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恋愛相談部  作者: 甲田ソーダ
第五章
123/131

すべてをバラそう

ちょい短めですが、区切りがよかったので。

 そうして変化が起きたのは、突然のことだった。


 悪いことはいつも突然で、前触れなんてものは滅多なことがない限り起きはしない。


 しかし、それもまた違う(・・・・・・・)


 前触れは起きている。


 起きていてもそれに人が気付かなかっただけのこと。


 今回も、そういう話でしかなかったのだ。


 今一度、慶喜の指示による瀬良の行動を読み解いていく。


 そのすべてが読み解かれたとき。


「アンタが志賀で合ってるよな?」


 そう目の前で二三也に言われるのは当然のことだった。


 時間は放課後すぐのこと。二三也の所属するサッカー部がたまたま休みの放課後。


 慶喜がいつものように行動しようと思った矢先、二三也が教室に入ってきてそう言った。


(思ったよりも早かったな)


 一つ上の先輩から見下ろされて慶喜が思ったことはその程度だった。


(もっと時間がかかると思っていたんだが……まぁ、好都合だ)


 主人公キャラの時間と現実の時間にはあまりにも差がある。


 現実にはもっと時間がかかると思っていても、主人公達はそんな問題を一瞬のうちに解決してしまう。


 それも仕方ない。


 主人公達に取ってイベントは山積み。一つ一つに充分な時間かけていられる余裕はない。


 なんてことを気楽に考えていられる慶喜とは対称に、二三也の顔には余裕がない。


 何をそんなに急ぐことがあるのか、と思うほどに。


(ま、それもそうか)


 実際に焦っているのだ。


 急がなければいけない理由が二三也にはある。


 そして、その理由を慶喜は知っている。すべて、そう仕組んだのだから。


 だが、まだ仕組まなければいけないことがある。


「いきなり何ですか?」


 不機嫌さを含みながらそう訊いた。相手の冷静がさらに欠けるように。


 そうしてポケットに手を入れれば、その態度に二三也はもっと憤りを覚える。


 その直後に。


「…… ()


 聞こえるか聞こえないかの声で、微かに口角をあげて嗤ってやれば。


「テメェ!」


 こんな簡単に、元不良だった男はキレるだろう。


 どれだけ大人しくなったところで、根本がそんな簡単に変わるほど人の人生は甘くはない。


 これまで積み上げてきたものをバカにされるようなことがあれば、誰だって怒る。


 襟を掴まれ、無理矢理立たされた慶喜はそれでも嗤う。


「周りの奴らが見てるだろ」


 そう言うことで、ほんの一瞬、周りに注意が逸れたところで、ポケットの手の中にあるスマホの送信ボタンを押す。


 いつ来てもいいように、準備をずっとしていたおかげだ。


「そんなのは関係ない」


 場所を移さないか、という暗な提案を二三也はばっさり切り捨てる。


(お前ならそう言うと思ったよ)


 これまでの二三也を調べてくれば、どんな性格なのかはすぐにわかる。


 周りの目に敏感な男じゃない。


 良くも悪くも、むしろ周りを巻き込んで一緒に悪を悪と断じる性格。


(まさに公開処刑をするにはうってつけの相手)


「人を……」

「あん?」 


 それでもすぐに人を殴らなくなったのは、彼女のおかげと言わざるを得ない。


 何発かは慶喜も覚悟していたのだが、それは杞憂だったようだ。


「人は遊びの道具なんかじゃねぇだろ……!」

「何の話だ?」

「とぼけるな!」


 二三也から目を逸らすように、教室の入り口に目を向ける。


 そこにいた人物に思わず笑いそうになるのを、堪えて二三也に目を戻す。


(すべては整った。あとはアンタがすべての謎を言うだけでいい)


「山野瀬良、知っているだろ」

「あぁ、俺の部活に相談してきた先輩だ」

「……お前は本当に最低だな。先輩を相手に」

「よくわからないが、先輩だから後輩が気を遣うという体育会系のノリは好きじゃない」


 それに関しては本心を口にする。


 先輩後輩関係なく、敬うべき相手は敬う。先輩だからという理由が慶喜には卑怯に思える。


「それでもだ!」

「……というと?」

「言っただろ! 人を遊びの道具のように……!」

「だから何の話をしている?」


(早く言ってくれ。邪魔が入る前に)


 ここでタイミングを間違って失敗するなんて、あってはならない。


 最高で最悪のタイミングで言うからこそ、効果が大きい。


 ここにいるすべての人に聞こえるように言い放て。


 慶喜が仕組んできたすべての悪を。


「俺は、知っているぞ」

「……だから。なにを――

「お前が――



 瀬良さんが失敗する様を遠くから見て笑っている、ってことすべてを!」






「…………………………………………………………………………………………え?」


 その二三也の言葉に最も驚いたのは、彼のすぐ後ろにいた。


 山野瀬良だった。



次回で、すべてがわかります

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