表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
別界勇者  作者: 隠岐供契
第二章:それぞれの国
26/30

第二十四話 取引

 …………


 突然目の前が真っ暗になった。

 何が起こった。何もわからない。

 手を動かしてみる。感覚がないので動いているか、わからない。

 起き上がろうとしてみる。腰に力が入らず、びくともしないまま諦める。

「…………様!……ド……様!」

(何がどうなってわしはこんな状態に……?)

「起き……く……い!アリ……ネ様!」

(む……誰か叫んでおるの。騒がしい……わしはただ寝ているだけ……寝ている?わしが?なぜ……)

「無駄だよ~」

(オリヴィアとシャリオン以外の声も聞こえるの。一体誰じゃ……新しいメイドか……?)

「だって、そいつの頭、血だらけになっちゃったもんね~」

「やめないか、ゲノ。遺族に失礼だろう」

(遺族?誰が?そしてまた一人知らない人物が出てきたの……全く……騒がしいったらありゃしない……)

「そんなのわからないじゃないですか!アリアドネ様!起きてください!頑張って……」

(オリヴィアはなぜこうも焦っているのか……何か起きなければならない用事などあっただろうか……確か玲と会って……シャリオンに襲撃され……死の夢(モール・レーヴ)が始まり……リョウマに助けてもらったこともあったの……して……今は何を……してたかの…………思い出せぬ……)

(体が重いな……不自由な体じゃの、全く……)

「頑張って……生きて……ください……」

(生きて……?わしに言っとるのか?老いてると言いたいのか?オリヴィアもそんな冗談を言うようになったのか……?あとで叱らねばの……)


 今までなかったと思っていた手に、とある感触が伝わる。

 それは紛れもなく、涙であった。


(オリヴィア……なぜ泣く……冗談もここまでくるともはや劇の演者じゃの……どれ、これ以上うるさくされても敵わん。起きる……起き……あれ、おかしいな、目も開けれん……ぐぬぬ、脳は起きておるんじゃが……いっちょ眠気の悪魔に抗うか……の!)


「か……ひゅ…………」

「アリアドネ様!?お兄様!アリアドネ様が!」

「本当か!アリアドネ様!聞こえますか!?シャリオンです!」

 アリアドネが目を開けた……とは言い難いほど微かに目を開けると、アリアドネは右目が見えないことに気付く。


(あれ、なぜ右側が……それに視界も……)


 アリアドネができるだけ周りを見ようと左の眼球を上下左右に運動させ、再び空を、虚空を見つめた。


(あぁ、そうじゃった……わし、やられたんじゃった……道理で……動かんわけじゃな……息も……できん…………)


 オリヴィアがすすり泣き、握るアリアドネの手は血で染まっており、右目は潰れ、おそらく頭蓋骨がぐちゃぐちゃなのだろう、頭もなんとか原形をとどめてはいるものの凸凹に抉れ、赤黒い血の海が止めどなくアリアドネの体に沿って流れていた。

 オリヴィアは自らの手、服が血で汚れても構わずアリアドネの手を握り、額に当てていた。

「わぁ、すごい血だねぇ、我ながらやりすぎたかなぁ?」

「あなたは、黙っててください……!」

「怖いねぇ?」

 アリアドネをこうしからしめた張本人であるゲノ・スケローイはその姿を見るなり何度も、何度もケタケタと笑って見せた。

 オリヴィアも耐えられず、怒りの暴走を何とか抑えながら、握る手はやさしく保ったまま、鋭い目でゲノを睨みつける。

「ねぇねぇそうかっかしないでさぁ―――」

「炎魔法・太陽(ソーレ)……」

 シャリオンはそれでも近付こうとするゲノに静かな詠唱をし、魔法を放った。

「おっとあぶないなぁ」

 が、その炎はゲノの()によって払いのけられた。

「お前ら、いい加減にしろよ……何が目的だ……!」

「はぁ……」

 ゲノは小さな溜息をつくと、アリアドネを襲った時のように小さく地を蹴り、瞬時にシャリオンの鼻の先まで近づき、顔を覆うように手を構える。

「だぁかぁらぁさぁ!『真の平和』を作るって言ってるじゃんかぁ!」

「くっ……(シールド)!」

「おっと……防ぐか……」

 ゲノは防ごうと盾を顕現したシャリオンを見て、一歩後ろに下がった。

「……えいっ」

 そしてすぐに状態を低くし、足を薙ぎ払うように上体を捻り素早く回し蹴りをした。

「うっ……!」

 シャリオンはそれを見て素早く上に飛ぶが、微かに当たり、苦悶の表情を浮かべる。

「くそ、ちょっと当たっただけだってのに……血が……」

「ふふん~びびったでしょ~?」

 ゲノが自慢気に腰に手を当て背中をそらした瞬間、その後ろからロコが膝をついているシャリオンに追い打ちをかけまいと飛びあがり拳を握る。

「く……盾……!なっ―――」

 一瞬、ロコの口元がにやけた気がした。それは余裕でもあり、知られたことによる喜びであったのかもしれない。

 ロコの拳はシャリオンの盾を貫通し、真っ直ぐ頭目掛けて振り下ろされる。

「お兄様!風魔法・(ランス)!」

 のはずだった。

 オリヴィアが放った槍がロコの脇腹に当たり、抉る。

 一直線だった拳のラインは見事逸れ、シャリオンの肩をかすめる。

「くそ……まぁよかろう」

 ロコはそういいながら再びゲノの方へと歩み寄る。

「お兄様!大丈夫ですか!?血が……」

「あぁ、大丈夫だ……このぐらい……でもなんだ、何かが……」

 何か違和感に気づくシャリオンはかすめた肩と足を見つめながらその原因を考える。

「お、お兄様?どうされました?」

「え、あぁ、いや、何か変というか、違和感?があってだな……」

 何か思いつめるシャリオン達を見てゲノはまた笑いだす。

「ははは!あれ?もしかして気づいちゃいましたか?ははは!遅いねぇ?」

「ゲノ、あまり言い過ぎるなよ」

「わかってるってぇ」

 ゲノはそういいつつ、こちらと目線を合わせるべく膝をおり、シャリオンの顔を嘗め回すように見てから口を開く。

「うんうん、効いてるみたいだね~」

「あなた、お兄様に何を―――」

 オリヴィアが言いかけると、素早くゲノの指がオリヴィアの口の前に来た。

「しーーーだよ?」

「オリヴィア、従え」

「……はい」

 シャリオンは危機を察知し、オリヴィアを宥める。

 オリヴィアが黙ったことを確認したゲノはうんうんと納得したように頷き、コホンと咳払いした後説明を始めた。

「何も知らないで死ぬのはかわいそうだからさぁ?一個だけ、その違和感について教えてあげるね~」

「やはり何か仕込んであったのか……!」

 シャリオンがそう言うとまぁまぁと宥めるようにゲノは手のひらをひらひらとさせ、意地悪な笑みを浮かべながら続ける。

「察しがいいねぇ?そうだよ、それは……まぁいわば「毒」?って言ったらいいのかなぁ」

「おいゲノ!」

 ヒントを与えたゲノにロコがすかさずゲノの肩を掴み静止させる。

「いいじゃんこのぐらい~どうせ死ぬんだしさ?」

「それはそうだが……アルムの言いつけはどうする……」

 アルムという言葉を聞き、オリヴィアが反応する。

「アルム……?アルムってまさか!あの―――くっ……!」

 言いかけたところでゲノが目の前の景色から消えていることに気付く。

 そして咄嗟に振り替えると、そこにはゲノの掌が目の前を覆っていた。

「炎魔法・五つの刃(サンク・ラム)!」

「おっと?」

 シャリオンが寸前のところで魔法を撃ち、なんとか九死に一生を得たが、頬を大胆にかすめてしまった。

「オリヴィア!大丈夫か?血が……」

「はい……大丈夫です……」

 シャリオンがオリヴィアの頬の傷を見て憤りを感じたが、今は抑えることにした。

「ゲノ、もういいだろう、最後のチャンスを与えるんだ」

「あぁ、はいはい、もうメンドクサイな~」

 言いながらゲノがこちらに歩み寄ってくる。

「なんだ……」

 シャリオンが自分の脇腹の傷には目もくれず、負傷したオリヴィアを庇うように少しよろけながら前に出る。

「そう警戒しないでよ~言ったでしょ?最後のチャンスを与えるって。不本意だけどさ、これがこの襲撃の目的なんだよね~」

 少しめんどくさそうな顔をした後、再度にやりと笑い、シャリオンの肩に手を乗せた。

 シャリオンの後ろでオリヴィアがお兄様と叫んでいるが一旦無視をする。

「アリアドネ国第三王子シャリオン・グレイス氏に取引をお願いしたく……」

 シャリオンは突然の丁寧な言い方に一瞬驚きはするものの、すぐに警戒の表情に戻る。

「…………」

 ゲノは一瞬の間を開け、ゆっくりと目を開ける。


「私共のこの襲撃行為を、見逃してはくれないでしょうかねぇ……」



―――カーロス国城内―――


「はぁ……だ、大丈夫ですか?すいません、雑な運び方をしてしまい……」

 アルムから玲を逃がすため、シュシュは玲と共に書庫に逃げ込み、周りを確認し誰もいないことがわかったところでようやく玲の体を床に寝かす。

「かはっ……はぁ、は、はい、大丈夫です……」

 アルムにより透過されていた間、シュシュによる応急処置で玲の意識はなんとか現実に引き戻された。

「あいつは……アルム……って一体……」

「アルム・サウヴァー……食の象徴(モルドゥル・シンボル)サウヴァー国王女です。今日ここにいらしたのはおそらく連国会議があったからでしょう」

 淡々と説明するアルムを見て一つの疑問が頭をよぎる。

「あ、あの、アルムは、その、シュシュも軽蔑してる……とかなんとか……」

 それを聞くと意外な表情で玲を見つめる。

「あら、私、そんなこと一度も言っていませんよ?もしあの時の表情でそう思ったなら、アルムはとんだ勘違い人なのですね」

「はは……そうなん……ですかね」

 微笑を浮かべると、シュシュもつられて微笑む。

 そんな雑談をしていると、どこからか大きな破壊音がした。おそらくドアを蹴破っているのだろう。

「玲く~ん?どこ~?」

「レイ様、隠れてください」

 シュシュもアルムが近づいてきていることに気付き、玲を守るように咄嗟に体の前に腕を差し出した。

 アルムの足音と破壊音が近付いてきているのを聞きながら、シュシュは振り返り玲に向き直る。

「レイ様、思ったより時間がありませんので一回しかいいませんがよく聞いてください」

「はい……」

 玲も同様に寝転んだまま、シュシュの顔を見る。

 それを見たシュシュは頷き、一度咳払いをした後口を開く。

「では説明いたします。レイ様を陥れようとしているアルム……アルム・サウヴァーその人を、逆に陥れる作戦を」

皆さんこんにちは!隠岐供契です!

今回の話も読んでくれてありがとうございます!

第二十四話、いかがでしたでしょうか??

よければコメントやブクマお願いします!してくれたら作者が飛んで喜びます!

「別界勇者」は毎週金曜日の20時投稿です!乞うご期待ください!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ