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別界勇者  作者: 隠岐供契
第一章:森
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第三話 おとなのおねえさん

「え……なんでこんなところに……こんな小さな子供が……」

 そう、玲の目の前にいるのは、ずっと待ち望んでいた、「誰か」であった。しかし、その「誰か」はなんと少女だったのだ。髪の毛は見事な紫色のツインドリルで、左目は髪の毛で隠れており、貴族を彷彿とさせる地面スレスレの桃色のドレスを身にまとっており、そのほかにも装飾が施され、相当高いものであると思われた。

 ぜこんなところにいるのか、こんな食料も何もない森なんかに一人で……

 迷子だろうか……とにもかくも玲は人に飢えていた。傍から見ればただの少女を陰から見てる不審者にしか見えないが、そんなことはどうでもいい。なぜなら今はこの少女と玲しかいないのだから。

 そんな言い訳を考えながらとにかく誰かに会えてよかったという安どの気持ちとともに、その少女に声をかける。

「あ、あの……すいま———」

「ぎゃあああああああああああああああああああ!!」

 よほど驚いたのか、それとも彼女も玲と同じでダメ元で叫んでいたのだろうか。玲を見るなり、まるでお化けを見たかのような顔で後ずさりながら叫んだ。

「おおおおおおお主だれじゃ!?」

 おそらく本人は冷静さを何とか保っていると思っているのだろう。

 玲は少女の震えてる足をちらりと見ると、その少女は顔を赤面させながら気合を入れるように足はぺしぺしと叩く。

「わわわわわしはおおおお前なんぞにびびびびビビらぬぞ!!」

「めちゃくちゃビビってるじゃないですか———」

「しゃべったああああああああ!?」

 また距離を離された。

 本当に玲のことを幽霊だとでも思っていたのだろうか、目には少しでも振動を与えると洪水を引き起こしそうなほど潤んでいた。まぁ当然なのかもしれない。こんな少女が一人で森をいつからかは知らないが歩いていたのだ。急にいると思ってなかった人に出会ったら怖くもなるだろう。

 どうやったら危険な人じゃないと思ってもらえるだろうか、そう考えていると———

「お…お主…幽霊ではないのか…?」

 ———どうやら本当に幽霊だと思っていたらしい。

「だ、大丈夫ですよ、僕は幽霊なんかじゃな———」

「……?どうしたのじゃ?」

 おかしい。なぜだろう。急に目の前が回って…いや違う。僕がふらついているのか…

 ずっと探していた人と少し会話したことで体が油断したのだろうか。わからないが、玲は急なめまいと頭痛より…膝から崩れ、ついには少女の目の前で倒れてしまった。

「ひっ……」

 少女のおびえている声が聞こえる…どうしよう……この子に嫌な思い出を作らせてしまった……いや、それよりも自分のことだ。立ち上がれない。目の前が真っ暗だ。やっと人と出会ったのにここで———

 「死」という言葉がまた頭の中に回り始め、なんとかその死に抗い、手を動かそうとするが、もう力どころか感覚もなくなってしまって動かせない。声を発してみた。もう喉が限界を迎えたのだろう、かすれた息しか出なかった。あぁ、もう終わりか、そう思った玲は「死」という言葉を、「なぜ僕は剣を手に取ってしまったのか」という後悔を、頭の中で意識が薄れていく中何度も何度も言いながら……ついに少女の前で、玲は意識を失った。


「———!……し!」

 ……なんだろう…誰かの声が…聞こえる気がする……

「お……し!しっか———て!」

 誰かが玲に話しかけている。

「しっか———!お主!しっかり……て!」

 なんでそんなに叫んでいるのだろうか……

「お主!しっかりしろ!」

 しっかり……?何を言って……はっ———!

 自分が今、どんな状況になっているかをだんだんと自覚していき、目を開けようと努力する。

「おいお主!早く目を開けんか!!」

 そうだ……僕はさっき倒れて…この声は……あの少女…なのか?

 早く起きなければ。そう思った玲はその薄れている意識を無理やり覚醒させ、重たい体をやっとの思いで起こす———が。

「はよう…起きんか!!」

「ぐへっ⁉」

 玲が体を起こすのと同時に、その少女の掌が玲の顔面と衝突する。

「ぎゃああああああああ!!起きたああああ!?」

 自分で起こしたというのに、起きたらまるで死んだ人間がよみがえったような反応を見せ、5歩ほど後ずさりをする。

「ここは……」

 あたりを見渡す。どうやら玲が一晩寝て起きた周りの大木よりも二回り程大きな大木の木陰にこの少女が運んでくれたのだろう。

 そう思ってると、なにやらぽたぽたと落ちる音が聞こえてきた。場所は顔の中心あたりから。それに血の匂いもする。

「……?」

 手に落ちた血を見てやっと理解する。鼻血だ。きっとさっき玲が起きたのと、少女が玲を叩き起こそうとしたタイミングが見事に重なり、顔に直撃したときに出たのだろう。…正直まだ痛い。

「お、お主……」

 大木の陰からひっそりとみている少女を見つけた。

「い、生きておる…のか?」

「まぁ…なんとか———ゲホッゲホッ!」

 二日ももう何も飲んでいないのだ。声がスカスカで、しゃべるたびに咳が出てしまう。

 すると少女が、はぁとため息をつき、こちらに歩み寄ってくる。

「…ほれ」

 顔を上げると、竹のような素材で作られた水筒をこちらに向けて渡している顔をそむけた少女がそこにいた。

「———!!」

「ひゃっ———」

 もう何も考えられなかった。とにかく目の前には水がある。今はそれだけわかっていればいい。そう思いながらその水筒を奪うように受け取り、ぐびぐびと一気に飲み干した。

 水を飲んだからだろうか、生き返ったように、体の隅々のあらゆる箇所が再稼働したように思えた。

 すると……

「ぐぎゅるるるる……」

 当然体が再稼働するとお腹の虫も働くというもの。

 森全体に響き渡るほど大きな音が玲のお腹の中から鳴った。

 その少女は呆れたと言わんばかりの目で玲の姿を見下ろしていると、ふと玲の腰につけている真剣が目に入り、少し目を見開いて、玲に問う。

「お主……どれだけここにいたんじゃ……?」

「ほぼ…み……三日かと…」

「まさかその間何も食っとらんのか!?」

「は、はい……うっ———」

 今度はお腹の減りすぎで倒れそうになったところを少女に助けてもらった。

「むぅ…仕方がないのぅ……ほれ、食うがよい」

 玲のその姿を見るなりまたため息をつき、今度はポケットからパンを一つ出し、こちらに差し出した。ちなみにまた顔をそむけている。

 どんなところから出してるんだという疑問が少し浮かんだが、そんなこと考えてる暇もなく、今はまず食べることが先だと思った玲は、これまた奪うようにしてパンを受け取り、一瞬で平らげた。久しぶりすぎる食事だからだろうか、かなり美味だった。

「どれだけ食わなかったらそんな食い方になるんじゃ……」

「すいません、お見苦しいところを…」

「———あ」

 あ、そうだと思い出したように少女は玲に近づいてきて———

「ふんっ」

「いでっ!?」

 急に鼻をつままれた。そしてなぜか赤面している。

「…そ、その、すまんかったの。顔面にビンタ、してしまって……」

 そういって鼻を話した。

 …なぜつまんだのかは教えてくれなかった。

「いえ、大丈夫です。こちらこそ助けていただき、本当に感謝しています」

「ほう?なかなか礼儀がなっているようじゃな?」

 なんで子供にこんなこと言われなきゃならんのかと少しいらだってしまったが、表に出すほど玲の精神は幼くはない。

「そうじゃった。聞き忘れるとこじゃった。こんなところで出会ったのもきっと何かの縁じゃろ。お主、名は何と申す」

「碓氷玲です」

 そういうと、彼女はなぜか困ったような顔をした。

「ウ、ウスイ、レイ?これまた変わった名じゃの」

 初対面の人になんて失礼なことをいうんだこの子と思いながら言い返す。

「別にいいでしょ。それが僕の名前なんですから。それになんでそんな片言なんですか」

「すまぬ、ここらへんではあまり聞かぬなじゃったもので…つい」

「そういうあなたの名前は?」

 フフンと鼻から息を勢いよく出し。よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに胸を張り、ドレスの裾が草を撫でる。そして両手をバッと開き、自信満々に自己紹介をした。

「アリアドネ・アイゼアじゃ!!」

「そっちこそだいぶ変な名前じゃないですか!!」

 どうだ!と自信満々な所本当に申し訳ないが、どうしてもツッコミを抑えられなかった。これは仕方ない。なぜなら玲の名前がおかしいというなら、どんな普通の名前なのか気になって聞いてみたはいいが、こちらもなかなか変な名前で、明らかにキラキラネームか、もしくは外国人みたいな名前だったのだから。

 そういうと、アリアドネは、訝し気な表情でこちらを見た。

 しばらくアリアドネは考えたのち、口を開く。

「そんな…私の名前を聞いても何も…?」

 しまった。ついに怒らせてしまったと自分を反省させようとする玲だったが、少し違った。アリアドネの今の表情は、自分の名前を聞いて馬鹿にされたから怒ってるのではなく、まるで、自分の名前に全く驚いてない玲を不審がっているように見えた。

「ど…どうしたんですか……アリアドネ…さん?」

「い、いや!な、なんでもない、んじゃ…」

 そういうとコロリと表情を変え、何事もなかったかのように淡々と話を進める。

「どうしたんです?何かあるなら言ってください」

「ま、まぁまぁ、そう慌てるでない、すぐそこに前にわしが立てたテントがあるんじゃよ、そこで話そうではないか」

 疑問に思いながらも玲はついていくことにした。


———数分後———


「さ、ここじゃよ」

 まさかのあの大木のすぐ近く、つまり、玲がまっすぐ進んできた道のほんの数メートル離れた場所に派手な桃色のアリアドネのテントはあった。なぜ気づかなかったのだろうか…少し後悔しながら誘導されるがままにテントの中に入る。

 すると、紅茶のいい匂いがした。

「座っておれ、今紅茶を入れるのでな」

 最初から思っていた、この少女は、どこか大人びている。あった時からそうだった。喋り方、仕草、何においてもどうしても少女とは思えないのである。

 そう思っていると、アリアドネはいい匂いのする紅茶を玲の前に丁寧に置き、玲の横に座る。

「あ、あの…」

「ん、なんじゃ?」

 アリアドネは紅茶をすすりながらこちらを見ずに聞き返す。

 玲はずっと気になっていた一つ目の疑問を聞くことにした。

「なんで、そんな上品な恰好をしているのに、こんな森にいるんですか……?」

「ぶほっっ!」

 アリアドネは予想だにしてなかった質問だったのか、紅茶を噴いてしまった。

 玲がアリアドネに近づくと、手をひらひらと振りながら助けはいらないと示した。

「あぁ、いや大丈夫じゃよ」

「まぁ、なんだ、長いお散歩とでも言っておくかの」

「それにしてもその格好でお散歩は……」

「べ、別にどんな格好でもいいじゃろ!なんじゃ?恰好差別か⁉かっさぎか!?」

 手をブンブン振りながら意味の分からない無理やりすぎる略語を言うあたり、やはり子供だなと玲は思った。

 少し息を整えて、コホンと一つ咳ばらいをした後、ティーカップを置き、アリアドネは真剣な顔つきになる。それはまるで、すべてを見通してるかのような、そんな強いオーラが一瞬アリアドネからは感じられた。

「してお主……本当にわしの名前を聞いても、何も思わんのじゃな?」

「え、それはどういう———」

「答えるのじゃ」

「———!」

 一瞬背筋が凍った。まるでものすごく上の立場の人から説教を受けているような、否、それよりも強い圧が玲を襲った。この少女は一体何者なのだろうか…そう思いながら先の問に答える。

「すいません…何も思いませんでした…」

 数秒の沈黙の後、アリアドネはパァと明るい表情に戻った。

「そうかそうか!ならよいのじゃよ!」

 ひたすらに玲の頭の中は疑問符で埋め尽くされるばかりだった。

 てっきり怒られるか、それとはまた別の仕打ちを受けるのかとかいろいろ考えていたのだが、この反応は予想外すぎた。

「あなたは一体…」

 思わず聞いてしまった。不思議な人すぎるからだ。見た目は子供なのに、話す仕草や、真剣な顔をしたアリアドネはまるで、大人のような、それもかなりの場数を踏んだ大人の気迫を感じられるのだ。しかし時として急に子供のような発言をしたりもする…本当に混乱が絶えない。

「ん~…」

 すこし腕を組んで考えたあとアリアドネはこちらに向き直り、口元に人差し指を当て、ウィンクをしながら口を開いた。

「おとなのおねえさん、じゃよ♪」

皆さんこんにちは!隠岐供契です!

今回の話も読んでくれてありがとうございます!

第三話、いかがでしたでしょうか??

よければ感想をコメントで教えてください!作者が飛んで喜びます!

「別界勇者」は毎週金曜日の20時投稿です!乞うご期待ください!!

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