作戦を練ろう
基本2000文字以上を目安にしているんですが、これがなかなかきついときがある……!
2000文字越えて、区切りをつけようと思ったときが一番書きやすくて、長くなるのはなんで?
案の定、二三也と関係のある人物は簡単に見つかった。
明人の偽ハーレム計画が失敗したときの予備として、あっちにも少しだがちょっかいをかけていた人物は慶喜が想定していた人物よりも多かった。そのおかげで、簡単に見つけることが出来たのだ。
「相変わらず救えねぇとだけは思うけどな」
よくもまぁそれで本気で恋しているとか言えたもんだ、とつくづく思う慶喜だったが、今回はそれに助けられたのだ。深くは追求しない。
「それで明人。うまくいったか?」
「うん。知り合い程度にはなったと思うけど」
「さすが関係を作ることに関してはプロだな」
互いに主人公気質を持っているだけあって、簡単に関係が結ばれる。
「それじゃ、こっからは瀬良先輩の出番だ」
「は、はい!」
瀬良は緊張しているのか、やけに高い声で返事をした。
……ちなみに、慶喜は本人の前では瀬良先輩と呼ぶことにされた。さすがに先輩相手に完全なため口はいけないだろう、と美優と月葉が提案したためだ。断る理由もなかったので承諾はしたものの、慶喜はどこか面倒くさそうな顔をしていた。
「変な気分だ」
「え?」
「何でもねぇ」
先輩に見えない瀬良に対して先輩と呼ぶのは少し違和感があるらしい。
「そ、それより」
美優が話を戻すように言う。
「具体的な内容を聞かないと、ね? ほら」
「は、はい」
こうして見るとやはり内気な先輩にしか見えないのだが、人の心の内とはまさに怖そうだ。
慶喜はもう慣れ始めたのか、普通に話せるようになっているが、後の部員達はどこか緊張した面持ちで瀬良に話しかけていた。
「やるなら平日がいい。学校帰りがベストだな」
「休日じゃないの?」
「休日に会うとか運命すぎるな」
「ダメなんですか? いいと思いますけど運命」
『運命』という言葉に瀬良の目が少し暗くなり、それに部員達が顔を強ばる。
瀬良としては運命の相手とは運命で結ばれていることを証明したいのであろうが、
「皮肉だ、皮肉。この世に運命的な確率がそうそう存在するか。これも俺達が関わっていることを隠すためだ」
存在しない、と言わなかったのは慶喜の配慮だ。
慶喜に言われ、瀬良はケロリと目の色を戻し、ホッとしたように息をついた。それに合わせて部員達の上がった肩も一緒に下がった。
瀬良にもそうだが、慶喜のギリギリな発言の方がハラハラしている気がする三人である。
「それに休日はサッカーの試合があって大変だろうし。サッカーがない日は家でゆっくりしたいだろ。あい――二三也先輩だって」
「いえいえ。二三也さんはサッカーがない日は外で遊んでますよ?」
「は? 休日の意味わかってんの? 家に引き籠もれよ」
「……え?」
「け、慶喜くん! それは慶喜くんだけなの! 変なこと言わないで!」
休日に関してはどうしても譲れないのか、思わず本音を漏らしてしまった慶喜に、月葉がこれ以上ない焦りようでを叱った。
「お、おう。悪い」
「気を付けてよ!」
「おう……」
初めて見る月葉に慶喜が戸惑いを隠せずにいると、瀬良がふと首を傾げた。
「もしかして二人は付き合っているのですか?」
「は?」
「へ!?」
「な!?」
「あ!」
慶喜が首を傾げ、月葉と美優が目を見開き、最後に明人が頭を抱えた。
「ななな、何言ってるんですか!?」
「私と慶喜くんが……ふへへへ」
「あまりのことに月葉が壊れたぞ」
「ちょっと違うよ……。志賀君、それは違う」
「二度言うな。なんか腹立つ」
美優と月葉が顔を真っ赤にしているなか、男子陣は何かを言い合い、瀬良がそれを黙って見ていた。
その様子から瀬良はハッと口を押さえて、
「も、もしかして違い……ました……か?」
と、尋ねたところ、
「違うな」
「違う!」
「違わ――――……うぅ……」
「ノ、ノーコメントで」
と、よくわからない答えが四人から返ってきた。
なんとなく聞いただけだったので瀬良はそれ以上追求することはなかったが、もし追求されていたらと思うと明人は少しゾッとした。
「……うん。これからは気を付けよう」
「何をだ」
「周りの雰囲気、かな?」
「意味わからん」
自分のことを偽ハーレムと言うわりには志賀君もそれに劣ってないじゃん、と強く思う明人だった。
まぁ、それはさておき。
「話を続けようか」
「何の!?」
「瀬良先輩と二三也先輩に決まってるだろ。他に何がある」
月葉に続き美優も慶喜に対して怒りの声をあげるが、慶喜は冷静にツッコむ。
ほんの一瞬だけ修羅場と化した部室だったが、慶喜の一言で事態は収まった。
「部活帰りに会うのもやはり例のごとく怪しすぎるので、部活のない日に実行だな」
「それなら来週の月曜日ですね」
「……そうだな」
なんでそれを知っている、とはもう尋ねまい。
「まずは明人と瀬良先輩が一緒にいる……のはマズいか」
「え、どうして?」
「お前の隣に女子生徒がいたら面倒くさいんだよ」
「え、何その理由」
明人に近づく偽物のヒロインは確かにいなくなったが、未だに明人のハーレムが終わったわけではない。
本気で恋をしているヒロインがいることも慶喜は知っている。そのヒロインに変な動きをされたら厄介だ。
「お前が最初に二三也先輩に話しかけ、そのあと瀬良先輩が明人に話しかける。……明人だからな?」
「は、はい!」
「自然に自己紹介が終わったら、明人のフェードアウト。ここは……アイツを使うか」
「アイツ?」
「まぁ、お前にとって悪くはねえだろ」
「どういうこと?」
明人は詳しい説明をしてくれない慶喜を見るが、慶喜は不穏な企みをしている笑みだけ浮かべるので恐怖しかない。
「そして瀬良先輩だが」
「ふふ二人で話を盛り上げればいいんですね!?」
前のめりになって話す瀬良先輩に慶喜はきっぱりと、
「瀬良先輩からは一切話しかけるな」
と、無慈悲な言葉を与えた。