61
喉には最悪そうで、でもさっぱりと喉を降りていくサイダーを飲んで
コップに少し残ったサイダーの泡がとても綺麗に見えた。
今日は声があまり出そうにない。
メールで店長にメールをして、声が出ないので行かないと伝えた。
無断で休んだわけじゃないから、罰金はないだろう。
「今日出かけるから」
そうとぼけた顔で鈴は言う、そうと目だけで鈴に合図をした。
「後で、お前もう少し寝るか、のど飴かってこいよ。里奈も連れてくから」
いってらっしゃいと声を出さないまま喋った。
隣で、やばいよその声と里奈がくすくすと笑った。
私もかすれた声でくすっと笑った。この一瞬がとても愛しく思った。
化粧道具を持ってくる里奈に、私の化粧道具も貸した。
いいのと聞いてくる里奈にいいから使いなとうなずいて見せた。
笑った顔が痩せていくけれど可愛い子供のように里奈が見えた。
鈴は着替えてくると言って部屋に戻っていった。
服装はそこらへんに居る普通のジーンズにTシャツ。
2人は少し手をつないで玄関から消えて行った
黒いドアは何かを遮断するみたいに別世界になっていまう。
別世界に行く音はガチャリと閉まる音。
またソファーに埋もれてただ白い空間の空を見上げて、眠った。
冷たい合皮が肌に気持ちが良かった。
ガチャリとまたこちらの世界にやってくる音に目が覚めた。
ただいま~とのんきな2人の声がする。
左指にはシルバーの青みがかった指輪。
それをぼんやり見た。
2人のお揃い。
鈴が口を開いた。
「今日婚姻届出した。」
「2人ともおめでとう。」
正しいという事は分からない。
ただそれだけ言って、飲み忘れのサイダーを飲んだ、もう気の抜けた砂糖水。
お祝いだからと言って
私はコンビニに何か買ってくると話してうちを抜け出した。
ねえ、愛ってなんだろう。私はまだ子供で分からない。
恋から愛になるってどういう事なのかも私にはよく分からない。
愛ってどういう形の物が愛なのか私にはまだ分からない。
だから走ってコンビニに向かった。
もし里奈が先に死んだら、鈴はどう生きてくんだろう。
残されるってどういう事なんだろう。
恋ではないって里奈はどう思ったんだろう。
ただ走ってコンビニに向かい、お酒とジュースとケーキを買って
今度はゆっくりうちに向かった。
どの形もどの生き方も正しくはないのに、いつも私は正しいってことを求めてしまう。
昔必死に覚えた数学の方程式みたいに、必死に正しい形に当てはめようと思ってしまう。