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別界勇者  作者: 隠岐供契
第二章:それぞれの国
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第二十五話 葛藤

「あの、それで逆に陥れる方法……ってなんですか?」

 アルムの進行してくる度に蹴破られる扉の破壊音を聞きながら玲は未だ外を警戒しているシュシュに問い掛ける。

「はい、簡単に申しますと、相手が陥れようとしてくるその時を利用します」

「その時……?」

 どうやらシュシュはアルムが玲を陥れようとしてくるその時を伺っているようだが……一体それはいつなのだろうか。

「申し訳ありません、少し簡略化しすぎましたね」

 扉の外を見ていたシュシュはこちらに向き直り謝罪する。

「では詳しく説明いたします。実は協力者がいまして、その方というのは―――ッ!」

「見ぃつけたぁ~きひゃ!」

 シュシュが説明しているところをアルムがすでに空いている扉をさらに蹴り、破壊して入ってくる。

「チッ……!とにかくレイ様今は逃げます!」

 そう言うとすかさず玲の肩を持ち、シュシュの肩に回した。

「させるとでもぉ?」

 ニヤリと不敵な笑みを浮かべたアルムは人差し指を下に向け、詠唱する。

「斥力魔法・(ファンドル)~」

 言うと地面が先のリョウマと玲を追い詰めた時のように地面が割れ、裂け目がシュシュを襲う。

(シールド)……ッ!」

 片手を後ろに向け詠唱を終わらせたが、効かないのか、はたまた()()()()()のか、盾をすり抜け、そのまま胴体を切り裂かんとする裂け目は進んだ。

「なんッ―――!」

「シュシュさんすみません!」

 が、玲が咄嗟にシュシュに回されてた腕を解き、腰を蹴りよろけたことでフリルが少し裂けるに留まった。その代わり玲の足首が抉れ、血しぶきが舞う。

「ちぇ……」

「く……アァ……シュシュ……さん……」

「レイ様!」

 守られたシュシュは罪悪感でいっぱいになったのか涙を流しながら玲にかけよる。

「すいません!私の不注意で……本当に……!あぁ……!どうしたら……」

「いえ……うっ……大丈夫です……」

「動かないでください……ここはなんとか……」

「もう、いいですか」

 シュシュが立ち上がろうとしたその時、後ろからの重圧により、二人の一瞬が十秒に感じられた。

 いつの間にか背後に回っていた……しかしいつ?ここは書庫だ、しかも一番小さい部屋である。そうやすやすと背後に回ろうものならあの巨体だ、必ず視界に入るというものだ。

 だというのに二人とも気づかなかった。

 そう頭の中でシュシュが思考を繰り広げていたが、拳を振り上げているのを見て一時中断し、避けることに尽くす。

「ふん!」

「くっ……」

 振り下ろされた拳はあたかもそこに小隕石が落ちたのかと思わせるほどのクレーターができていた。

「ふむ、これを魔法無しで避けるか……」

「ふぅ……ふぅ……私、こう見えて身体能力は高いんです……のよ!」

 自負しながらもシュシュは黒いフードを被った大柄な男性の首元を狙い蹴る、が、やはりと言うべきかそれはアスファルトの壁を彷彿とさせるほどに頑丈で、動かなかった。

「それはいいことだが……ダメージを負わせられないようじゃ―――ッ!?」

 男の目には、勝ちを確証したシュシュの、不敵で、それでいて自身たっぷりの笑みを浮かべる顔が映し出され、その映像は消え、いつの間にか暗くなっていた。地面に倒れたのだ。

 それを激しい痛みが走った際、初めて理解した。

「ヒュナ!……貴様……なにをぉ……」

「わからないですか?『蹴った』のです。急所にでもあたったのですかねぇ?」

「ウソ……ですわぁ、あなたの蹴りは扉も破壊できないような……そんな蹴りなのにぃ……!」

 すると唐突にシュシュは膝を折り、玲の手当てをしようとする。

「今私がぁ!しゃべってるんですけどぉ!」

 アルムは倒れているヒュナを横目にシュシュに飛び掛かる。

「透魔法・幽玄の美(カシェーレ)

 シュシュはあたかもアルムが来ることを予想していたかのように手当てしていた手を止め、右手を地面に突く。

 するとアルムは「見えない」何かに下から突き上げられ、受け身もむなしく地に顔を付けた。

「そん……な、なん、ですこれぇ……!」

 吐血しながらシュシュに向かって叫ぶが、頭をやられたのだろう呂律が回らない。

「アルム・サウヴァー。私をかなり見くびっていたようですね?だてにメイドはやっておりませんので、少し、お休みになってください」

 シュシュはアルムにそう言い残すと玲に駆け寄る。

「申し訳ございません。私の『衝撃』のせいでまた血が……」

「い、いえ、助かりました……」

 シュシュが包帯を巻いていると、アルムが背後で体を震わせながらこちらを睨む。

「……まだ何か?」

「は、はは……シュシュ……いや、シュシュ・クレル……あんた、終わったわねぇ!き……ひゃひゃ……!」

「なんのことでしょう?」

「あんたも知ってるでしょ?そいつ……碓氷玲は咎人なの……今、介護してるそいつが!だから―――」

「だから、私も同罪……と?」

 重ねて来たシュシュに多少のイラつきを隠せないでいたが、その内容で一気に吹き飛び、意地悪な笑みを浮かべた。

「そうよ、そう!でももう遅いわぁ!きひゃひゃ!かはっ……あなたも同罪……あなたも―――」

「あなたの言い分はわかりました……ですが、私はカーロス国にお仕えするメイド、それにレイ様専属メイドです。王がこの者を咎としないのなら、私もしません。カーロス国の王が信じる者を信じれないで何がメイドですか。私はメイドのプライドにかけて……この者、ウスイ・レイを信じますので、心配なさらず」

 アルムは信じれないといった表情でシュシュの顔を見つめ、ふらつく足を踏ん張り、なんとか壁伝いに立ちあがる。

「きひゃ……どの道、他の国の方々はあなた方を咎人とするから、その覚悟、後悔するといいですわぁ……ヒュナ、もういいですわ、こっちに」

「……またいつの間に……!」

 アルムがヒュナに命ずると、また背後から姿を現した。

 先ほどまでそこに倒れていたというのに、一体どんな原理なのだろうか。

「……アルム、その方、ヒュナといいましたね」

「あぁ?なんですのぉ、バカにしようってなら……」

「……あなたにも、信じる従者(メイド)、いるじゃないですか」

 シュシュが立ち去るアルムを見て一言、静かに伝えた。

「ふん、なんですの?からかうなら他所でしてくださいます?ヒュナ、行きますわよ」

 アルムは後ろを向きながら照れ隠しなのだろうか、今だふらつく足に鞭を撃ち、(なるべく)足早に去っていった。ヒュナは一度こちらを見据えてから後を追う。

 背中を見守ったシュシュは今一度玲の足を治すため向き直る。

「雑談をしていまいました。申し訳ありません」

「い、いえ、でもなんで抵抗できたんですか……?」

 痛みに顔をしかめながらずっと抱いていた疑問を投げかける。

「少し私としても難しいのですが……そうですね、いわば私の魔法って、『なんでも見えなくする』といったもので、それは物体に限らず、触れることのできない先でいうと衝撃や、空気なども見えなく、つまり感じることもできなくできます」

 シュシュが丁寧に包帯を巻きながら淡々と答える。

「例えば暖炉って暖かいですよね?ですが私の透魔法をそれに利用すると暖かい温度がそこから『感じれなく』なるんです。しかし私がまた別の解除する魔法を利用すると、また暖かく感じれるようになり、今までそこに時間をかけて留まっていた熱が一気に放出されることにより、炎魔法と似た性能をだすことが可能です」

 玲が手当てをしているシュシュを見上げながら目を見開く。

「え、それってすごく強いのでは……?」

「ありがとうございます。ですが、そうでもないんです。先も言いましたが、これは時間をかけて初めて理にかなう魔法なので、突発的な戦闘にはめっぽう弱いんです……あ、これ誰にも言わないでくださいね?リョウマ様にも言ってないので……」

 確かに大きな弱点だ、でもなぜ僕には言ったんだろうか。

「では、先ほどの急にアルムが突き飛ばされてたのは何を……えっと、留まらせてたんですか?」

 シュシュは少し考えるとすぐに口を開く。

「あれは衝撃です。ほら、ここって宮殿の廊下ですよね、つまりたくさん人が通るんです。ですので、万が一ここが襲撃された時を見据えて、廊下には全て衝撃を留めておくようにしているんです。それを部分的に開放して、あのような現象になったということです」

 たくさんの人が通るにしても歩いた時の廊下に伝わる衝撃なんて微々たるものだろう、一体どれだけの時間溜めたのだろうか……

「疲れないんですか?」

「……え?」

「ほら、そんなに大きな範囲に使うと……」

 そんな心配な表情をされたシュシュは思わずプッと吹き出した。

「すいません、つい嬉しくって。えぇ、確かにたまに髪の毛が抜け落ちることはありますが、あまり魔力は使わないんです、衝撃を溜めるのはあくまで『地面に埋め込んだ魔力』ですから、最初に設定した時の魔力は草原の中の小さな砂粒程度で、微々たるものなのです」

 冗談まじりに答えると、よしと立ち上がり、手を差し伸べてくる。

「応急処置は終わりました。さ、ここは危険です。一旦リョウマ様と、協力者に合流しましょう」

 シュシュの手を取ると、少し痛みはするものの我慢して立ち上がり、シュシュは玲の腕を自分の肩に回させた。

「不幸中の幸いと言うべきでしょうか、綺麗に抉れていましたので、すぐに回復するでしょう」

「あぁ、ありがとうございます……あ、そうだ、その協力者って……」

 シュシュは思い出したかのように気まずそうな表情をしたが、すぐにいつもの真面目な表情に変わり、説明する。

「その協力者は、まぁレイ様もしっておられますスサノー・ルーデリアと、ヴィーヴル・シャルールです」

 それを聞いて玲は少し目を見開いた。それはそうだろう、ヴィーヴルはアルムの録音内で見損なった……と言っていたはずである。なのになぜ協力することになっているのだろうか……

「もし、録音の音声で困惑されているのでしたらそれは誤解、いえ、厳密には誤解ではないのですが……」

 一瞬内心を見透かされたような気がして驚いたが、すぐに肯定の意を示すように首を縦に振る。

「あれは……演技です」

「え、演技?」

 玲の反応を見て少し微笑み、はいと続けた。

「先も言った通り、私達は強制でなく、信頼しているので、我が国王を。だから、まず軽蔑などといった言葉は生まれないのですが……まぁ、演技とはいえ私も驚きました、あんなあっさり言ってるとは」

 失笑しながらもすぐに振り返り、進行方向を指さす。

「さ、そろそろリョウマ様ご一行も合流成された頃合いです。私たちも行きましょう」


「アリアドネ国のことも……ありますし」


「―――え?」


 一瞬、シュシュの言葉の意図がわからなかったがすぐにその言葉の意味が分かった、否、分かってしまった。

 アリアドネさんが、その一行が危険だと。

皆さんこんにちは!隠岐供契です!

今回の話も読んでくれてありがとうございます!

第二十五話、いかがでしたでしょうか??

よければコメントやブクマお願いします!してくれたら作者が飛んで喜びます!

「別界勇者」は毎週金曜日の20時投稿です!乞うご期待ください!!

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