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東方調和抄  作者: ひみーる
そこにきたのは
6/13

意識無意識

書きだめ分が消えていくー。


取りあえず、どうぞ。

(これは・・・・まずいな・・・)


今の状況はどう転んでも京真の死亡エンドで終わる状況だった。

まず、生まれたままの姿のこいしが京真に覆いかぶさる。京真はこれをなんとか引き剥がすが、再び抱きつこうとしてくるこいし。このままだと無限ループになると踏んだ京真は逆にこいしを押し倒し、両腕を押さえつけて状況を止まらせることに成功。


しかし、他人がもしこの状況を見たらどう思うだろうか。誰もこいしが京真に襲いかかったとは思わないだろう。むしろ、京真がこいしを襲っているようにしか見えない。


「キョーマって・・・大胆なんだね・・・」


「へ、変なこと言うな!お前もしこの状況を他の奴に見られてみろ?俺は多分この地霊殿どころか地底からも追い出されるぞ!」


「それはいいことなんじゃないの?」


「・・・なんで」


イタズラ好きな子供のようにニコニコしていたこいしの顔がいきなり無表情に変わる。この豹変具合にはさすがに京真は驚いた。


「だって、この地底は地上で嫌われた妖怪達が集められてるんだよ?・・・つまり何もしていないキョーマも嫌われることに「嫌われる理由はあるよ」・・・えっ」


京真は話す。自分が何者であるか。そしてそれがどういう存在であるかを。


「地底の妖怪が地上の存在から疎まれ、この地底に追いやられたことはさとりから聞いた。・・・確かに俺は何もしていない。けど、俺という存在自体が人間や他の妖怪に嫌われる」


「・・・キョーマが渾沌って言う妖怪だからでしょ?」


「なんで知ってるかが気になるけど・・・まぁいいか。そう、俺が渾沌だから何もしていなくても地底に・・・あれ?」


京真は考える。こいしは最初、”何もしていないキョーマ”と言った。それは言いかえると”京真が最初から地底にいたことを知っている”ということになる。


「・・・お前はどこまで知ってるんだ?」


「・・・私は全部知ってるよ。キョーマが地霊殿の前に幻想入りしてきたことから、お姉ちゃんと友達になったことも、地獄街道で勇儀と戦ったことも、パルスィの家で色々話したことも。私は全部その場にいたから」


こいしは全ての出来事の現場にいたと言うが、京真は全ての場所でこいしを見かけたことはない。特にこいしがいたとしてもパルスィの家の中で気づかないわけがないのだ。


「なぁ、こいし。お前は何者なんだ?そしてなんで俺についてくるんだ?」


さとりの妹、確かに容姿は似ている。だが、雰囲気が違いすぎる。同じ覚妖怪とは思えない。さとりは覚妖怪として普段は厳格でカリスマ性あふれる雰囲気をしている(京真の前ではそんなことはない)が、こいしはフワフワという例え方に近い雰囲気をしている。本当はそこにいないかのような錯覚に駆られる雰囲気だ。


「私はお姉ちゃんみたいに心を読むような、人の”意識”を操ることはできない代わりに”無意識”を操る覚妖怪。キョーマが私に気付けなかった理由は、私がキョーマの”無意識”を操って気づかせないようにしていたからだよ。それとキョーマについていくのは簡単なこと。ただ、”面白そうだから”。自分が覚妖怪なことを理由にして、他人に心を開かなかったお姉ちゃんが会ったその日に心を開いて、鬼の勇儀を満足するほどの強さを持ってる。そんな人を見ていてつまらないわけないでしょ?そして今無意識を解いたのは話すにはいいタイミングだったから・・・・けど・・・さすがにずっとこの格好は恥ずかしいかな・・・」


「ああ!ご、ごめ「京真?まだ起きてるんで・・す・・・・か・・?」・・・oh・・・」


この状況の中、さとりが入室。なぜか話し声が聞こえたので眠れないのかと思ったらしい。


「・・・・どういうことですか・・?なんで京真がこいしを襲っているんですか?」


「違うぞ!さとり!これには深いわけが・・」


「いいえ!今回は心が読めなくても状況をみれば分かります!どうみてもご・・強姦です!まず、こいしを離してください!」


「あ、ああ、分かった・・・」


「こいし!こっちにきなさい!・・・大丈夫だった?ひどいことされたの?」


京真はすぐにこいしを抑えていた手を離す。するとこいしは走ってさとりに抱きつき、さとりはそれをなだめる。そしてこいしはさとりの腕の中で信じられないことを言い始めた。


「私もキョーマとお友達になりたいと思って、挨拶をしようと思ったの。そしたらね?キョーマが私を見るなり”ハァハァ”言いだして、怖くなって逃げようとしたら捕まって、服を脱がされて、ベットに押し倒されたの。”なんでこんなことするの?”って聞いたらね、なんて言ったと思う?”俺は本当はさとりを襲いたいけどあいつを襲ったら俺はこの幻想郷で生きていけなくなる。だから代わりにお前が体で俺に奉仕しろ!”って」


「・・・・それは本当ですか・・・京真・・・」


(ああ!神は死んだ!!!)


絶望した。


自分の運の悪さに。


絶望した。


この世の不条理さに。



京真は諦めた。”こっち(幻想郷)でも孤独に生きるのか・・・”と。だが、さとりの次の発言に色んな意味京真もこいしもで驚く。


「・・・・わ・・私は・・京真になら・・・いいですよ・・・」


「「・・・・えっ」」


「わ、私は・・京真になら・・・は・・・”初めて”を捧げてもいいと思っています!」


部屋に沈黙が流れる。


(さとりは・・・何を言っているんだ?・・・ああ、そうか、きっと”初めて”っていうのは何かきっと違うことだ!絶対に”処女”とかそういうことじゃない!絶対にだ!・・・・・・・いや、無理だ!今時の中高生に”初めて”とか云ったら誰しも”処女”または”童貞”と思うだろう!そうだ、俺もどうやってもそう思ってしまうさ!これは仕方がないことなんだ!)


(ええっと・・・これはどうすればいいんだろう?本当のことを言った方がいいのかな?でも、ここで本当のことを言ったらお姉ちゃんは多分窓から飛んじゃうよね?かと言って本当のことを言わなかったら次はお姉ちゃんがキョーマを襲っちゃいそうだし・・・・・この状況じゃ、無意識操作で気づかれずに逃げることもできないし・・・)


(ああ、言ってしまいました・・・。けれど、これで京真との距離は文字通り”0”に・・・)


それぞれの思い、考え。本当にこの状況は”混沌(カオス)”としか言えなかった。


(うーん・・・。やっぱり本当のこと言った方がいいよね・・?)

「えーっと、お姉ちゃん・・?本当のこと言うとね、私がキョーマに詰め寄っただけだよ。普通に知り合ってもつまらないからね!えっへへー」


「・・・・ええっと、じゃあ、京真が私を襲いたいっていうのも・・・・嘘・・ですか・・?」


「・・・まぁ・・・な」


その時、瞬間でさとりの顔が赤くなる。それは必然だった。誰しも自分の恥ずかしい想像が他人にばれた時はどこかに隠れてしまいたくなるだろう。それは妖怪も例外ではない。


「・・・もう・・もう、あなた達なんて知りませーーーん!!!」


さとりは駆けだし、京真の寝室から出ていった。


「Oops!さとりぃぃ!!さとりさぁぁぁん!!!!!」


「あ~あ、行っちゃった・・・」


京真は先ほどではないが焦っていた。あのようなことを考えてしまうのは仕方がないことだ。そう連想させることをこいしが言ったのだから。

「それをフォローするのが男の務めであり、従者の務めである。やるのであれば完全である従者を目指そう。」ということを考えている京真はこの状況をどうするか悩んでいた。


「ねぇ、キョーマ?」


そこにこいしが話しかける。京真の顔を覗き込むあたり、少し機嫌を伺っているようだ。


「うん?どうした?」


「地上に行かない?」


「・・・・・はい?」


突然の”地上へいく”という提案。

地底の妖怪と地上の妖怪の相互干渉はあまり良しとされていない。それは地底の妖怪が地上の妖怪に疎まれているということに大きく関係している。

地底の妖怪は地上の存在に地底に追いやられたことを理由にあまり地上の妖怪をあまりよく思っていない。

少しのことで大きな事件に発展してしまうのだ。


「キョーマの考えていることは分かるよ。でも、それは地上の人達に迷惑をかけなきゃいいんだよ。簡単。簡単」


「・・・確かに行ってみたいとは思うんだけどなぁ。ばれたら大変だしなぁ」


「大丈夫だよ!だって、キョーマが地底の妖怪だって地上の人は誰も知らないんだから!ね!?」


そう言われてみればそうである。京真が幻想入りした場所は地底。地上の存在は京真が幻想入りしたことすら知らないのである。


八雲紫以外は。


ここは妖怪達が当たり前のように闊歩する幻想郷。ただの妖怪(神獣ではあるが)一匹が幻想入りしたことをいちいち宣伝したりするだろうか。いや、するはずがない。

となってくると行きたい気持ちを抑えるのはなかなか難しくなってくる。


「・・・こいし。明日、朝の仕事が終わり次第行こうか」


「りょーかーい!じゃ、おやすみ!」


こいしが出て行った後(本当に出ていったかは分からないが)まずさとりをどう説得するかを考えていた京真であったが


「まぁ、なるようになるかぁ・・・・寝よ」


思考をやめた。考えていても何も変わらないからだ。














「いいですよ。いってらっしゃい」


「・・・・えっ」


翌日、反対されること覚悟で地上に行くことを話した京真であったが、予想に反し、さとりはあっさりと許可を出した。


「じゃ、行ってきます!お姉ちゃん!お空!お燐!」


「「行ってらっしゃいませー」」


「あ、あと地上の人達には絶対に地底から来たとは言ってはいけませんよ?」


「・・・えっ、あ、了解」」


そうして京真だけが理解できぬまま事は進んで行き、気づくと旧地獄街道を歩いている。

この日も街道はにぎわっていた。


「いやー、自分が妖怪だったって分かるとこの通りも気楽に歩けるなぁ。実を言うとこの前来た時はちょっと緊張してたんだよなぁ」


「緊張してた割には勇儀に喧嘩売ってりしてなんというか・・・・・馬鹿だねぇ」


「いや、まぁ、あの時はなんというか、ねぇ?ははは」


こいしは誤魔化すように笑う京真の顔を覗き込む。この様子を見ると京真はさとりのことをどのように思っているのかと思ってしまうのは必然だった。


「キョーマはさ、お姉ちゃんのことどう思ってたりするの?主人?友達?それとも思い人だったりして」


「うーん、主人ではあるけど、やっぱり友達かな。最後のは多分ないなぁ。恋愛とかよー分からん・・・・・それよりさ、幻想郷には学校とかもないわけだろ?こういう昼間って普段なにしてるんだ?」


まわりを見ると、京真と外見だけ同じくらいの妖怪でも朝から酒を飲んだり、話していたり、あるものは路上で寝てたりしている。働いている者は店を開いている者くらいだ。


「別に?ここら辺の人は喧嘩したり、お酒飲んだり、お昼寝してたりしてるけど。ちなみに私は結構地上に出てるよ!」


「まぁ、こいしは能力使えばばれないもんな。・・・あと、地上ってここから何分くらいかかるんだ?」


すでに街道を歩き始めて30分ほどが経過していた。

街道を抜けても地上に上がるための道があるのだろう。そして”地底”というのだからその道も長いとみてもよさそうだ。


「うーん・・・・その前にキョーマって飛べる?」


「・・・いや、無理」


「じゃ、今覚えちゃおうよ。実際、飛べなかったら地上行けないしね!」


「な、なんだってー・・・」


そしてこいしがその場でフヨフヨと浮き始める。「こんな感じだよ!」と言ってくるが京真にはさっぱり分からない。しかし、ほとんどの妖怪が飛ぶことができると言うので京真も飛べるはずだった。

勇儀との戦いで京真の瞳は常時青くなっている。そして、無意識ではあったがこの状態で渾沌の妖力を使って勇儀に一矢報いることができたのだ。

要は、やり方さえ分かれば飛ぶこともできるということだ。


「むーん・・・。全然できねぇな」


「違うよ!もっと・・・こう、メメタァ!、みたいな感じだよ!」


「わりぃ、さっぱりわからん」


と歩きながら練習をしていると、徒歩で来れる限度の場所についてしまった。


「ほら!どうにかしないと地上に行けないよ!男なら気合いをみせろ!」


「まぁ、待ってくれよ。すぐにできるようになって「おや、初めて見る顔だねぇ」・・・どちら様ですか」


京真達の行くべき道から現れたのはブロンドの長髪をポニーテールで結び、少し特殊な形の茶色の服を着た女性。


「私は黒谷ヤマメ、土蜘蛛だよ。地底では結構名は知られていると思ったんだけどねぇ。知らない人がいるとは、ちょっと残念だよ」


「なんか、すいません。最近地底に来たばかりなもので。俺は笛吹京真と言います。種族は渾沌という妖怪です。よろしくお願いします」


「へぇ、渾沌か・・・。こいしと一緒にいるのをみると只者じゃないみたいだねぇ。それに、地底送りにされた割には礼儀もある。・・・キスメ、害はなさそうだからきても大丈夫だよ」


ヤマメがそういうと岩場の影から桶に入った小さな女の子が出てきた。緑の髪をツインテールでまとめ、白い浴衣のようなものをきた女の子だ。


「あっ、キスメだー。キョーマ、キスメは人見知りだから優しくしてあげてね」


「了解」


「うん、よろしく頼むよ。・・・キスメ、挨拶くらいはしなよ」


キスメは何かを言おうとまごまごし始めるが何も言ってこない。そこで京真はキスメのもとに歩み寄り、手を差し出した。


「俺は笛吹京真、まだ地底に来たばっかで何も分からないけどよろしくな!」


「・・・・!」


キスメは声には出さなかったが、驚いたような顔をし、すぐに俯いてしまったが、少しすると顔を上げた。


「・・・キスメ・・です・・・よろしくお願いします・・・」


「ああ!よろしくな!」


キスメの小さな手がゆっくりと手を伸ばし差し出された京真の手を握る。それをみたヤマメとこいしも次第に笑顔になる。


「よかったねぇ、キスメ」


「よかったねー、キスメー。あとキョーマも」


「ああ、また友達ができたぜ!」


今の京真にとって友達ができるほど嬉しいことはない。しかも、日に日に増えていくのだ。外の世界とはまるで違う。


「それより、こんなところで何をしていたんだい?うんうんうなっていたけど」


「よく聞いてくれたね!なんとこのキョーマ、飛べないのです!!!」


「・・・そんな大々的に発表しなくてもいいんじゃないか?」


「ええーっ!それは少し遅れてるよ!」


「・・・それは・・まずい・・・です・・」


「・・・・うぅ・・」


女性陣からの総攻撃。どんどん京真のハートは抉られていく。しかし、そこに一筋の光が。


「まぁ、飛び方くらいなら教えてやらないこともないけどねぇ」


「マジですかッ!!?」


「・・・条件はあるけどね」


少し悩む。ヤマメの言う条件とはいったい何なのか。妖怪に慣れてきたとはいえ、”妖怪が出す条件”というものがどのような内容なのかは予想がつかない。もしかしたら、体の一部を求めてくるかもしれない。そんな悩みだった。


「そんなに身構えることはないよ。簡単な条件だからねぇ」


「まぁ、キョーマの命くらいならあげてもいいよー!」


「ちょ!こいし!何言ってんだ!?」


「まぁ、それでもいいんだけどねぇ。でもそれだとキスメの友達が減っちゃうからなしにするよ。それで、こっちの条件は、”これからここを通る時は私達の世間話に付き合うこと”ただそれだけのことだよ」


「えっ、そんなことでいいんですか?」


ヤマメが出した条件、これは京真にとって破格としか言いようがなかった。向こうにもなにかメリットがあるのだろうが、京真にとっても友達と話す機会と言う嬉しいメリットがあるからだ。


「まぁ、今まで見てきたとおり、幻想郷は女のほうが自然と地位が高くなってしまってね、あんまり男と話す機会というものがないんだよねぇ。それにこんな街道の離れに住んでるしねぇ。だから、京真と話せるのは私の暇つぶしにもキスメの人見知りの強制にちょうどいいんだよ。ねぇ?キスメ」


「・・・うん・・私も・・・京真と話せると嬉しい・・!」


「・・・分かりました!その条件、飲みましょう!」


このメリットしかない条件。飲むしかない。そう思い京真は承諾した。こいしは”なんだー、命じゃないのかー、つまんなーい”とグチグチと言っていたのは無視することにしよう。

そしてヤマメ軍曹の飛行訓練が始まった。


「んじゃぁ、飛び方を教えようかねぇ。ここでは全て”Sir!Yes!Sir!”と返事するんだよ?」


「Sir!Yes!Sir!」


「意識としては簡単さ、ただ純粋に飛びたいと考えるんだ。飛んでどうするか、そんなことはどうでもいい。ただ、飛びたい。そう思うだけさ。いいね?」


「Sir!Yes!Sir!」


「次に妖力の流れ、体全体に糸がついていて、上からそれを引っ張られるような感覚さ。そう妖力を集中させるんだ」


「Sir!妖力の流し方が分かりません!Sir!」


「そんなのは無意識にできるものさ。やってれば分かる。じゃあやってみな!」


「Sir!Yes!Sir!・・・・・・・・」


取りあえず、両足に力を込めてみる。しかし、全く飛ぶ様子を見せない。


「浮きすらしません・・・・」


「諦めんじゃないよ!そんなんじゃずっと地底にひきこもりっぱなしだよ!?それでもいいのかい!?」


「Sir!No!Sir!」


そんな二人の全く事が進まない訓練風景を見ていてこいしは退屈していた。


(暇だなぁ。キョーマってやっぱり弱い?・・・でも、勇儀と戦った時のあの妖力の大きさは私や、お姉ちゃんよりも大きかったし、幻想郷でもいいとこ行けると思うんだけどなぁ。・・・けど、今は暇ぁ。早く飛んでくれないかなぁ・・・・・・・・あっ!いいこと思いついた!!京真は”無意識での妖力の操り方”が分からないんだよね?だったら、私が京真の”無意識”を操ればいいんじゃない!)


こいしは能力を発動。そして能力の矛先を京真の無意識の部分に向けた。”妖力を操るという無意識”に。

するとうんうんとうなっていた京真の体に変化が訪れる。


「・・・・・・お?おお?おおおお!!!飛んでる!?飛んでますよ!?ヤマメさぁぁぁぁぁぁん!!!」


「できたじゃないか。どうだい?妖力の流し方はつかめたかい?」


「はい!なんか、こう、メメタァ!って感じですね!!?」


「・・・それは分からないけどねぇ」


そして京真はそのへんをヒュンヒュンと飛んでみせる。飛び方さえ分かってしまえば空中での移動は簡単なことであった。らしい。


「よーし、キョーマ!飛べるようになったことだし、張り切って地上に行こうか!」


「うん、そうしな。じゃあね、またここを通る時は話し相手になってくれればいいからね」


「はい、では失礼します!キスメもまたな!」


「・・・うん・・・また・・」


そして京真とこいしは地上に向けて飛ぶ。










「なぁ、こいし」


「ん?なーに?」


「幻想郷の地上って・・・・紅いんだな・・」


「いやー、ホントは紅くないよー?でも今日は紅いねー」


二人が地上に出てみると見える景色は全て紅。

全て紅い霧に覆われていたのだ。


「・・・この霧、少しだけ妖力を感じるぞ?」


「あれ?もうそんなことも分かるようになったの?師匠として嬉しい限りだね!」


「ソーデスネー・・・・ま、そんなことは置いといて、これどうすんだ?」


初めて地上に来る京真でもこれだけは分かる。


”この霧は普通じゃない”


一見、京真は冷静そうに見えるがこれでも年頃の男の子だ。なんにでも首を突っ込みたくなる。


(うーむ、どうしようか。やっぱり面白そうだから原因を突き止めたいという厨二心に駆られるなぁ。けど、帰りが遅くなるとさとりに怒られそうだしなぁ。こいしはどうなんだろ・・・・あれ?)


こいしの意見を聞こうとこいしがいたはずの場所に目を向けるがこいしはそこにいなかった。


「こいし?おーい!こいし!どこいったんだぁ!・・・・あいつ、俺が考え事してる間に俺の意識内から消えたな?どーすんだよ、もう・・・・・まぁ、いいや、さとりに怒られてもいいから一人で行こうかな」


そういい、京真は考えを切り替える。どうやって原因を突き止めるか、だ。この霧が人為的なものなら発生源がどこかにある、と京真は考えた。

ならば、その場所をどうやって見つけるか。

そして京真は空を見上げる。空を見ても京真の視界は紅く染まっているが、まわりに比べては紅が少しだけ薄い。


「せっかく飛べるようになったんだし、上からみようかなぁ。・・・うん、そうしよう」


そして空に向かってできる限りの速さで飛びだした。






飛びだして10分ほど経っただろうか。

まだ、紅い霧は続いている。


「このままいったら雲の上まで行っちゃいそうなんだが。なかなか広がってんだな、この霧・・・・おっ」


そしてついに霧を抜けた。が、霧と一緒に雲も抜けてしまっていた。一面に壮大な雲海が広がっている。


「すげぇとしか言いようがないな・・・・。自分の語彙力が恨めしくなるぜ。こんな景色も見れたことだし帰ろうかなぁ」


とそんなことを言ってると京真はあるはずのないものを見つけた。



雲海に浮かぶ大地



「まさか、あれは・・・・天国?・・・・・行ってみよう!」


再び全速力で飛びだす。雲海に浮かぶ不思議な大地に向かって。




近づいてみるとその大地のほとんどの場所には小さな花々が咲き乱れていた。

そして点々と、そして力強く生えている木々。その木々のほとんどに桃が実っていた。

そして空に浮かぶ大地に着陸。


「なんと、幻想郷の上空には桃源郷が存在していたのか!!・・・・うまいこと言ったな。フフ、これはきっとお空あたりが爆笑すr「全然うまくないわよ?」・・・うん?」


京真が一人ほくそ笑んでいたところに一人の少女が現れる。青くなびく長髪、桃のようなものが乗った帽子、そして、本当に女性か分からなくなるほど何もない胸部。


「あんた、地上の妖怪でしょ?なんでこんなとこにいるのよ」


少女はドヤ顔で少し高圧的に聞いてくる。京真はこの態度にいい印象が得られなかったため、敬語で話す意志を捨てた。


「ああ、ちょっとわけがあってな。少し聞きたいんだけどさ、ここって何なんだ?天国?」


「はぁ?そんなわけないじゃない。最近の妖怪はそんなことも知らないのね」


「こっちにきて1週間も経ってないんだよ」


「ああ、なら仕方ないかもね。・・・ここは天国じゃないわ。天界。俗な考えを捨てた”天人”が住む穢れ無き世界よ」


少女は少し遠い目をしながら話した。この様子を京真は不思議に思う。


「じゃ、お前もそういう俗な考えがない天人なのか?」


そう聞くと少女はすぐに先ほどまでのドヤ顔に戻り、フフンと言いながら質問に答える。


「そうよ!しかも、私は天人の中でも結構お嬢様のほうなの!そんな存在と2人っきりで話せるんだから感謝しなさいよ!「アリガタヤー」ちょっと!全然誠意がこもってないんだけど!」


「だって、お嬢様って言う割にはなんか上品じゃないし、俺が仕えてる女の子のほうがまだましだぜ?」


「っ・・・・よ、妖怪のくせに失礼なやつね!名乗りなさいよ!その失礼さに免じて覚えといてあげるわ!」


少女は顔を赤くして吠えるように言ってくる。京真はため息をつき、やれやれという感じで答えた。


「俺は笛吹京真、一応、渾沌っていう神獣だ。こっちが名乗ったんだから、お前の名前も教えてくれよ?」





少女は待ってましたと言わんばかりの顔で自分の名前を告げる。







「私は比那名居天子!この天界でも最上位の天人にして、”大地を操る程度の能力”を有する者よ!」





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