第10話
長老宅の貸し与えられた一室にて、何度目かの寝返りを打ったソラはベッドの中で上半身を起こした。身体は疲れているはずなのになかなか寝付けないのだ。
「……ふう」
樹木に空けられた四角形の窓からぼんやりと外を見る。
真夜中の森とはいえ、地面や木などに光りゴケが生えているので結構明るい。里のあちこちに淡い光がぽつぽつと点っている光景は幻想的であった。
(お水をもらってから、外に出よう)
このままベッドの中にいてもまんじりとしないまま朝を迎えそうな気がする。乾いた喉を潤してから外の空気でも吸って気分を入れ替えた方がいいのかもしれない。
ソラはフワフワした柔らかい植物でできた不思議なベッドから下りると、そばに置いてあった革のブーツに足を軽く引っ掛けて床の上を歩き始めた。
そして、木の扉をゆっくりと開くと、すぐ前に木でできた螺旋階段が上下に伸びているのが見えた。樹木の内部なので当然なのかもしれないが。
ソラが泊っている部屋は二階部分にあり、下に降りると長老と会談した居間などがある一階部分、上に登ると出口が設けられていて、他の樹木とを結ぶ橋につながっている。
螺旋階段越しに見える、二階にあるもうひとつの部屋を窺うと、中からエルメラの豪快なイビキが聞こえてきた。外見は完璧な八頭身美人だが中身は完全なるオヤジ気質なのだ。出会ってからもこのイビキが原因で夜中にアイラと喧嘩になりかけたのである。
ソラはその時のことを思い出しながら階段を降り始めた。家の中にも要所要所に光りゴケが配置されているので視界は悪くない。ただ、一階には長老の部屋があるので起こさないよう静かに移動する。ちなみにアルマの家はすぐ隣でオスカーもそちらに泊っている。
壁に手をつきながら一階に降りると、更に下へ続いている階段にふと目がいく。この下からは地下になっていて、貯蓄していた聖樹の雫が普段保管されており、他にも貴重な品が多数眠っているという宝物庫のような場所なのである。当然ここにも長老によって強力な結界が張られており、聖域の入り口でも感じた壁のようなものが感じられた。
(そういえば、稀少な本もたくさんあるって言ってたっけ)
夕食時に話してくれた長老の話では、あの『エノクの歴史書』を含め、本好きには垂涎もののタイトルもちらほら挙がっていたのだ。今度、頼み込んで少しだけ読ませてもらおうと思う。
ソラは一階にある炊事場に移動すると、大きな木桶になみなみと入っていた水をそばに置いてある木のコップに注いで一気に飲んだ。冷たく澄み切った水が身体にほどよく沁みる。アルフヘイムの里は水に恵まれている上に自然にろ過された天然水を汲み上げているのでとても美味しいのだ。
喉の渇きを癒したソラは再び階段まで戻ると上へ上へと登っていき、やがて小さなロフトのようになっている三階部分にまで辿り着くと、すぐ目の前にあった扉を開けて外に出た。
外に出ると部屋の中では感じられなかった緩やかな風が身体に当たる。里を見下ろしてみると時間が時間なので流石に誰もいなかった。生活習慣は人間と大差ないようだ。
しばしソラが心地よい風に身を任せていると、前方にある橋の中央に先客がいることに気づいた。
(……こんな時間に女の子が?)
里を覆う木の葉の間からわずかに差し込んでくる月明かりに照らされてエルフの女の子が橋に座っていたのだ。年は六、七歳くらいで弟のトリスよりも年下に見えた。足を空中にブラブラと投げ出してなにやらひとりで喋っている。
「ほら、こっちだよー!」
楽しそうに目の前の空間に向かって手振りを交えながら話しかけているが、ソラの目には誰の姿も確認できなかった。そもそも少女の前は何もない空中なのだ。
(ま、まさか、幽霊と会話してるんじゃ)
思わずソラはぎくりとしたが、すぐにそんなわけはないと思い直す。なにより少女の満面の笑顔が否定していた。
ソラは少々ためらいつつ橋へと踏み出す。一応両端は固定されているものの、倒木を立てかけているようなシンプルな橋である。草の蔓でできた手すりが設置されていたが、高所恐怖症の人間が渡るにはかなり勇気がいるだろう。
ゆっくりとソラが橋を進むと、笑っていた少女が気配に気づいたようでこちらに顔を向け、すぐに戸惑ったような表情になり、そのまま立ち上がろうとしたので慌てて声をかける。
「ちょ、ちょっと待って!」
少女は腰を浮かしかけていたが、ソラの声に反応して動きを止めた。
「ごめん。邪魔しちゃったみたいだね。少し涼みにきただけだけなんだよ」
ソラはできるだけ少女に恐怖を与えないように一歩一歩慎重に近寄っていく。はじめは驚いていた少女もこちらをジッと見つめていたが逃げる様子はなかった。
「隣、いいかな?」
そばまで来たソラが訊くと、少女はこくりと頷いた。とりあえず信用してくれたようで、同性で年が近いことも安心させる理由になったのかもしれない。
ソラは少女の隣に腰掛けながら話しかける。
「私の名前はソラ。君は?」
「……ルル」
「ルルか、いい名前だね。私は里のお世話になってる者なんだけど……」
「知ってる。人間の客人は珍しいから」
「そっか」
あどけない表情の割にルルは大人びた話し方をする少女だった。エルメラに似た深緑の瞳には好奇心の色が見えていて、逃げなかったのも人間に興味があるからのようだ。
「今、話し声が聞こえたんだけど、誰かいるの?」
「うん。そこに」
ソラが気になっていたことを尋ねてみると、ルルは無造作に前を指差したが、やはり先程と同じで視界には何も映らない。
「やっぱり人間には見えないのかな? すぐそこにフウちゃんがいるのに」
「フウちゃん?」
ますます首を傾げるソラだったが、ほんのわずかだが空気が動いた気がした。
(……何かがいる?)
ソラは気配を見定めようと感覚を研ぎ澄ませ、無意識のうちに自然に溶け込んでいった。
すると、徐々に薄緑色のオーブのようなものが空中に浮かんでいるのが視えてきたのだ。
「これは……」
驚いたソラがぼんやりと光っているオーブを見つめていると、ルルもびっくりした顔を向けてきた。
「すごーい! もしかしてフウちゃんがはっきり見えるの? パパとママはこの状態の精霊様を見ることができる人間はほんのわずかしかいないって言ってたのに」
「精霊様? これは精霊なの?」
「そうだよ。風の精霊様でわたしのお友達なの。でも、気まぐれだからたまにしか会ってくれないの」
ルルは笑顔を浮かべながら手を差し伸べると、オーブは宙をくるくると回りながら近寄ってきて少女の手の平に乗り、エルフの少女が話しかけると精霊もまたピカピカと点滅して応えてみせたのだ。
「ほら。ソラも触れてみて」
「いいの?」
恐る恐るソラが手を伸ばしてみると、オーブは逃げることなく触れさせてくれた。
ほんのりと温かく、優しい感情が流れ込んでくるようだ。
「フウちゃんもソラのことが気に入ったみたい」
「そ、そうなんだ」
イマイチよく分からんと思いつつソラがオーブを撫でてみると、光の玉はゴロゴロと左右に転がってみせた。まるで小さな犬ころを相手にしている気分である。
そらからしばらくの間、ソラはルルと一緒に精霊と戯れていたが、おもむろにフッとオーブが離れていった。どうやらどこかへ行ってしまうようだ。まさしく気まぐれな風のように。
「またね。フウちゃん」
ルルが手を振るとオーブはまた点滅してみせ、それからあっというまに宙を飛んで森の奥深くへと姿を消したのだった。
「……寂しくない?」
ソラはオーブを見送るルルの横顔を眺めながら尋ねるが、エルフの少女は首を横に振った。
「寂しくないよ。またすぐに会えるし。それに、いつかフウちゃんと契約したらずっと一緒にいられるから。そうしたらエルメラ様みたいになるんだ」
そう言ってルルが楽しそうな顔を向けてきたので、ソラも笑みを浮かべながら見返していると、
「――なんとも嬉しいことを言ってくれるじゃないか。お姉さんは感激だぞ」
横合いから突然声が聞こえてきて、月明かりの下にエルメラが歩み出てきたのだ。
「エルメラさん?」
「あ、エルメラ様だー!」
薄い布を一枚だけ着込んだエルメラが素足のままで橋の上を歩いてくるのを見てソラは思わずドキリとする。月光を浴びて長いエメラルドグリーンの髪をきらきらと煌かせながら近寄ってくる様は、まるで森の女神のごとき美しさだった。
「ふふふ。それにしても、見目麗しい少女たちが月明かりの下で並んで語り合っている姿は目の保養になるな。頑張って起きた甲斐があったよ」
こちらを眺めながらだらしない表情をするエルメラを見て、動揺していたソラはすみやかに平静さを取り戻す。外見はともかく中身はやはりアレなのだ。
「ルル。私を将来の目標に設定するとはなかなか見所があるが、そろそろ寝ないと私みたいな超絶美人で最強のエルフにはなれないぞ」
「はーい! それじゃあね、ソラ!」
「おやすみ、ルル」
ルルは素直に返事をすると、ソラに向かって元気よく手を振りながら反対側の家へと帰っていったのだった。
「でも、どうしたんですか? こんな夜中に」
「さっき誰かが階段を上がる気配を感じたものでね。様子を見にきたんだ」
エルメラはソラの隣に腰を下ろすとエルフの少女が去った方向に目を向ける。
「ルルも大きくなったものだよ」
「可愛い子ですよね。人間だと初等学校に上がるくらいの年だと思いますけど」
「ん? ルルはたしか今年で十三になるはずだぞ。私が旅に出る三年ほど前に生まれていたからな」
「ええっ!?」
ソラは驚きの声を上げる。
エルフの年齢が見た目では判断しにくいとはいえてっきり年下だと思い込んでいたのだ。それが自分と同い年だったとは。
ただ、よく考えてみれば、エルメラが彼女のことを知っているというならば、少なくとも十年以上生きていないとおかしいのだが。
「そういえば、ルルは風の精霊と契約を結ぶって言ってましたけど、エルフは誰もが精霊を扱えるんですか?」
「エルフはこれと決めた精霊と契約を結んでこそ一人前と認められるんだ。ルルの場合はまだ単なる友達感覚なのだろうが、今はそれでいいさ」
「でも、精霊が光の玉みたいにふわふわ浮いているとは思いませんでした」
「あれはまだカタチを得る前の純粋な意志の塊、生物で言うところの魂のようなものだ。そして、我々エルフが契約によって彼らにカタチを与えるんだ。私のスズリのようにね」
エルフの扱う精霊術とは自然から生まれた意志と信頼関係を築いた上で対等な契約を結ぶことで、契約とはエルフが己の魔力を分け与えることで精霊に肉体を授け、代わりに精霊は主が死ぬまで寄り添い続けることなのだ。
「精霊がどのようなカタチになるかは個人で違ってくるし、能力や強度においても、精霊の属性だけでなく術者の魔力や力量などで変化するんだ」
ソラはスズリしか契約済みの精霊を見たことがないが、おそらくあの白い虎はかなり強力な精霊なのだと思う。なぜなら主であるエルメラ自身が桁外れの魔力を秘める上に、『アルフヘイム最強の精霊使い』と呼ばれるほどの術者だからだ。
「長老やアルマさんも当然精霊使いなわけですよね。やっぱりエルメラさん並みの術者なんですか?」
「まあ、ジジイは長く生きているだけあって経験豊富だし、兄者もまずまずの術者だが、二人とも私には及ばないさ。ただ……」
自らを最強のエルフと名乗るエルメラはなぜか一瞬複雑な表情をしてセリフを切り、しばらく間を置いてから口を開いた。
「ソラ君。長老が契約を結んでいるのが聖樹に宿っている精霊だと知ってるかい?」
「え? いえ、初耳ですけど……」
唐突に話が変わったのでソラはやや戸惑いながら答えるが、隣のエルメラが真剣な表情をしていたので口を挟まずに続きを待つ。
「アルフヘイムの里の長は代々聖樹の精霊と契約を結んでこの地を守護することが役目なんだ。そして、長は里で最も高い魔力を持つ者が継ぐと決められているんだよ」
「それって……」
予感を覚えたソラが尋ねると、エルメラは遠い目をしながら頷いた。
「そうだ。次の長老は私が最有力で、ずっと昔から期待されてるんだ。けど、私は一生里に縛られるのは嫌だと里を出ることにしたんだ。それで兄者と喧嘩になってね。いや、衝突するのはしょっちゅうなんだけど」
思いがけない理由を聞いてソラは驚いた。てっきりこの前語っていたことが全てだと思っていたのだ。
「でも、エルメラさんはちゃんと帰ってきたんですよね。故郷が苦しい時に。そのことはたぶんアルマさんや里の人たちも認めてくれていると思いますよ。ルルみたいに慕ってくれている子もいるじゃないですか」
「……かなり迷ったけど、流石に今回の騒動が気になったんだ。ただ、私もワガママを通している以上、すんなり里に迎え入れられるとは思えなかったし、それなりに覚悟がいったよ。不謹慎かもしれないが、ソラ君が同行してくれて助かったんだ」
照れ隠しのように月を見上げるエルメラ。ソラの何倍も生きていても彼女にはどこか子供っぽいところがあるのだ。
「じゃあ、もしかして長老を継ぐ決心ができたんですか?」
「それとこれとは話が別だよ。だいたい私にそんな堅苦しい役目が似合うと思うかい? そんなのは生真面目な兄者がやればいいんだ。そう言ったら目を吊り上げて怒ってたけど」
エルメラは嫌そうな顔で即座に否定した。どうやらそこは譲れないらしい。
ただ、アルマの心情も何となく理解できる気がするのだ。
己よりも優秀な妹が放棄した役目を次善の策で担うというのは、プライドの高そうな彼からすれば複雑な気持ちにさせられるのだと思う。
それぞれの兄妹に事情があるなあとソラがしみじみ考えていると、エルメラが髪をかき上げながら苦笑した。
「やれやれ。本当は落ちこんでいるソラ君をなぐさめに来たんだが、私の身の上話になってしまったな」
「でも結構気が楽になりましたよ」
強がりなどではなくソラは張り詰めていた気分がほぐれていることを実感していた。
おそらく里を流れる清浄な空気や純真なルルとの会話が知らず知らずのうちにリラックスさせたようで、エルメラの事情を聞いたことも理由のひとつとしてあるのかもしれなかった。人の悩みを聞くと冷静かつ客観的になれるものだ。
「……エルメラさん。さっきまで勝手にひとりで思い詰めてたんですけど、私も里の人たちに任せていないで自分でも色々動いてみようと思うんです」
ソラがそう言うと、エルメラはかすかに目を見開いてから優しい笑みを浮かべた。
「そうか、少しは元気が出たみたいだね。何をするつもりなのかは知らないが私も手伝わせてもらおう。マリナも首を長くして待ってるだろうし、アイラ君とも約束したからね」
満足気に立ち上がるエルメラ。
「ならば、そろそろ寝床に戻ろうか。何をするにしても寝不足では話にならないからね」
「はい」
ソラも立ち上がって長老の家に戻り始めたエルメラの背中に続いたのだった。
※※※
翌朝。透明な日差しが部屋に入り込み始めた頃。
泥のように眠り込んでいたソラは何か変な感触を覚えて意識を覚醒させていった。
(……ん~?)
開ききらない目をこすりながら上半身を起こそうとしたが身体がやたらと重くて動かせない。
「……何なの?」
もしかしてこれが噂の金縛りか、とソラはぼんやりとした頭で考えたが、こんな朝っぱらからというのもおかしな話だと思った。
だが、意識がはっきりするにつれ違和感が高まっていき、やがて長い縄のようなものが身体に巻きついていることに気づいたのだ。
ソラが毛布を下げてふと視線を落とすと、胸元を誰かの腕ががっちりとホールドしているのが見えた。どうも何者かが背後から抱きかかえるようにして横たわっているようだ。
「――って、何!? というか、誰!?」
仰天したソラは一気に眠気が覚め、四苦八苦しながら顔を背後にめぐらせてみると、
「エ、エルメラさん!?」
そこには驚くほど近くに美貌のエルフの寝顔があったのだ。
長いまつげに縁取られた瞳は閉じられていて、背中に当たる豊満な胸が規則正しく上下に揺れている。しっとりと毛布を覆ったエメラルド色の髪が朝日を受けて輝いており、かすかに開いている艶やかな唇からは色っぽい寝息が聞こえていた。
それを見て、ソラは一瞬忘我の心持ちになったが、すぐに気を取り直して起き上がろうとする。同性とはいえ何かいけない気分になりそうだ。
とにかくこの場から早急に脱出するべしとソラは慌てて抜け出そうとしたが、思った以上にエルメラの腕の力が強くなかなか外すことができない。
(こ、この人、私を抱き枕か何かと勘違いしてるんじゃ)
柔らかな感触に気を取られつつ奮闘していると、騒がしい動きに気づいたのかエルメラの呼吸のリズムが変わった。どうやら覚醒しつつあるようだ。
「……んあ、何だ? やけに騒々しいな……おや?」
「ひいっ!?」
寝ぼけたエルメラに胸をまさぐられてソラは短い悲鳴を上げる。
逃げ出そうと必死に身体を動かすが、ますます密着されてどうにもならない。
「おお……これは……よく分からないが、幸せな感触だ……」
「ひ、ひああああああ!?」
エルメラの白い手が妖しく動くたびにソラの甲高い悲鳴が部屋に響く。
「ちょ! ちょっと! エルメラさんっ!」
何で朝からこんな目に遭わなきゃならんのか、となかば涙目になりながらソラが大声で呼びかけると、ようやくエルメラは瞼を開いた。
「ふわ~~~! よく寝た~! ――と、ソラ君? どうして君が私の部屋に?」
全く状況が掴めていないらしく、寝起きのきょとんとした表情で問いかけてくるエルメラ。
その呑気な質問に答える気力もなくソラがぐったりと上半身を起こすと、つられてエルメラも上半身を起こした。
「むうっ。もしかして寂しくて私のベッドに潜り込んできたのか? フフフ、まったく困った子猫ちゃんだ。私は別に構わないけどなっ」
勝手に勘違いしてうんうんと頷いていたが、その間もソラの胸元にある手はしっかりと固定されていて、ここでエルメラはその事実にようやく気づいたようだった。
「ん? ちょうど手にすっぽりとはまる心地よい感触がするとは思っていたが……。いやー、すまん、すまん! 寝ぼけてたんだ! 許してくれ!」
謝るどころか能天気に笑うエルメラを見て、ソラはブチッと頭の中で何かが切れる音を聞いた。
「こ、こ……」
「こ?」
ソラが不明瞭に呟き始め、エルメラが不思議そうに首を傾げた瞬間、
「――この、セクハラエルフーーーーー!!」
「ぐはあっ!?」
ソラの素晴らしく腰の入った、ついでに魔力のこもった強烈な右ストレートがエルメラの鼻っ柱へと豪快に突き刺さり、物凄い勢いでベッドの上から吹き飛んでいったかと思うと、セクハラエルフはそのまま窓をブチ破って二階から外に落下していったのだった。