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恋愛相談部  作者: 甲田ソーダ
第五章
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華麗に話し合おう

長い一週間でしたね、はい。すいません!

バイトなのに23連勤もしていると、話を書く暇もありませんね!

あとは今年も小説を応募しようと書いていますね。今年こそは、と最近、小説の書き方を本で調べています。

すると、やっぱりそうですね。語彙力以前に自分の文章力がゴミすぎて……。

――と、まぁ。活動報告に書くべきことをこちらで少し綴って。

「逃げられちゃったかぁ……」


 明人は路地の真ん中で、短い息を連続させながらそう呟いた。


 妹子の背中を追っていた明人だが、普段から慶喜を追う側の少女は相手を撒く方法すらも熟知しているようだ。細かく角を何度も曲がることで明人の視界からすぐに消えていき、あっという間に見失ってしまった。


「いや、うん、でも。なんだか新鮮な気分だ」


 前までは追う側ではなく、ずっと追われる側だった。追われているときは「なぜ?」と思っていたが、今になると、彼女たちの気持ちもわからなくもない。何かに必死になるのは理由はどうあれ、楽しいと思えてしまう。


「まぁ、逃げられちゃったのはちょっと残念だけど」


 彼女のことだ。きっと今頃志賀君にでも電話していることだろう。


 そう思って明人も携帯を取りだし、慶喜に電話をかけようとしたところで、肩をツンツンと指先でつつかれた。


 その瞬間、ビクリと何かが反応し、そのことから、顔を見る前に性別を特定してしまった。

 おそるおそる振り返ると、どこかで見た覚えのある人物が腰に手を当てて立っていた。さらに、その人物は慶喜達の学校の制服を着ている。


 この人って確か……。


 学校内ですれ違っただろうか、と自分の記憶の中にある顔と照らし合わせようとしたところで、その女性がビシィッ、と明人の顔を指さした。


「君!」

「は、はい!」

「少し前から見ていたが、中学生を追いかけてはいなかったか?」

「え、いや。あの。そ、それは……その」


 しまった。


 いくら気持ちが抑えきれなかったとはいえ、周りの人達から見れば年下の女の子を追いかけ回っているヤバい高校生にしか見えなかっただろう。


 中学三年生と高校一年生では、実際のところ、一つしか歳は違わないが、そんなことを周りは当然知らないわけで。


 口ごもり俯く明人に、なぜか女性は呆れた顔をする。


「あれでは追いつけるわけがないだろう?」

「……え?」


 あまりにも予想外すぎる言葉に反応が遅れる明人。そんな彼に女性は「わかっていないなぁ」とばかりにやれやれと首を横に振る。

 どうして初対面の相手にこうも馬鹿にされないといけないのか、と心の隅で思う明人だったが、女性は凜とした表情で再度明人に指をさす。


「何がいけなかったと思う?」

「な、何ですかねぇ……?」


 中学生を追い回すことです、と言えばいいのか。

 だが、女性の目は、そういうことを聞いているようではなさそうである。

 とすれば、やはり。この質問の意味は、中学生の追い回し方を伝授させるための質問なのだろうか。


「ば、バレないように。……です、かね。ははっ」


 聞き方によっては冗談交じりに聞こえる言い方をしてみた。

 もし、この女性が「そういう問題ではないだろう! 中学生を追い回すな!」ときちんと言ってきたときは素直に謝ろうと明人は準備するが、女性はまたしても「なんて浅はかな考えをしているのだ」と首を横に振る。


「それはもはや追跡ではなく尾行であろう? 君は見た目に反して賢くないようだな」

「す、すいません」


 なんだろう。この女性にだけは言われたくない。


 だが、本気で追跡の仕方を教えてくれるのではないか、と思うと、冗談半分に少しこの女性につきあってもいい気がしてくる。

 であれば、今度はちょっと考えて発言してみる。


「なら、先回りすればよかったんですか?」

「全然ダメだな」

「それじゃ、一体何がいけなかったのか教えてくれませんか?」


 こめかみをピクリと動かしながらそう尋ねると、待っていたと言わんばかりに、女性は目を光らせて腕を払った。周りには見えないマントを払ったようにも見えなくもない。


「君の何が悪かったというと」

「というと……?」



「ずばり! 華麗さが足りない!」



 あ、この人ダメな人だな。中学生を追い回していた自分が言うことではないけれど。


 そのとき、女性の腕に緑の腕章がかけられていることに明人は気付いた。それと同時に、その女性についても思い出した。


「もしかして、華麗から麗華れいかさんですか?」

「ほう、私を知っているのか! それほどまでに私は華麗か!?」

美来みくが言っていたとおりの人だなぁ」


『最近』『屋上で』『知り合った』『不思議な』同級生が言っていたことを思い出しながら明人はそう呟いた。


 なんでも、自分が『華麗』であることを体現している人物であると同時に、極限の『華麗』を追い求める人物だとかなんとか。

 その同級生の美来の話では、次の生徒会長を狙っているという話もあるそうだが、今の今まで忘れていた。


「話がズレたようで申し訳ない。それでだ! 追跡は華麗に行われなければいけないのだ!」

「華麗……ですか」

「そうだ。あらゆるものは華麗に行われなければいけない。逆に言えば、華麗に行われていないから、失敗してしまうのだ」

「あ、これ志賀君に粉々になるまで論破されますね」

「……ほう。どのように華麗に論破するのだ?」

「い、いや僕ではなくて――」

「華麗をもって華麗を制す! さぁ! どのような華麗を見せつける!?」


 グイグイと差し迫ってくる麗華の気迫に、明人は思わず後ろへ下がるが、それに合わせてどんどん距離を詰めようとしてくる。


 治りかけていた震えが再来する。


「ひっ!」

「あっ、華麗に待ちたまえ! ……ふっ。であれば、華麗に追いついてみせよう!」


 どうやら自分はどうあがいても女性に追いかけ回される運命のようだ。であれば、これから妹子に会ったときは、より妹子を追いかけることに力を入れよう、と思う明人であった。



投稿していなかった時期にもブクマが増えるのはとても励みになります!

こんな不定期投稿する私ですが、これからもお願いしますm(_ _)m

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