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1.はじまり、とのこと

重量感のある鈍い音が屋敷に響き渡ったのは、新緑が香るうららかな午後のことであった。


「お嬢様!! 大丈夫ですかお嬢様!?」

「うぅ……ん……」

「救急車! いや、早くヘリを!」


騒々しい喧騒で目をさますと、そこには見かけないメイド達。

慌てふためくメイド達を尻目に、周りをぐるりと見渡すとやはり知らないお屋敷でしたわ。……ここは?


「あらあら、江蓮ちゃま大丈夫かしら? 頭は打ってない? 意識はあるみたいね」

「メイド長!」

「とりあえず医務室に行きましょうね」


初老のメイドが屈強な男性を連れて心配そうにとてとてと駆け寄ってきましたわ。

どうして私の名前を? 疑問が多すぎて処理できずにぽかんとしていると、初老のメイドがぽんぽんと頭を撫でてくれました。

どういうことかしら、無性に安心するわ。


「江蓮ちゃまどこか痛いところはないかしら? ちょっと椅子がアンティークすぎたのね」


言い難いような安心感に困惑していると、突然バン!と扉が開くものですから反射的に「きゃっ!」と悲鳴をあげてしまいましたわ。……あら? 私の声、こんなに高かったかしら?


「お嬢様! ヘリが到着しました! 早く病院に!」


病院……ビョウイン……びょういん?

その言葉を聞いた瞬間、突然、かつ鮮明に脳裏にフラッシュバックしたのは注射、血、処刑台、鳳江蓮としての、記憶?


チカチカと目の前が暗くなったり明るくなったり、膨大な情報量に混乱した私の脳内は破裂しそうで、しかしこれだけは伝えなければと大声で叫びました。


「びょういんだけはいやあああああああああああああ!!!!!!!!」






病室で再び目を覚ましたと同時に、私は全てを理解していましたわ。どうやら私、鳳江蓮は椅子から落ちた衝撃から前世のエレン・グラジオラスとしての記憶が蘇り、意識も自然と前世のものになってしまったみたいですわね。

……未だ信じ難いですけれど。


「エレン! 僕のつくったケーキを食べてたら椅子が壊れたって本当か!?」


病室のドアが荒々しく開くと、少年が息を切らしながら駆け寄ってきました。

恥ずかしい状況説明をありがとうございます、お兄ちゃま。


「そうですわ! ぜんぶお兄ちゃまがつくるケーキがおいしいのが悪いんですわよ!」


噛み付くように申し上げると、お兄ちゃまはぽかんと間抜け面。

そうなんですわ、全ての元凶は私、鳳 江蓮の兄である鳳 伊織お兄ちゃまのせいなんですから!


「ご、ごめん……」

「なので、もうえれんにケーキはつくらないでくださいまし」

「ファッ!?」


あまりの衝撃だったらしく、お兄ちゃまはそのまま固まって動かなくなってしまいました。

それもそのはずですわ。お兄ちゃまのつくる膨大な量のケーキを全て食べていたのは、この私なのですから。

……そのせいで、というのは大袈裟ではありませんわね。

チラリと病室の窓に反射する自分の姿、ああ、我ながらなんて情けない……。

思わず目を覆い隠したくなるほど、私の身体は醜い脂肪に包まれていましたわ。

変えなければいけません、この現状、全てを!

プロローグでシリアス展開は終わり!閉廷!

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