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日々是好日

日にち薬

作者: Y.
掲載日:2025/10/14

こどもの頃

家族は、川の字で寝ていた。

いつの頃の話かは、もう記憶にないが、

母が、「姥捨て山伝説」の話をしてくれた。

挿絵(By みてみん)

母が認知症になって、十年以上。


自宅で介護してきたけれど、


今年、ついに施設に入れた。




「もう、無理だ」と思った。


あの頃は、オムツを替えたり、食事を作ったり、


やることが山ほどあったけど、


本来他人である妻、文句は言うが、本当に


尽くしてくれている。



今は、家でゴロゴロ。


張り合いのない毎日だ。




施設には、あまり顔を出さない。


自分で“姨捨山に捨てた”と決めたから。




母が家に戻るときは、“骨”になって帰る。


そう決めて、施設に預けた。




母はもう、そこが家か施設かも分からない。


いや――分かっているのかもしれない。




ある日、施設から電話が来た。


「暴れた」とのこと。


「家に帰る!」と。


「お父さんに食事を作らなきゃ」と、


言い出したらしい。




家でも、夜中に玄関の灯りをつけたりしていた。


ひとりじゃ歩けないくせに。


「お父さんが、まだ帰ってこないから」と。




こちらも、ひどいことを言ったりする。


「お父さん、迎えに来ないねぇー」と。




すると、母は笑って言った。


「向こうで、もういい人、見つけたんじゃない?」




……お花畑の住人。


それでいいと、諦めて介護を続けていたが、


限界だった。




施設に衣替えの荷物を届けて、


顔を出したら――


笑顔が、返ってきた。




どこまで分かっているのだろう。


涙が出そうになった。




母はお花畑の住人。


別の世界で生きている。


確かに、生きている。




生きていてくれるだけでいい。




死んだ父には、もう会えない。


会えないより、ずっといい。




親が死に、子が死に、孫が死ぬ。


それが、親孝行。




親を看取ったら、


こちらの役目も終わる。




でも、それを見届けられないかもしれない。




父は手を握っても、もう握り返してはくれなかった。


勝手に旅に出てしまった。


何も言わずに。




身勝手だと思った。


最後の世話くらい、させてから旅立てよと。




今も、父の写真は見られない。


見ると、泣いてしまうから。




「日にち薬」という言葉を知った。


……効能は――効かないね、この薬。


妻は言う、悔しいから


「あんたより、1日でも長く生きてやる。」と




「ああ。そうしてくれ」


1人になんかなりたくないからね。




無償の愛。


ありがとうしか、ない。

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