58話
仕事が終わる時間には、数人の女の子。
送り迎えには最近お金が掛かるらしくずっと彼女達は不満を言ってた。
4千円くらいタクシーつかうよりマシでしょ、だったらこんな仕事しなきゃいいのに、そう思って少しだけ笑った。
時々お店の子と愛想で喋って、それでも彼女達と仲良くなることはないだろう。
彼女達のよく握っている携帯には最近私と他の子の悪口が入っていることだろう。
そういえばホスト絡みのネットのチャットやら何ならで、私の名前の中傷があるらしい。
だからどうしたのだろう、私は彼女達の好きな男は取っても居ない。
たまたま呼び止められて明るく笑ってお店のように話をしただけ。
私はあの固められた髪に顔をうずめたくないし、本当は強い香水も大して好きではない。
誰と寝たか分からない人間には正直興味もない。それだけ。
きっと気に食わないのはそういうところなのだろう。
外では明るいのに、中ではあまり喋らない。
興味がないだけだけど、彼女達にはそうは見えないのだろう。
男ばかり金を狙ってるように見えるのだろう、でもそうでしょ?
金を落とすのは客の男ばっかりなんだから。時々まぎれてくる女性がお金を払うわけではないでしょ。
だから、何だって言うのだろう。
誰の男を取った、寝た、お金を払わせた。汚い、性病がある、そういう類の言葉が載っているらしい。
その文章で私の生きた時間を簡単に表せるのね、そう思うといっそ笑えるくらいだ。
私だって寝る男は選ぶ、それに私はこの仕事を始めて誰とも寝ていない、正直性病もない。
でも私の名前で書かれたのだからきっと皆私の事だと思うのだろう。
人は簡単な生き物だから。
大して美味しくもないタバコをいらいらと吸った。すっと眩暈のようなくらみが来た。
このまま、このままで入れたらいいのに。そう思うのにイライラとタバコを灰皿に押し付けた。