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【二周目-05】

※三十行の空行ののち本文。一周目の方は本話スキップ推奨































【ペンフィールド夫妻の過去について】


報告者:王宮特査局 第08班 一等補佐官 ■■■■・■■■■■■

提出先:王宮特査局

機密区分:局内限閲

文書番号:特査08-683-d2d66


1.概要

 本報告書は、ロウデン家が保有するリリト個体(以下「当該リリト」という。個体識別名:シーナ)に関して、同家が独自調査に基づき構築していた事案認識の妥当性を検証し、王宮特査局による再調査の結果判明した事実関係および推定時系列を整理したものである。

 なお、本報告書においては、当該リリトの親個体たる個体識別番号277(個体識別名:リウェン。以下「リウェン」という)、並びにその周辺人物であるガーウィン=ペンフィールド、ロウェナ、ミラベルらを中心として、ペンフィールド家およびデンヴィア家を巡る王歴658年から同665年にかけての一連の事象を総称して「本件事案」という。



2.ロウデン家による独自調査の内容とその評価

 当該リリトを保有・管理するロウデン家は、本件事案について独自捜査を実施し、以下のような事案像を形成していた。

・ペンフィールド夫妻は、リウェンに出産を強制した後、リウェンを命の魔法の使い手として、なんらかの手段で他貴族に子を譲渡し、利益を得ていた。

・リウェンの譲渡によって得られた利益をもって、ペンフィールド夫妻は婚姻に至った。

・ペンフィールド夫妻は、自身らの恋愛のために殺人を犯したことで精神が歪み、さらに命の魔法の後継育成方式が強権的であったことも相まって、当該リリトへの虐待に至った。

 ロウデン家は以上の点をもって、本件事案の全容であると判断していた。

 しかしながら、王宮特査局による関係者聴取、残存記録の照合およびリリト特有の生態現象《萌芽》《誘爆》に関する既存知見との比較検証の結果、上記事項はいずれも事実関係と重大な齟齬があることが判明した。



3.王宮特査局による事案真相(推定時系列)

 前記ロウデン家の認識は、少なくとも二体のリリトによる《萌芽》に伴う認識改変の影響を著しく受けていると考えられ、事実を正確に反映するものではない。

 本局による再調査の結果、現時点で最も妥当と判断される時系列は、以下のとおりである。


王歴656年

・オズバーン領より、リウェンが逃亡。

 (逃亡経路については[1]に詳述。)


王歴658年

・リウェンがデンヴィア家において使用人として受け入れられる。受け入れとほぼ同時期に、《萌芽》が発現し、デンヴィア家構成員、およびリウェンの周辺状況に対する認識が改変される。

・リウェンがガーウィン=ペンフィールドを番候補として見初め、ガーウィンに対する誘因行動を開始する。この時点においてガーウィンとロウェナが恋仲関係にあったことが、断片的証言および通信記録から確認されている。

・また、ロウェナも《萌芽》の影響下において、リウェンに対する虐待衝動を発現させていたと推測される。

・リウェンの個体識別名はこのときにリウェン自らが命名したものである。その子音配列がロウェナの名と同一であることから、ロウェナの名を変形したものであると考えられる。


王歴660年

・リウェンによる《誘爆》が発生。ガーウィンの破壊行動によって、デンヴィア家は事実上の離散状態に陥る。同時期に、ガーウィンとロウェナの関係は急速に疎遠となる。

・上記事象の後、リウェンとガーウィンとの間に、当該リリト(個体識別名:シーナ)が誕生する。


王歴662年

・ロウェナは、おおむね二年間リウェンの生活領域から離れていたことにより、《萌芽》の影響が減衰し、認知能力が徐々に回復する。

・認知能力の回復後、ロウェナはリウェンの生活領域外においてガーウィンを誘惑し、人間メス個体ミラベルを設けるに至る。


王歴665年

・ロウェナがリウェンを殺害。この事象に伴い、リウェンが長期にわたり散布していた《α胞子》および《β胞子》の対象個体指定が揺らぎ、ガーウィンに対する認知改変効果が急速に弱まった結果、ガーウィンの認知能力はおおむね回復に至る。

・しかし同時刻、保護者個体であるリウェンの喪失・及びミラベルの存在をトリガーとして、当該リリト(シーナ)において新たな《萌芽》が発現。これにより、ペンフィールド夫妻およびミラベルの当該リリトおよび家庭環境に対する認識が改変される。


以上が、現時点における王宮特査局の調査に基づく、本件事案の推定時系列である。



4.本件事案における当該リリトの虐待とペンフィールド夫妻の認識に関する考察

 二体のリリトによる《萌芽》の影響を受けた本件事案におけるペンフィールド夫妻の記憶状況は極めて混乱したものであり、当該二名が各時点において本件事案をいかなる形で認識していたかを正確に推定することは困難である。

 しかしながら、《α胞子》の作用は、その胞子を散布した特定リリト個体に対する限定的な効果に留まり、当該リリト以外の対象に向けられた感情や衝動を根本から消去するものではない。このため、王歴665年にロウェナがリウェンを殺害した時点において発現した当該リリトの《萌芽》により、ペンフィールド夫妻の内面からリウェンに由来する感情的負荷は一切除去されていないことに留意する必要がある。

 すなわち、当該リリトが《萌芽》によって誘起したペンフィールド夫妻の虐待衝動は、決定的な殺人衝動こそ抑制していたものの、長年にわたり蓄積されたリウェンへの憎悪を背景としており、一般に観察される《萌芽》に伴う虐待衝動とは比較にならない強度を有していたと考えられる。

[1]特査08-656-syw87-附1

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― 新着の感想 ―
ゼロハチ班の報告文書、まとめて読みたい… 特にリウェンがオズバーン領から逃亡した報告書…
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