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恋愛相談部  作者: 甲田ソーダ
第五章
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動きだそう

 いつものように部室で昼食を摂っていると、コンコンと戸を誰かが叩く音がした。


「誰だ?」

「こんな時間に来るなんて珍しいね」


 ついこの間までは入部希望する迷惑極まりない学生達でいっぱいだったこの空間もようやく落ち着いていた。


「失礼しますね」

「あ、先生」


 ゆっくりとドアを開けて入ってきた人物は倉間先生だった。


「相談は順調?」

「まったく。相談してきて言うことを聞かないのは一体どういうつもりなんだか」


 一応、先生には今回の相談相手について簡単な説明はしていた。


 相当危ない奴、とだけ。


「危険なことはしていないよね?」

「俺達は、な」


 慶喜は「はぁっ」と投げやりなため息をつくと、倉間先生をジッと見た。


 ジッと見つめてしばらくして、また「はぁ」とため息をついた。


「な、何?」

「この学校って恋愛脳ばっかりだな、と思って」


 ギクギクゥ!!


 と、慶喜の隣と向かいで美優と月葉が顔を強ばらせたことに気付かない慶喜は、上半身を椅子に預けて天井を見上げた。


「もう夏だってのに、一体どこにそんなエネルギーがあるというのやら」

「夏と恋愛は関係ないんじゃない?」


 もう当然のようにいる美麗唖がそれに対しツッコむが、


「こうも暑くなると、考えるだけでも疲れてくるんだよ。ましてや、お前らは何もしてくれねぇし」

「いやぁ。考えるのはストーカー君の役目でしょ」

「……はぁ」


 これまでお前らが行動してくれた回数と俺の回数を考えてみろよ、と喉まで出かかった慶喜だったが、最後の最後で暑さに負け、うだぁ、と机に突っ伏した。


「それで? 倉間先生は何をしにここに?」


 そう言われ、倉間先生は「あっ」と手をポンと叩いた。


「文化祭、どうするのかまだちゃんと聞いてなくて」

「あれ? 一応恋愛のノウハウを教えるってことになってなかったっけ?」


 美麗唖が首を傾げると、倉間先生は「うん」と頷いた。


「何をするのかはわかったんだけどね。具体的にどうするのかってのはまだちゃんと聞いてなくて」

「え、紙に適当に書いて貼るとかじゃダメなんですか?」


 美優の答えに先生は困ったような顔を傾けて、


「それだとあまりにもなんというか……」

「手抜き、ということですね」

「うん……」


 月葉のはっきりした答えに倉間先生は気まずそうに頷いた。


 他にどうしようもないことは先生もわかっているが、それでも教師としていかにも間に合わせで作ったかのようなものを展示することを許すことができないのだろう。


「なんでこうも仕事を増やしていくんだよ……」


 慶喜は額に手を当てると、机に頭を埋め込むように突っ伏した。


「慶喜君!?」

「慶喜くん!?」


 美優と月葉がギョッとした様子で慶喜に触れようとしたところを、美麗唖が手で制した。


「まぁ、先生には悪いけどその話はまた後で決めようよ」

「そうですね。けど、あと二週間で確定しないとダメですよ? いろいろ準備もありますので」

「……助かる」


 ゆっくりと頭を上げた慶喜は自分を落ち着かせるように息を吐くと、そこで慶喜の携帯が鳴った。


 チラリと慶喜は倉間先生を見た。


 基本的に学校で携帯を使うのは御法度だからだ。


 美優のときのように先生にもバレないように使うのならいいのだが、こうも目の前で使うのはどうかと思った慶喜だったが。


「構わないですよ」

「すいません」


 どこか心のこもっていない返事を返した慶喜は、スマホのメールを開いた。


 メールを受信したようだ。


「どなたからですか?」

「明人だ」


 今さらだが、この場に明人はいない。


 二三也と瀬良との間に関係を作るには、まず何よりもその二人の中間役が必要である。


 漫画や小説のように突然関係ができるなんて普通じゃなさすぎる。


「ない、はずなんだがなぁ……」


 今になって思うと自分の周りはそんな奴らが多すぎる、ということに気付いた慶喜だった。


「それで、なんて書いているんですか?」

「……やっと動き出したか」

「動き出した?」

「事態が、ね」


 ここ数日、あえて慶喜は何もせずに明人にすべてを任せていた。


 その理由はいろいろあるが、最たる理由は、あれだけ暴走をした瀬良がちゃんとこっちの要望を守ってくれるか確かめる、というものだった。


 幸い、ここ数日は約束を守ってくれていると明人からのメールをもらっていた。


「さて、倉間先生。ほぼ初対面の相手がどうも不自然すぎる動きを見せたら、先生なら何を考える?」

「えっと……そうですね」


 しばらく考える素振りを見せた先生は小さく頷くと、


「こう言っていいのかどうかわかりませんが、やっぱり何かあるのではないかと疑っちゃうと思います」

「だよな」


 そう。そう考えるのが当然だ。


「あの失敗は俺の計画を相当狂わせたわけだが、この展開も今になって考えれば悪くはない」


「まぁ、それでもあの先輩を許すわけではないが」と慶喜は付け加える。


「……?」


 慶喜が何を言いたいのかよくわからない倉間先生は首を傾げるだけだったが、慶喜の笑みを見て、安心したように笑った。


「慶喜君が考えたものなら大丈夫ですね」

「変な信頼はいらないんだがなぁ」


 そう言いつつ慶喜は明人にメールを送り返すと、美優と月葉を見た。


「さて、そろそろお前達の番だが準備はできてるか?」

「問題ないよ」

「いつでも大丈夫だよ」


 美優と月葉の答えに慶喜はニヤリと笑った後に美麗唖を最後に見て、


「お前もだからな」

「……へ?」


 意味深な笑みに美麗唖は思わず身震いするのだった。


この章が終わる前に次の章を決めてしまった……。

とりあえず、来年までにこの章だけでも終わらせないと……。


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