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空色の魔法使い  作者: 乃口一寸
幕間 魔法使いの日常編
29/132

登校初日②

話が少し長引いてしまったので、途中で区切らせていただきました。

 エルシオン魔導学校。

 エレミア国首都エルシオンにある、魔導士を育成するための教育機関である。

 三百年近く前にエレミアを建国し、魔導都市エルシオンをつくった魔導士たちがはじめに取り組んだことのひとつに、魔導学校の創設がある。

 当時はまだ軽視されていた魔導と魔導技術だが、エレミアの魔導士たちはどこの国よりも早く、その有用性と可能性とに気づき、組織的に次世代を担う魔導士の育成に着手した。その中心的役割を期待されてつくられたのがエルシオン魔導学校である。

 なので、エルシオン魔導学校とは長い歴史をもった由緒ある学校であり、その分の膨大なノウハウを蓄積しており、効率的な授業システムを洗練化させてきたこともあって、国外から多くの子供たちが留学を希望しているほどであった。

 また、魔導士の育成を最重要の国策として位置づけているエレミアでは、魔導学校に多くの予算を割いているので、奨学金制度や補助金制度が充実していて、経済的に就学が困難な子供をサポートできる仕組みも整えられているのだ。

 在学期間は最大で八年間。数えで八歳の頃に入学し、十五で卒業となる。『最大』という表現を使ったのは、この学校は飛び級が可能だからである。もっとも、ごく一部の成績が優秀な生徒に限られ、最低でも五年間は学校に在籍しなければならないのだが。

 一般の学校では五年間通う初級学校と三年間の上級学校とがあり、魔導学校でも形は同じである。普通の学校と異なるのは、進学がエスカレーター式になっていて、校舎が隣り合っているところである。これも、極力無駄を省き、一貫性をもたせた教育を行うためであった。


 ※※※


 ソラは三時限目の算数の授業を受けているところだった。

 一応、ほかの生徒同様、黒板の内容をノートにとっていたものの、どちらかといえば暇つぶしのために行っているようなものである。

 前世で高校にまで進学していたソラからすれば、今更な勉強内容なのだから。

 三人掛けの長机の真ん中に腰掛けているソラの両隣には、いち早く打ち解けたマーガレットとノエルが座っていた。二人とも真面目にレヴィンの講義を聞いている。

 ソラが在籍する一年一組の担任であるレヴィンが一時限目から授業を行っている。効率化と質の高い教育制度を謳っている学校なので、てっきり教科ごとに専門の教師がいるのかと思っていたが、そうでもないようだった。まだ、初級学校だからかもしれないが。

 ソラはふと両脇の二人の様子を見てみた。

 マーガレットは大きな目をくりくりと動かして、楽しそうに黒板を眺めている。ノートは黒板の内容を全て写すのではなく、自分にとって必要な部分だけをアレンジして書き込んでいるようだ。

 ノエルは真剣な表情で黒板を見ていて、時折、ちょこちょこと必死に筆を走らせていた。レヴィンが板書した内容を一言一句漏らさずに書き込んでおり、レヴィンが「ここは大事なところですよ~」と言っている箇所には、ノートにも『ココ大事!』と赤ペンで目立つように書き入れていた。

 二人の性格を如実に表しているかのような光景だった。

 ここで、ソラはそっと窓の外の景色を眺めた。はっきり言って退屈なのである。新一年生の授業は昼までなので、午前中の四時限ある授業のうち半分以上は消化したことになるのだが。

 それに、魔導学校とはいえ、魔導に関する授業はまだ先のようであった。一年生は一般の初級学校と大差ない授業内容なのだ。

 これから毎日、このような暇をもてあますような授業を受け続けるのかと思うと、正直うんざりしないでもない。


(次は体育だから、おもいっきり身体を動かして憂さ晴らししよう)


 と、ソラが思っていると、


「じゃあ、この問題分かる人いますか~?」


 レヴィンの間延びした声が聞こえてきた。

 ソラが黒板に視線を戻すと、レヴィンがとある問題を指し棒で示していたが、教室内は静寂を保っていた。 

 もちろん、ソラからすればどうとでもない問題である。ただ、まだ授業が始まったばかりの現段階では、少々難易度が高く、応用力が必要となる問題なので、先ほどまで競うように手を挙げていた生徒たちも沈黙したままだった。


「あれ? 誰かいませんか~?」


 レヴィンはにこやかな笑みを浮かべながら、生徒たちを見回していた。さっと目を逸らす生徒たち。

 目を合わようとしない生徒たちを覗き込むように眺めるレヴィン。結構、意地の悪い教師なのかもしれない。

 ソラが隣を見てみると、マーガレットは黒板を普通に眺めているだけであった。答えは分かっているが、別に自分から手を挙げるつもりもないという態度に見えた。

 逆を見ると、ノエルが難しい顔をしてノートを凝視している。薄い桜色の唇を真一文字に引き締め、「むむむ……」と可愛く唸っていた。なにも、そこまで神経を集中させなくても、とソラが思うほどである。見ている分には癒されるのだが。

 ふと、ソラが窓際に視線を向けると、例によって緋色の髪の少年は、授業になど興味がないといった態度で外の景色を眺めていた。ほとんどノートもとっていないようだ。

 とはいえ、彼がたんなる不真面目な生徒だと断言することはできない。ただ、必要がないだけなのだろう。 

 二限目の授業で、レヴィンから不意打ちのような質問をされたときにも、ほんの数秒間問題の把握に費やした後、あっさりと解答を導き出していたのである。

 ほかの生徒たちが驚きの声をあげ、レヴィンも『ちぃっ!』とばかりに悔しそうにしていたのだ。やはり、この教師は意地が悪い。

 手を挙げようとしない教え子たちを見て、レヴィンは、仕方ありませんねえ、という顔をした。


「では、私が誰かを指名させてもらいましょうかね」


 レヴィンがそう見回しているそばからソラと目が合った。

 ソラはどうやら自分が指名されそうだと察し、腰を浮かせる準備をする。

 だが、そのとき。

 すっと、タイミングを見計らっていたかのように、最前列に座っていたひとりの女子生徒が優雅に手を挙げたのだった。

 色素の薄い金髪を背中に流したその少女はグレイシア・ローゼンハイムであった。

 レヴィンは教壇のすぐ目の前で手を挙げているグレイシアを見て、


「はい。では、ローゼンハイムさん」


 と、にこにこしながら少女の名を呼んだ。

 教室中の注目が集まる中、グレイシアは満を持してという感じで、ゆったりと立ち上がった。

 金髪とローブをなびかせながら黒板へと歩を進め、すらすらと滑らかに緑色の板へとチョ-クをすべらせる。

 教科書に載っていない複雑な数式を使用しており、生徒たちが怪訝な顔をしている。

 グレイシアは書き終えると、コトッとチョークを置いた。その何気ない仕種でさえ洗練されていた。

 横で見守っていたレヴィンがグレイシアの書いた解答を確認すると、なにやら驚いた顔をした。


「……ほうほう! 正解は正解なんですが、使われている数式は本来なら五年生で習うものなんですよ。いや~、やりますねえ」


 レヴィンの説明に、いまいち理解できていなかった生徒たちが、「おおっ!」と歓声を上げた。

 同級生たちの賞賛の声を当然のように浴びながら、グレイシアは髪を軽くはらい踵を返すと、教室の中段ほどに座っているソラをまっすぐに見つめた。

 グレイシアの水色の瞳が、まるでソラを挑発しているかのように強い光を帯びた。そして、唇の端がわずかに持ち上がる。

 『どうですか? あなたには負けませんわよ。ホホホ』という声でも聞こえてきそうな表情であった。

 ソラの隣で同じ光景を目撃したらしいマーガレットが、


「……なんなんですか、あれは。ことあるごとに、お姉さまに突っかかってきて」


 自分の席に戻りはじめたグレイシアをきつい目で見ながら憤慨していた。

 そう。グレイシアはなにかとソラに張り合ってくるのである。一時限目のときからそうだった。

 あのようなグレイシアの得意げな表情をソラはすでに何回も見ているのだ。


「自分は次席だったから、主席入学だったお姉さまをやっかんでいるのでしょう」


 なぜそんなことをマーガレットが知っているのかはともかく、あのプライドの高そうな少女なら、自分より上に立つ人間をそう簡単に認められないだろうとはソラも想像がつく。

 だから、自分の能力がソラに決して劣ってはいないのだということを、ソラ本人はもちろん、周囲にも示すような行動をとるのだろう。

 先ほどの問題にしても、難問とはいえ所詮一年生の問題である。それを、わざわざ遠回りするように難解な数式を用いている。もっと楽で効率的な解き方があるのにだ。

 やはり、上流階級特有の意地のぶつかり合いみたいなものがあるのかも、とソラは思った。特にソラとグレイシアの実家はエレミアを代表する名門なのだから。

 面倒な話ではあるが、ソラとしても実家の評判を下げたり、迷惑をかけるようなことは避けたいところだ。もう少し意識した方がいいのかもしれない。

 ただ、グレイシアのことを嫌いになれないという気持ちに変わりはないのだが。できれば、もっと話をしてみたいとも思う。

 ここでソラはさくっと気持ちを切り替えて、黒板の上に設置されている丸い時計を確認する。

 残り時間はあと五分。この授業ももうすぐ終わりだ。


(……そういえば、黒板はたいてい緑色なのに、なんで『黒』板って言うんだろうか?) 

 と、ソラがどうでもいいことを考えていると、


「本当に腹が立つ方ですね。いくら、ローゼンハイム家のご令嬢とはいえです。そう思いませんか? ノエルさん」


 憤懣ふんまんやるかたない様子のマーガレットがノエルに話を振っていた。

 しかし、当の本人は、


「――ああでもないし……こうでもないし……。う~ん、ムズイ……」


 と、グレイシアがとっくに解答した問題を難しい顔をしながら必死に解いていて、まったく聞いていなかったのであった。


 ※※※


 ソラたち女子生徒は体操着に着替えるために更衣室へと来ていた。これから本日最後の授業である体育があるのだ。


「ソラさんって、肌が綺麗ですね~」


「本当だ! うらやましいです」

 

「あはは。ありがとう」


 ソラは着替えながらも、周囲にいる同級生と普通に会話をしていた。

 休み時間などに、何人かの女子生徒が少しずつソラに話しかけてくれるようになっていたのだ。

 ノエルをかばった件が思ったよりも好印象であったらしいのに加えて、当初はエーデルベルグ家の令嬢ということで話しかけづらかったらしいが、マーガレットたちと自然に会話しているのを見て安心したらしい。

 はじめは寂しい学校生活を送ることになるのではないかと多少危惧していだが、これなら大丈夫そうである。まだ子供なので人間関係の垣根が低いというのもあるのだろうが。

 ソラは周囲の光景があまり視界に入らないように努めていた。幼い女の子たちの着替えを見たところでどうということはないが、妙に恥ずかしい気分になるし、何か申し訳なく思うのだ。


(う~ん、それにしても……)


 ソラはやや苦労しながら制服を脱ぎつつも、居心地の悪さを感じていた。

 この女の子専用の空間ならではの甘ったるい空気や匂いにはまだ慣れそうもない。

 更衣室では少しずつ打ち解けてきたらしい生徒たちがそこかしこでお喋りをしていた。女の子特有のかしましい声が聞こえてくる。

 ソラが袋に入れていた体操着を取り出していると、


「――ねえ、ところで気になる男子とかいた?」


「う~ん、どうかなあ。隣の席に座っている子はまあまあだったけど」


 と、近くにいた女の子たちが恋バナで盛り上がっていた。


(一年生でもう男のチェックとは……。まったく、近頃の女の子は)


 ソラは「フッ」とニヒルな笑みを浮かべながら、心中で肩をすくめる。

 小さくとも女の子。すでにそういった話に興味津々らしい。

 とはいえ、彼女たちの無邪気であけすけな恋バナ程度なら、ソラも余裕をもって聞き流せるというものだ。

 だが、これが屋敷のメイドたちの話となるとそうはいかない。

 十代半ばから二十代の女性が大半を占めるメイドたちの会話はなんというかエグいのだ。買い物中の主婦なみのシビアな視点でもって男たちを評価しており、会話の内容もとにかく生々しい。元男のソラとしては隣で聞いていて胸がズキズキと痛む出すほどである。

 今までそういう視点で見られていたのかと思うと戦慄を禁じえず、女性の恐ろしさを改めて実感したものだった。

 すると、女の子たちがソラに話を振ってきた。


「ソラさんはクラスで気になる男の子とかいませんか?」


「いないよ」


 ソラはノータイムできっぱりと答えた。そんなものがいてたまるか、という心境である。

 一瞬も迷わずに即答したソラに女の子たちは目をぱちくりとさせていたが、やがてひとりの女の子が何かに気づいたようなそぶりを見せた。


「……もしかして、ソラさんにはすでに婚約者がいらっしゃるとか? それなら納得です!」


 その言葉に、ほかの女の子たちも「なるほど!」とばかりに頷き、キラキラと瞳を輝かせながらソラのことを見つめてくるのだった。 

 ソラは、「あははは……」と乾いた笑いを浮かべた。

 それこそ冗談ではないという話である。実家がソラの嫌がることを強要することなどまずありえないが、万が一、婚約者などをあてがわれる羽目になったら、その瞬間にどこかへ旅立つことになるのは間違いない。


「期待に添えなくて申し訳ないけど、そんなものは存在しないから」


 ソラが女の子たちに言うと、彼女たちはあからさまにガッカリとした表情を浮かべた。


「そうなんですかあ。てっきりどこかの王子様とでも婚約されているのかと思ったんですけど」


「エーデルベルグ家ほどの名家ならありえそうだもんね」


 彼女たちのイメージではやはりそんなものなんだろうなあ、とソラは思った。

 ほかの家ではどうか知らないが、少なくともエーデルベルグ家は本人の意思が最優先されているようである。でなければ、母のマリアが田舎町出身のトーマスと結婚することなどありえないだろうし、祖母のウェンディにいたっては出自すら不明だったりするのだから。

 ここで女の子たちは、ソラの隣で着替えていたマーガレットへと対象を移した。


「マーガレットさんはどうですか?」


 脱いだ制服の上下を丁寧にたたんでいたマーガレットがちらりと女の子たちへと視線を向けて、


「気になる男なんているわけないです。むしろ、教室にいる男どもを叩き出したいという衝動を抑えるのに苦労しているくらいなんです」


 と、ある意味予想通りの答えを返したのだった。


「そ、そうなんですか?」


「……マーガレットさんは、なんていうか、少し変わっていますね」


 女の子たちは呆気にとられているようだった。

 これまで見たことのないタイプだったに違いない。ソラでもそうだったのだから。

 すると、ひとりの女の子がある男子生徒の名を挙げた。


「でも、やっぱり、一組でいちばんイケてるのは、アラン君ですよね」

 

「そうだね~。ダントツで彼だよね」


 ソラは「アラン?」と首を傾げた後に、ふっと思い出した。そういえば自己紹介のとき、ぶっきらぼうにその名を名乗っていた少年がいたのだ。あの緋色の髪の少年である。確かフルネームはアラン・フレイムハートだったと思う。


「ソラさんは、アラン君と知り合いではないんですか?」


「そんなことはないけど……どういうこと?」


 これまで一言も口を聞いたことすらないのだ。なぜ知り合いだと思ったのだろうかと、ソラは疑問を覚える。


「アラン君も、ソラさんと同じ<至高の五家>のひとつであるフレイムハート家のご子息ですから。知り合いなのかと」


 ソラは普通に驚いた。まさか、グレイシア以外にもいたとは。

 体操着をかぶったマーガレットが「ぷはっ」と頭を出して、ソラへと向き直った。


「お姉さまは、本当にそういうことに興味がないんですね。今年度の新入生は、<至高の五家>の子息が三人も入学するというので、かなり注目されていたんですよ。観覧席も例年にないくらい埋まっていたらしいですし」


「そうだったんだ……」


 なにもかもが初耳であった。家族も話題にあげることはしなかった。おそらく、ソラ同様興味がないのだろうと思われる。そういう家だから、ソラも無理なく馴染めたのだろうが。

 ソラはアランの退屈そうな横顔を思い出す。確かに女の子たちが騒ぎそうな端正な顔立ちであり、クールそうなところがまた受けるのだろう。しかも、名家の御曹司。モテて当然である。

 同級生たちが周囲で盛り上がっているのを横目に、ソラは体操着に着替え終わった。白の体操シャツに紺色のハーフパンツといった前世の体操着とあまり大差ない姿だった。

 隣を見るとマーガレットも着替え終わっていた。着替えの際に少し乱れたらしいポニーテールを整えている。周りでは、女の子たちが今度は好きな男子のタイプを言い合っていた。

 ホントに好きだねえとソラが苦笑していると、 


「――あなたたち。いつまでくだらない話をしているの?」


 と、背後から冷たい声が聞こえてきたのだった。

 皆が振り返ると、そこにはグレイシアが冷え冷えとした瞳をして、話に夢中になっていた女の子たちを眺めていた。例によって、数人の取り巻きが彼女の後ろに控えている。


「早く着替えたほうがいいのではなくて? でないと遅れてしまいますわよ」


 グレイシアの言葉に、女の子たちが慌てて着替えるスピードをあげる。

 最後にグレイシアは一瞬だけソラと目を合わせると、「ふん」と冷めた流し目をくれて、取り巻きたちと更衣室を出ていったのだった。

 その姿を見送った女の子たちが「ハア~」とため息を吐く。


「ローゼンハイムさんは少しおっかないですね」


「そうですね。ソラさんのように親しみやすい方のほうが珍しいのかもしれませんけど」


 その意見にはソラも同意するところである。中身は現代日本で育ったごく普通の一般人なのだから。

 ソラは準備を終えていたマーガレットと自分たちも運動場に行こうかと顔を見合わせたが、ふとノエルの姿がさっきから見えないことに気づいた。


「あれ? ノエルは?」


「そういえば、いませんね」


 二人して更衣室を見回すが、おかっぱ頭の少女の姿がない。

 すると、更衣室の扉が開いて、当の本人が上半身をのぞかせた。


「あ、ソラさん、メグさん。早く行きましょう。そろそろ時間ですよ」


 ノエルがソラたちに促してくる。どうやら、とっくに着替え終わって外に出ていたらしい。


「ノエル、着替えるの早いね」


 ソラが意外な気分になってノエルを見た。正直、そんなに素早いイメージがないのである。

 ノエルは照れたように笑った。


「ボク、着替える早さにはちょっと自信があるんですよ」


「あら。意外ですね」


 と、マーガレットも同じような印象を受けていたらしいが、本人の目の前で言うなよ……とソラは呆れる。

 しかし、ノエルは気にした様子もなく、


「体育、がんばりましょうね!」


 と、胸の前で両手の拳を握り、可愛くガッツポーズをとるのだった。

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