51話
無性に感じた怒りに誰かを殴ることがあればこんなことなのだろう。
でもそんな事ができるほど私はまだ壊れていもいないし、
酷く重い冷たい水に侵食されている体ではただ無性に覚えた怒りに立ちすくむだけだった。
あの公園がやけに太陽に照らされて蜃気楼に満たされたように見えてとても憎かった。
時間は簡単に私たちに時間を奪っていくばかりで、もう奪われたり私や里奈や鈴が憎んだ時間は
もう返してもらえない。簡単なことだろうし、そんなことはわかっているのに
何度も何度もその場所を見るたびに私は同じことを何度も何度も繰り返し考えて。
もうまっすぐの線には戻れないままループする曲線たちに入り組まれてしまった気がしている。
私はもう一度冷たく冷えた体を引きずって不審な瞳で見つめてくる子供たちを睨んでから
また鈴のマンションに戻ることにした。
寒い寒いときっとその外気との差を感じながらじめじめと張り付く熱さに体を纏わりつかれながら
ゆっくりと歩いていく。
そこからは気がついたら私は酷く汗をかいたままマンションのドアを回していた、ゆっくりと。
鈴と私のパンプスじゃない黒い少し後ろがこすれた靴があった。
ああ、そうか2人が来てるのね。
そう少しだけ思って静かにドアのキーを閉めて、靴を脱いで部屋に入った。
自分の部屋に戻ろうと歩み始めていると、洗面所の方からから鈴のおい!という言葉が何度か聞こえた。
なんだか血の気がそっと、わたしから引いていくのがわかった。