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空色の魔法使い  作者: 乃口一寸
二章 魔法使いと幽霊屋敷
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第2話

 翌日、ソラたちは午前中から冒険者協会へと赴いていた。

 宿を出る際、昨日見かけた少年とロビーで再び鉢合わせたのだが、マリナが挨拶するやいなや気が遠くなったようにふらつき、側にいた執事らしき老人に「しっかりなさいませ」と頬をばちばちと叩かれ、ソラたちはいったい何事かと心配したくらいであとは特に何の問題もなく協会へと辿り着いた。

 ソラは建物を見上げる。大きな街の協会だけあってなかなか立派な建物である。観光客で賑わっているとはいえ、所詮は田舎町に過ぎないホスリングの小さな協会とは比べものにならなかった。

 入り口へ視線を向けると、ひと目で冒険者と分かる者たちがひっきりなしに出入りしている姿が見える。

 朝一番に新たな依頼の追加や情報の更新などが行われるので大抵の人間は午前中に通うのだ。

 ソラたちもさっそく建物へ入る。協会の一階部分は主に冒険者用の窓口と依頼の紙が貼ってある掲示板が設置されている。このへんはほかの協会と同じような造りだ。

 辺りを見回すとあちこちで多種多様の格好をした冒険者たちが立ち話をしたり掲示板をチェックしている。やはり、ほとんどが若い男性でソラたちのような女の子の姿は見当たらない。

 すると、ソラの隣でもの珍しそうに眺めていたマリナが声を張り上げる。


「――おおっ!! ここに来ると冒険者してるって気分になるよね! ――あっ! お姉ちゃん。一番右端の窓口が空いてるよ!」


 なにやらテンションが上がっているマリナはソラたちを呼びながら一足先に窓口へ向かう。

 ただでさえ目立っているので、更に注目を集めるような真似はやめて欲しいと思いつつソラは妹の後に続く。

 すれ違った若い男性冒険者が背中にゴツイ剣を背負ったマリナを呆然と見送っていた。

 妹を追って右端の窓口に辿り着くと、席に座っていた妙齢のお姉さんがにっこりと笑顔を浮かべてソラたちに話しかけてきた。


「ようこそ、冒険者協会へ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


「依頼の達成の報告と、報酬の受け取りに来ました」


 ソラたち三人はそれぞれの冒険者パスポートをカウンターに置いた。

 今日は数日前に達成したホスリング近郊にあるダンジョンでの遺品回収の依頼報告をするために協会へと足を運んだのである。

 冒険者パスポートとは冒険者資格を持つ者に与えられる一種の身分証明書だ。証明書といっても前世の渡航用のパスポートに似ていて小さな手帳のようなものなのだが。

 冒険者になるための資格条件は満十二歳以上であることと協会主催の筆記と実技試験をクリアすることである。

 ソラは去年十二の誕生日を迎えてからすぐに資格を取得した。資格試験は基本的に一年中行っており、申請すれば数日以内に受けることができるのだ。ちなみにアイラもソラと同時に試験を受けている。

 マリナも今年になってソラをはじめとした家族のあずかり知らぬところで密かに資格を取得していた。そういう妹なのだった。


「では、お預かりしますね。少々お待ちください」


 受付のお姉さんが三人のパスポートを受け取り背後にある大きな棚へと向かった。依頼の詳細や経過が記された書類を取りに行ったのだろう。

 冒険者協会は世界規模の組織であり優れた情報網を持っているので、国境を越えた場合でもよほどの遠距離でもない限りは依頼の情報を共有しているのである。いちいち依頼を受けた協会へ行かなくてもよいのでたいへん便利であった。

 協会の主な業務は先にも述べた資格試験の実施に加えて、パスポートの発行と更新、持ち込まれる依頼の仲介、採集物の買取など冒険者の各種サポートを行っていて、他にも冒険者用の雑貨や装備などを安く提供している。

 しばらくソラたちが待っていると、驚いた表情をした受付のお姉さんがクリップでとめられた数枚の書類をめくりながら戻ってきた。


「――あら。これって、ここでも話題になった案件だわ。単なる行方不明事件だっただけじゃなく妖魔まで出現したっていう……」


 お姉さんの驚愕の声を聞きつつソラはこの前の事件を思い出した。

 あの事件は当初予想していたよりもずっと大事になったのだ。まさか、強力な妖魔と戦うはめになるとは露ほども思っておらず、町がひとつ壊滅する寸前だったのである。


「女の子ばかりのチームが解決したとは聞いていたけど、あなたたちがそうだったなんて……」


 まじまじとソラたちを見つめるお姉さん。

 ただ、お姉さんはソラたちがエレミアの名門・エーデルベルグ家の人間だとは気づかなかったようだった。 

 もっとも、ソラからすれば国内だけではなく国外にも名が知れ渡っていたらたまったものではないが。


「信じられないわ。こんな可愛らしい女の子たちが……。ホント、家に持って帰りたいくらいなのに……」


 お姉さんの話が脱線してきた。

 注がれる熱い眼差しにソラが若干居心地を悪くしていると、背後にいたアイラが咳をした。


「――うほんっ」


 そのわざとらしい咳にお姉さんがはっと正気に戻る。


「ご、ごめんなさいね。……えっと、まずは冒険者パスポートに依頼達成の印を押しますね」


 お姉さんは慌ててソラたちのパスポートをめくり、依頼の達成を証明するための印鑑をぽんぽんと押していった。

 冒険者パスポートは最初のページに氏名、性別、年齢、住所や本人の特徴など持ち主の情報が事細かに記載されている。

 そして、次のページから受けた依頼の内容を書き込む欄が縦に並んでいて、依頼を達成したらその横に証明印を押してもらえるのである。

 ソラとアイラは去年から活動しているので記載欄がいくつかの依頼で埋まっていたが、マリナはこれが最初の仕事でありパスポートには一件しか記載されていなかった。まさに文字通りの初心者なのだ。

 マリナは自分のパスポートに初めて依頼達成の印が押されるのを見て嬉しそうにしていた。ソラもそうだったので気持ちは分かるのだった。


「では、次に報酬をお渡ししますね。これには特別報酬も含まれています」


 ソラはお姉さんが差し出した袋を受け取る。比較的難易度の高かった依頼に加えて協会の調査でも解明されなかった事件を解決したこともあって結構な重みがあった。


「最後に、今回の依頼の達成によりお三方のランクが上昇します」


 ソラとアイラには星三つが、マリナには星二つが与えられた。

 ランクとは依頼の達成数や活躍の度合いなどで冒険者につけられる階級のことであり、ランクが上がるにつれて星が増えていくのである。

 ランクは十段階あり、ランクには含まれない星ゼロの初心者ビギナーからはじまり最高位は星が十個与えられるのである。

 もっとも、『十星ディカプル』の冒険者など世界にも数えるほどしか存在しないが。


「資格を取得してから一年程度で『三ツ星(トリプル)』を獲得する人なんてそうそういませんよ? それに……」


 お姉さんはマリナに視線を向ける。


「たった一件の依頼達成でいきなり『二ツ星(ダブル)』が与えられた冒険者なんて聞いたことがありません。妖魔を倒すなんて快挙を成し遂げたのだから当然なのかもしれませんが……」


「えへへ。どうもどうも」


 初心者(ビギナ-)から一気に『二ツ星(ダブル)』へと昇進したマリナは頭の後ろに手をやって照れたように笑った。

 目を見開いてマリナを見つめていたお姉さんは何かを思い出したように口を開く。


「……そういえば、過去にもひとりだけいたような……? あれは、確か伝説の『風――」


「――なあなあ、姉ちゃん。いいだろ? 仕事が終わったら俺とメシでも食いに行こうぜ」


 突然、隣の窓口からおもいっきり口説いている声が聞こえてきたのだった。

 ソラたちは一斉に隣へ顔を向ける。

 そこには口説かれて困っている色っぽい受付の女性と中年の男性冒険者が向かい合っていた。


「ブライアンさん……。困りますよ、業務中に」


「じゃあ、業務中じゃなかったらいいのか? それなら決まりだな。いい店を知ってるんだよ。大人の男女にふさわしい店が」


 ブライアンと呼ばれたオッサンはしつこく受付の女性を口説いている。

 ただ、その女性も眉をひそめてはいるものの満更でもなさそうに見えるが。

 ソラが観察するにブライアンの歳は四十前後のようであった。ダークブラウンの髪と瞳にわりと顔立ちも悪くなかった。若い頃はそれなりにハンサムだったに違いない。だが、髪はかろうじて整えられているものの無精ひげがあちこちに生えており、どこか疲れた中年オヤジのごとき雰囲気を纏っているので、最終的にはそこら辺にいるオッサンという評価に落ち着くのだった。


(とはいえ……)


 ブライアンはひと目で使い込まれていると分かる鎧と剣を装備していた。軽薄な態度と口調ではあるが身のこなしにも隙がない。まさに熟練の冒険者という印象をソラは受けた。ただのオッサンではないのかもしれない。

 ソラが諦めの悪いオッサンを見ていると、ようやく当人が視線に気づいたらしかった。


「――お?」


 ブライアンがソラたちの方を向く。

 そして、まさにオッサンらしい無遠慮さでジロジロとソラたちを眺める。


「ほう、ほう。これは……」


 なにやらひとりで納得したように頷いている。

 ムッとした表情でソラたちの前へ出ようとするアイラ。

 しかし、ブライアンは絶妙なタイミングでアイラの行動を制した。


「ああ、悪い悪い。嬢ちゃんたちがあまりにも美形だったもんでな。気を悪くしたんだったら謝るよ」


 足を踏み出しかけていたアイラはタイミングを外されて停止を余儀なくされる。

 その隙にブライアンは案外人懐こい笑顔で話しかけてきた。


「嬢ちゃんたち三人でチ-ムを組んでるのか? 大したもんだな。――ああ、俺の名前はブライアン。単独ソロで活動している冒険者だ。よろしくな」


 オッサンが自己紹介してきたので、流れでソラたちもそれぞれ名乗る。

 ブライアンはそれを聞きながらふむふむと頷く。


「俺はここネイブル王国を中心に活動してるんだ。嬢ちゃんたちがしばらくここらで仕事をするんならいろいろと教えてやってもいいぜ。伊達に長いこと冒険者をしてないし、何かの力になれるかもしれないからな」


 そう言ってにやりと笑うブライアン。なんとも胡散臭い笑顔であった。

 怪しげなオッサンに関わりたくなかったソラはにっこりと笑い、


「いえ、結構です。お気持ちは嬉しいんですけど、大先輩の手をわずらわせるのも忍びないですし」


 あっさりとその申し出を断ると、当てが外れたというようにブライアンはかくっと首を落とした。


「……あ、あら? もしかして、俺警戒されてんのか? おかしいな。俺は子供にはわりと好かれる方なんだけどなあ」


 ブライアンはまいったなという風に頭をぼりぼりとかく。

 並みの子供ならともかくソラの中身は三十年近く生きているのだ。知らないオッサンを全面的に信用するほど無邪気ではないのである。

 すると、その様子を見ていた受付のお姉さん二人がジトッした目つきでオッサンを睨んでいた。


「……ブライアンさん。今まで私のことを口説いておいて今度はその子たちですか? 節操がなさすぎです」


「そんな年端もいかないような子たちまで……。見損ないましたよ、ブライアンさん。場合によっては警備隊に通報します。可愛い女の子たちが中年の毒牙にかかるのを黙って見てはいられませんから」


 凍えるような声で言うお姉さんたち。

 慌てるブライアン。


「ち、違うって!? 俺はただ親切心からそう言っただけなんだよ! 勘違いするなよっ!!」


 泡を食ったブライアンが焦って弁明するが、二人の疑惑は簡単に解けそうもなく、オッサンに害虫でも見るような視線を向けている。

 どうやら長くなりそうなので、彼らのことは放っておいてソラたちは新しく請け負う仕事を探しにいくことにした。

 ソラたちは背後で必死に弁解しているブライアンの声を聞きながら壁際に設置されている掲示板の前まで歩く。

 掲示板は横長で黒板のような形をしており、右端から貼られた日時の古い順に依頼書が貼られている。

 依頼書には依頼の詳細に加えて報酬金額や難易度などが記載されていて、冒険者たちはその内容を吟味したうえでこれと決めた依頼書のナンバーを窓口にいる受付に伝えるのだ。

 マリナが横にずらーっと何十枚も貼られた依頼書を眺めながら訊いてくる。


「うわあ。一杯あるね~。どれにしよっか、お姉ちゃん」


「そうだね……。この前の仕事が思った以上に大変だったから今度のは軽めにしようかな」


 ソラもバリエーション豊かな依頼書を一枚一枚確認しながら答えた。

 冒険者は怪我など特別な理由でもない限りは年に決められたノルマを達成しないと資格が剥奪されてしまうので、ソラたちもこの街でひとつくらいは依頼をこなしておこうと事前に決めておいたのだ。

 ソラは隣で同じく掲示板を見上げているアイラへと尋ねる。


「アイラはどう?」


「……私としてはお嬢様たちに極力危険が及ばないような依頼がいいですね。……これなどどうでしょうか?」


 アイラが一枚の依頼書を指し示した。

 どれどれとソラとマリナがその比較的新しい依頼書の中身を確認する。

 するとそこには、『今度家族と旅行に出かけるので、ウチで飼っているワンちゃんのお世話をお願いします!』と可愛らしい文体で書かれていたのだった。

 思わず脱力するソラたち。


(……これは、いくらなんでもない……)


 大昔はともかく現在の冒険者たちは便利屋のごとき存在なのでこのような依頼もたまにあるのだ。

 だが、世界中を旅するためにソラは冒険者になったのだ。何が悲しくて犬の世話を引き受けねばならないのか。


「でも、報酬は意外と悪くないよ。どこかの貴族か大金持ちの子女が出した依頼っぽいね」


 マリナが依頼書の詳細を見ながらそう報告してきた。

 別にそれは冒険者でなくてもいいだろうとソラは思う。それこそ使用人にでもさせればいい話である。

 ソラが即座に却下すると、アイラがやや残念そうな表情をした。

 何か手頃な依頼はないものかとソラが古い依頼書の方へと移動していると、


「……ん?」


 一番右端にぽつんと貼ってある、やたらと年季の入った一枚の依頼書を発見したのであった。 

 ソラは好奇心も手伝ってその依頼を見てみることにした。

 その依頼書はずいぶん前から貼ってあるようでもはや紙の色が変質していた。この分だとそれこそ数年前から貼られていそうだ。

 ソラは依頼の内容を読んでみる。

 それは要約するとこういうことであった。

 この町の南方にある森の中に今はアンデッドが徘徊する廃墟となった屋敷があり、そこには数年前に亡くなった屋敷の主が隠した多額の財産が眠っている。その財産を探し出して回収してほしい――


(なるほど。これが、昨日土産物屋のおばちゃんが言ってたやつか……)


 ソラはおばちゃんとの会話を思い出す。一時は観光ツアーまで組まれていたとかいうやつだ。

 だが、何故こんなに長い間依頼が達成されていないのか気にかかる。

 ソラは詳細を確認する。

 依頼元はネイブル王国となっていた。国直々の依頼にソラは少々驚く。

 報酬は見つけた財産の半分とある。総額がいくらになるのか分からないのであまりぴんとこなかったが。

 そして、難易度は――


「星七つ!?」


 思わず素っ頓狂な声をあげるソラ。

 依頼の難易度は協会が慎重に審査したうえで決定される。冒険者ランクと同じで十段階まであり星が増えるほど難易度が高い。

 この依頼の星七つというのはそれこそ複数の魔獣を退治するのと同じレベルである。相当な実力を持つチームか百戦錬磨の傭兵団あたりが請け負うような仕事だ。


「なになに? どうしたの?」


 ソラの声を聞きつけたらしくマリナとアイラが近寄ってきた。


「……へえ。なんか面白そうだね」


「しかし、廃墟の探索程度でこの難易度。何かきなくささを感じます」


 マリナは目をキラキラとさせるが、対照的に警戒心が滲んでいる様子のアイラ。

 ソラ的にはマリナ同様面白そうだと感じたのだがアイラの気持ちも分からなくもない。

 こんなことなら土産物のおばちゃんからもっと詳しいことを聞き出せばよかったとソラが後悔していると、


「――その依頼に興味があんのか? さすが、お目が高いねえ」


 聞き覚えのある声がソラたちの背後から聞こえてきたのだった。

 ソラたちが振り向くと、そこには案の定ブライアンのオッサンが立っていた。


「何か用か? お嬢様たちにちょっかいをかけようというなら……」


 すぐにアイラがソラたちをかばうように前へ出て、戦闘体勢一歩手前のごとき剣呑さでブライアンを威嚇する。

 ブライアンは慌てて両手を前へ出した。


「だから、違うって言ってんだろ!? 俺はただ可愛い後輩たちの力になれればと思っただけだ! あと、俺はむっちりとした大人の女が好みなんだ!」


 別に言わなくてもいいことまで口走るブライアン。

 ソラはその台詞を額面どおりには受け取らなかったが、


「……ブライアンさんって言いましたよね。この依頼のことを詳しく知っているんですか?」


 脈ありと見たのかブライアンはにやりと笑った。


「ああ。その依頼の件についてはこの辺りの人間なら知らないやつはまずいないだろうよ。ちと厄介な事情があってな……」


「じゃあ、あなたから話を聞く必要はないということですね。受付のお姉さんにでも訊こうかな」


 ソラが一秒で切って捨てるとブライアンは情けない顔になった。


「お嬢ちゃん……。可愛い顔してるわりにはなかなか容赦がないのな」


「あなたが何らかの意図を持って私たちに近づいてきたのは見れば分かります。そんな人間と馴れ合うつもりはないですよ」


 ソラの台詞を聞いてわずかに目を見開くブライアン。

 それから、両手を挙げて降参のポ-ズをとった。


「まいった、まいった。俺の負けだ、嬢ちゃん。確かに俺はある事情から嬢ちゃんたちに声をかけたんだ。……にしても――」


 ブライアンがこれまでとは違う不敵な笑みを見せながら言った。


「――さすがに二年前の事件と先の妖魔騒動を解決しただけのことはあるな?」


 その言葉を聞き今度はソラたちが目を見開いた。

 一気に警戒度がはね上がったらしいアイラが鋭い目つきでブライアンを睨みつける。

 しかし、すぐに普段のくたびれた中年オヤジに戻るブライアン。


「ああ、勘違いしないでくれ。俺は別に嬢ちゃんたちに含むところはないんだ。むしろ、協力し合えたらと思ってるくらいなんだよ」


 その台詞にソラたちは顔を見合わせた。

 ブライアンは例の依頼書を指差しながら、


「俺の事情ってのは無論その廃墟の探索についてだ。……どうだ? 少しでも興味があるなら俺の話を聞いてみないか? そこらの冒険者や受付の姉ちゃんが知らない情報も持ってるぜ?」


 ソラはじっとブライアンの目を見つめてからマリナとアイラの方を向いた。

 二人はソラの判断に任せるという風に見ている。

 このような怪しげなオッサンに関わるべきないと分かっているのだが、興味が出てきたのだから仕方がない。


「……分かりました。とりあえず話だけでも聞かせてください」


 ソラはブライアンに向き直り、こくりと頷いて承諾の意を示したのだった。

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