55話
今度こそ逃げずに待っていられるだろうか。沢山の事に。
私はそれを誰かに任せて待っているのだろう。誰も迎えに来ないし、結局私の足は私の物、だから私しか立てないのに。
ゆっくり重みのある頭を上げた。ドアの隙間から声が聞こえた。
鈴と里奈の声だろう。
少し蛍光灯のジジっという音が聞こえた。とてもとても静かな中で2人は喋っていた。
ソレがとても悲しかった。そして幸せそうだった。私には得られないなにかを少し、ほんの少し見たのだと思う。
里奈の元々持っている明るそうな声が聞こえる
「副作用見たいなの、他に胃を保護するやつとかあったんだけど、薬もらいに行けなくてそれだけ飲んじゃって」
「それだけじゃダメなんだろう?一緒に行こうか?」
「保険切れてるから、すごく高くて、もうすこし我慢しないとね」
保険、、私は子供だけど、きっと保険が切れたって事は里奈ママも大変なんだろう、切れたってことは何万もするんだろう。それだけ私も少し分かった。
私も保険なんて持って居ないけど、病気なんてしてないから。忘れていた。
私は何が出来るだろうか。そう思って、汗で少し湿った枕に顔を押し当てた。
少しして2人の話が笑い話に変わってきたあたりで、やっと私はベットから抜け出すことが出来た。
頭が重い。それだけ。
仕事に行こうそう少し思って、ドアを開けた。
酷く蛍光灯の放つ光がまぶしくて。目が回りそうになった。