57話
笑いつかれて頭が着いていかなくなった時に仕事が終わる、
最近の夜の街はとても静かだ、規制が入って営業は12時までそれ以外は中に残っている客が飲み終わるのを待っているだけ。
ばれたら罰金。どこもそう、だからといって一度入った世界はそうたやすく昼の時間には戻してくれない。
それは当たり前なのだろう。普通の人間が遊びで来る場所に居る人間は、所詮どこに行っても通用しないと思われる。
甘い事を言える場面は昼にはない、それが分かりにくい場所なのだろう。
それが私にも少しずつ分かってきて居る。
私には上に居続けるだけの知識がない、若さだけで売っていてその若さがなくなった時に次はあるのだろうか。
着けまつげが取れていないか、時々気にして、お金が入ったらエクステを着けて。
私の何もない顔をきっとココに来ている男達は喜ばないだろうし、普通の私は要らないのだろう。
笑って、飲んで。そこに次の先は大して用意されていない。
もし私が夜だけで過ごすのならあの家族と縁を本当の意味で切るのだろう。
彼らにとって私はその程度の存在なのだろう。誰も私を探したりしない。
くだらないメイクと髪色、高いヒール、短いスカート、胸の出る服そんな人間が家の近くに歩いて入ってくることは家族のくだらないプライドが許さないだろう。
私のかばん、サイフ、身分証、私を証明する沢山の物、ソレを取って、もう二度と会うこともないように。
それが私に出来るのだろうか、浸かり切った不安や不幸の中で満足しているだけの私に。
幼かった私が両親のために入ったきっと高校は退学だろう。
それとももう退学届けを出されているのだろうか。
それなら、それこそ彼らにとって私は何もないのだろう。
生きている事すら、もう彼らには見えないのかもしれない。
そうふと私は上の空で思った。
解けて揺れて、何処かに流れていけたらいいのに。
それでももう少ししたら私はきっと、あの家に帰って何もかも無くして帰ってくるのだろう。