天使か悪魔?どっちなの?
まぁ、そんなこんなで今日も部活の朝練に打ち込んでいるところだ。剣道歴は10年になる。全国大会に出場した時は侍王子とか名前で呼ばれてイラっとしたのを覚えている。そのことを紅い瞳の彼女に話したらケラケラ笑われた。それだけで僕の心は落ち着いた。自分でも単純だと思った。彼女のことは親友の薫しか知らない、と言うか教える気がない。薫となら一部の女の子に広まっているゲイ疑惑も怖くない。イヤ、できれば消えてほしいが…。
体育館の周りには、僕のファンが沢山いる。部長も最初は「なんとかしろ!」と言っていたが今ではもう諦めている。逆に女の子に見られている感覚に陥って、テンションが上がりまくってる。
朝練を終えてシャワーを浴びている前に、窓の鍵のチェックを再確認した。以前盗撮されて、僕のフルヌード(後ろ姿)が高値で取引されたらしい。学校からも理不尽な事に僕が怒られる羽目になった。それ以降窓の鍵チェックは欠かさないようにしている。
シャワーを浴びながら彼女の事を考える。
…なぜ彼女は、満月の夜にだけ会いにきてくれるのだろう?
そして何故、名前を教えてくれないのだろう?と。
そうなのだ何故か彼女は名前を教えてくれない。
出会ったのはもう物心ついた時。彼女はもうその時から今のままの姿をしている。でもその事には違和感を覚えず、今まで経過している。
薫に一度言われた事がある。「その人、雅幸にとって天使か悪魔、どっちになるんだろうね?」と。「天使でも悪魔でも構わないさ。彼女がいてくれれば僕は幸せだから」と即座に返答してやったら、ヤレヤレと言わんばかりの顔だった。
そしてまた満月の夜が来る…。