大丈夫。近くのコンビニに置いてきたから」

「なぜコンビニに……」

「そ、それは……!」


 実を言うと美優は慶喜に自分の服の感想を言ってほしかったのだ。自転車があったら慶喜は間違いなく感想を言う前に、サトーヨーカドーに行くとわかってたからだ。

 だが、実際は自分の服の感想の前に、慶喜の能面の衝撃が強すぎて逆に感想を言ってしまったのだが。


「まぁいいや。それじゃとにかくコンビニにまず行くか」

「え、あの、もしかして本当にそれで行くんですか?」

「そうだと言っただろう」


 慶喜は美優の戸惑った顔を置いといて先に歩いた。しかしすぐに立ち止まると美優を見た。


「どうしたんですか?」

「いや、まぁ言う必要もないが、礼儀だと思ってな」

「?」


 慶喜はだるそうな目を美優に向けて言った。


「その服なかなか似合っているぞ」

「……!」


 美優は顔を真っ赤にして下を向いた。慶喜はそれを見た後、今度こそコンビニまで歩いていった。


(その服はできれば明日も着てきてほしいが、さすがに無理だよな。今日は下見だけなんだからおしゃれしなくてもよかったんだがな……)


 美優はすぐに慶喜の後を追ったが、慶喜の顔をまともに見れなかった。

 といっても見る顔は能面しかなかったが。


 コンビニに行く間も慶喜は普段の美優と同じくらい、もしくはそれ以上の注目を集めていた。美優への注目が慶喜を映すというより、慶喜への注目が最初にあってその隣の女の子が可愛いというような状況だった。


「慶喜君、やっぱり目立ってるよ!」

「安心しろ。俺はこの注目に五分で慣れたから」


 慶喜は慣れたかもしれないが、その隣を歩く美優は慣れるどころか余計に恥ずかしさを増していた。

 そんな状態でついにコンビニに着いた。


「よし、それじゃこっからは自転車で行くぞ」

「う、うん……」


 それから二人で自転車でサトーヨーカドーに行ったが、能面が自転車を漕ぐというシュールな光景に町の人々はどう反応すればわからなかった。


(慶喜君は他の人と感性が違いすぎるよ……)


 自転車を漕ぐ能面はたった一日で町中に広まった。



前回の問題の解答

①What a clever boy he is!

②How clever he is!

③彼はとても足が速いので陸上部の一人だ。


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