48話
仕事に行く前に私は里奈に電話をした。
「ねぇ、里奈、里奈も一緒に住めばいいじゃん。ママも呼んでさ。皆で暮らそうよ。」
私はただ里奈にそういった。
「あのね、私、やっぱりまだママと住みたいの。私きっとあんまり長くないと思うから。きっと幸せな家庭とか、好きな誰かとももう一緒にベットにもはいれないから
。だから、ママと一緒に居させて欲しいの。ごめんね。誘ってくれてうれしかったよ。」
その言葉にも悲しくて私は涙が勝手に零れた。
でも声は普通でまるで私の声と心が別の物になったみたいに感じた。
わかったごめん
そう言って電話を切った。
それでも私に溜まった汚れた水は目から次々に落ちていくだけだった。
里奈の声を私はある意味初めて聞いた。
私は逃げていたんだと闇がしっかりと伝えて来た。
塩水で前が見えないからといって、音はどんな中でも聞こえる物だから私は意味をしった。
携帯を私は強く握り締めた。
ひどくリビングが広くて私が小さなありにでもなったような気分だった。
次の日になって鈴が里奈を連れてきた。
私はしばらく里奈と会わないのだろうと思っていたのに。
鈴はそういうことを一気に飛び越えて行動する。
どんなことも思い通りにならないことを彼はあっさりとおしえてくれるのだ。
それが悪いことであろうとなかろうと同じ事だというように。
私は何もいえなくて、ただ里奈の目を見た。
やっと乾いた口から出たのは「おはよ」その言葉だけだった。
鈴はやけに笑っていて、それは気がつかないやつにはうれしそうに見えただろうと思う。
きっと、つかれも笑っていることを知った人間の性なのかもしれない。
夜の世界は人を簡単に変えてしまうものだから。
リビングのソファーに鈴が里奈を座らせた、その後私の目を見て真剣にそして、空のように笑った。
「俺里奈と結婚するわ。」
それだけのことだった。
でもね。鈴それはきっと里奈を傷つけるかもしれないよ。
私はそっと心の奥で悲しく、ゆっくりと思った。