表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛相談部  作者: 甲田ソーダ
第五章
117/131

両親と話をしよう

 慶喜がグッタリとした様子で家に帰ると、玄関に靴が三足置いてあった。



 二つはわかる。



 心の底から家にいてほしくない二人の靴だ。



 もう一つもよく知っている靴だ。



「うわぁ……。めんどくせぇ」



 慶喜は鞄を降ろすこともせずに、黙って玄関の戸を再度開けようとドアノブに手をかけたときだった。



「あ、お兄ちゃ~ん!」



 ガチャリ。



「え!? 聞こえているのに無視!?」



 逃げるように家から出ようとした慶喜の腕を、妹子がガシッと捕まえた。



「もう~! お兄ちゃん。なんで二人が帰ってきたこと知らせてくれなかったのさ」

「こうなるとわかっていたからだ」



 必死に逃げようとする慶喜の腕を掴んでしっかり掴んで放そうとしない妹子は、強引に慶喜を引っ張って居間に連れて行く。



「お前どんだけ力あるんだよ」

「お兄ちゃんが非力なだけだから。さっ、さっ。入った入った」

「いや、ここ俺の家だけどな?」

「自分の家から逃げようとしてたのはお兄ちゃんだよ?」

「ああ言えば、こう言いやがって」

「それお兄ちゃんが言うことじゃないから」



 観念して慶喜が居間に姿を見せると、両親が揃ってテーブルに座ってジッと慶喜を見ていた。



(だりぃ……)



 二人の内、片方はなぜか泣いていて、もう片方は嬉しそうな表情で見ていた。



「よかった、よかった……!」

「おいおい、泣きすぎだぜ。母さん」



 慶喜はジト目で妹子を見ると、妹子は面白そうに慶喜に笑いかけた。



「お前、何を言いやがった?」

「え、何だと思う?」

「……大体わかってるけどな」



 面倒くさい、とばかりにため息を吐いた慶喜は、その二人と向かい合うように座ると、その隣に妹子が座った。



 たったそれだけにもかかわらず、相手の二人はなぜか「おおっ」という声をあげ、慶喜の疑惑は確信に変わった。



「嘘だからな?」

「ん、何がだ?」

「いや、だから」



 慶喜はやけにくっつこうとしてくる妹子を本気で蹴りながら指を差した。



「俺とコイツは付き合ってもないし、ましてや結婚もしないからな?」

「なんだと!?」

「えぇ!?」

「ちょっとお兄ちゃん!?」

「いや、お前は驚くな」



 器用に目に涙を浮かべている妹子を、手で押しのけてると、慶喜は頭を抱えていつも通りため息をつく。



「何回言えばいいんだ。コイツの言うことの九割は嘘だって」

「だ、だって昔から仲がいい妹子ちゃんにならって!」

「あ?」

「うわぁ。本気で嫌そうな顔」



 親に向かって露骨に嫌そうな顔をした慶喜に、妹子はやれやれと肩をすくめて、



「もう。気にしすぎなんだって。お兄ちゃんは」



 そう言うと、



「気にしすぎ、ねぇ」



 慶喜は目の前の二人を交互に見比べて、やっぱり無理だと首を横に振った。



(他人から見れば、気にすることではないと思うどころか、気付きもしないだろうが)



 気付いてしまえば、あまりの違和感に終始追われることに違いない。



 妹子は気にしすぎと言うが、慶喜からしてみれば、お前は気になさ過ぎだと言いたい。



 今日の部室でも言っていたが。



 人はほんの少しの違和感を根に持ち続ける生き物だ。



 それを慶喜が知ったのは、この二人の所為なのだ。



「ね、ねぇ……?」

「なんだ?」



 先ほどまで泣きじゃくっていたエプロン姿の女性は、腕で涙を拭うと、確認するように慶喜に尋ねた。



「本当に嘘なの?」

「当たり前だ。俺はコイツが大っ嫌いだ」

「そんな……!」



 俺と妹子のどこを見て仲がいいと思ったのか。



 いつも弄られていたのは俺の方だというのに。



「まぁ、でもそれは仕方ないと思うよ」



 観念したように妹子は笑うと、楽しそうに言った。



「今のお兄ちゃんの部活ではもっと面白いことになってるし」

「おっと!」

「え、何それ聞きたい!」

「お前……!」



 今度は急にテーブルに乗り出した二人を面倒くさそうに見た後に、妹子を横目で見ると、妹子は口元を押さえて必死に笑いを堪えようとしていた。



(この野郎……。マジで今から明人に電話でもしてやろうか)



 そんなことを考えている慶喜に二人は怒濤の勢いで尋ねてくる。



「お前が部活に入ってるとは! どんな部活なんだ!?」

「もしかして女の子もいるの!?」

「まさかハーレムか! このこの!」

「慶喜に彼女ができたと思うだけで……。うぅ……!」

「うるせぇ、少し黙れ」



 この二人は何かと息子の自分の彼女やらに食いつくが、それに関してはどこの親も一緒だろう。



 でも、それがわかっていても慶喜が面倒くさいと思うのは変わりない。



「恋愛相談部っていう部活だ」

「恋愛相談部? はっはぁ! なんじゃ、そりゃ!」

「俺だって入りたくて入ったわけじゃない」



 どうせ暇だからと言われて入った部活なのに、今ではどこの部活よりも大変な部活だと自信を持って言えるくらいになってしまった。



「学校のアイドルと、少し前までテレビで活躍していたアイドル。そして、主人公みたいにモテる奴ときた」

「なんだそりゃ! 退屈しねぇ毎日になりそうだなぁ!」

「俺は退屈な人生が一番なんだよ」

「何言ってるの! 人生は楽しくなきゃ」

「アンタらの価値観を押しつけないでくれ」



 椅子の腰掛けにもたれかかる慶喜だったが、妹子がまた余計なことを口走ろうとしていることに気付いた。



 だからここで慶喜も仕掛けた。



「だが、それ以上に今、コイツも面白いことになってる」

「んな!?」



 そう言うと、慶喜の予想通り両親がこれでもかと食いついてきた。



 相変わらず人の恋愛事情を楽しむ二人だ、と慶喜は思った。



「その主人公みたいな奴が、コイツのことを――

「おおっと!? 手が滑ったぁ!」



 わざとらしい声とともに、慶喜の頬に手のひらが飛んできたが、慶喜はそれをスッと躱すと、先ほどまでの妹子と同じように笑った。



 そして、乗り気になったかのように身を乗り出したところで――



「はいはい! この話は終わり。はい!」



 妹子がむりやり話を終わらせようと、手を暴れさせるが、この二人が止まることはない。



 目を輝かせて話を始めようとする三人の家族を見て、妹子の顔はどんどん青ざめていったのだった。



一度、データが吹き飛んだときは焦りましたが……あれですね。

バックアップシステム、マジで最高です……!


そうそう、最近グラヴィティさんに曲を作ってもらっています。

アニメのオープニングを意識したものですが、かなりの出来映えですよ?

まだ一番だけですが。

……あれですね?

ここまでくると、そろそろ挿絵を誰かに描いてもらいたいと思ってしまうのはいささか貪欲すぎでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ