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別界勇者  作者: 隠岐供契
第二章:それぞれの国
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第二十二話 消耗戦

「無力化……なんだそれ……」

 リョウマが玲を守るようにして一歩前に出る。

「わっからないんですかぁ?学がないとは聞いておりましたけど……これほどとはぁ」

「そういう意味じゃ……」

 言いかけたところでアルムはリョウマ同様一歩前に、それも思い一歩を踏み出し、リョウマの顔間近に迫り、余裕の笑みで語る。

「つまり殺すってことですわ」

「くっ……」

 リョウマは玲の手を引き後ろに後退する。

「なにが起こって……」

「やられた……説明はむずいが、スポーツでいうところの『ドーピング』だ」

「え……」

 玲が困惑しているのを確認したリョウマは構わず続ける。

「先の高威力魔法、ありゃお前の力じゃねぇ、あいつらの仕業だ」

 後退したリョウマ達を見つめながら徐々にアルムは距離を詰めてくる。

「なにを話しているのかしら?ま、どうでもいいですわっ……!」

 アルムは地面を蹴り、音速を超える速さでリョウマ、否玲を凝視し拳を構える。

「玲!にげっ……」

「遅い……!」

 リョウマが玲を突き飛ばそうとしたが遅かった。

 既にアルムの拳は玲の脇腹にめり込み、その勢いのまま吹き飛ばされる。

「ぐはっ……」

 玲がうずくまっているとさらに笑みを増したアルムがゆっくりと歩いてくる。

 アルムは玲の足先まで近づいてくると膝を折り、顔を耳元まで持ってくる。

「今のあなた、最高に素敵……いや、おいしそう……」

「桜まほっ……ぐはっ!」

「だぁかぁらぁ!それは禁止だって言ってんですわよ?」

 近づいてきた隙を見て玲が再び魔法を唱えようとしたが、アルムの長い爪が肩を貫いていた。

「玲!……っ貴様!」

 リョウマが魔法を唱えるべく魔剣を抜き、斬りかかるとアルムは安全策をとり後ろへジャンプし後退する。

「あら危ない」

「貴様……今の行為こそ、罪なんじゃないのか」

 アルムはそれを聞くなりわざとらしく耳に手をあて聞こえないふりをした。

「なんといいまして?罪……と聞こえましたが……」

「ああそうだ、魔法条文第九条『いかなる場面においても過剰な物理、又は魔法攻撃を禁ずる』……お前こそ学がないんじゃないのか?ん?」

 そう言われアルムは少し微笑む。

「何がおかしい」

「周りをごらんなさい」

 リョウマはそれに従い中庭を囲む建物の窓には今まで気づかなかったのが不思議なぐらい人がひしめき合っていた。

 その視線はどれも玲たちに向けられ、悪者を見るかのような目つきであった。

「周りのお客様は……罪と、思ってらっしゃるのでしょうか……?」

「なんで……」

「先ほども言いましたよね?デッドラインを超えたものは最天災魔法使いとみなし無力化する……」

 リョウマは周りの目を気にしながらも警戒を続ける。

「確かにさっきの玲の魔法は凄まじかった……が、デッドラインには抵触していないはずだ」

 するとアルムは呆れたように溜息をつき、リョウマと一定の距離を保ちながら歩き出し、それに続いてリョウマも歩き出す。

「四百……ですわよぉ?先ほどの魔法は……明らかに……五百は超えておりましてよぉ?」

「そんな数値があり得るのか?あいつは魔法もろくに使えないんだぞ?しかもその数値ってのはこの国自体のシステムが計測し、過剰な魔力量が出ればエラーが出る。そういう仕組みだったはずだ。まさかとは思わんが憶測で無力化しようとか考えてるんじゃないだろうな」

「ながったらしい説明ご苦労様……っと……」

 アルムは歩くのをやめ、思いっきり伸びをする。

「あなた……そういえば会議に出席、されていませんでしたわよね?」

 そういいながらアルムが何かをリョウマに投げ渡す。

 小さな端末だ。それも耳にはめる……イヤホンのようなものだ。

「耳に、さしてごらんなさいな~」

 指示に従いそれを耳にさすと、視界の右端に小さな数値が書いていた。今はゼロとしか書いていない。

「そこに、数値が見えますわよね?それが魔力量ですわ。便利になったものですわよねぇ?今やシステムとかいう意味わからんものに頼らずとも、その端末を使えば一瞬で数値が見えるんですからぁ」

 急いで周りを見渡すと周りにいる人達もみな同じような端末を耳にはめていた。

「こんなのいつ……」

「私たち独自で開発したものですわ。それを今回の連国会議で発表し、試用ということで皆様にも使ってもらったですが……」

 アルムが一瞬で右腕を抑え、リョウマの後ろに隠れている玲の背後に移動し、囁くように伝える。

「まさか、()()()()基準を超える魔力量が検知されるなんて……きひゃひゃっ、そんな偶然……あるんですわね☆」

「で、でもかといってまだ試用なんだろ?システム側の数値なんか……」

「それはあらかじめシステムを一時的に試用するにあたって邪魔なのでその時はオフにしてもらってました~」

「なら……」

「でも効果はぜっつだぁい♡」

 いじわるな顔をしながらアルムは低い声でそう言う。

「証拠?そんなの関係ないですわぁ……そんなのなくとも、人という愚かな動物は、目の前の数値を信じるんですもの……」

 アルムは数歩下がり、未だ中庭を見物している面々に向かって両手を広げ、高らかに宣言する。

「私、アルム・サウヴァーは秩序安定のためにぃ!今一度、ここに碓氷玲の無力化を宣言いたしますっ!」

 すると瞬く間に拍手が起きる。

 アルムは振り返り、負傷している玲と、それを守るリョウマを見る。

 そしてもう一度振り返り、わざとらしく大声で叫ぶ。

「あれれ!おかしいですわ!あのカーロス国の王子ともあろうお方が!咎人をかばってますわ!」

「なっ……」

 それに合わせるように周囲の人たちも疑念の目つきになり、ガヤガヤと騒がしくなる。



「やはりおかしいと思っていたんだ……毎年ろくに参加もしないから……」


                            「私もいつもおかしいと思ってました」


      「それよりも早く駆除、してくれよ……」


                            「最天災魔法使いを早く殺して!」


  「王子だってのに咎人を庇うのか……!」



 リョウマは皆がアルムの一言で一気に変わりゆく状況に血の気が引いていった。

「ち、ちがう!数値がおかしいんだって!」

「きひ、きゃはは、きゃははははははははは!」

「何がおかしい!何が目的だ!」

「いやいや、すみませんねぇ、つい……では……」

 一頻り笑った後、バッと勢いよく手を上に掲げ、大きく息を吸い込む。


「斥力魔法……(ファンドル)ッ!」


 そう高らかに叫ぶと、地面が瞬く間に裂けていく。

 それは二人に近づくにつれ、徐々にスピードを増していく。

「おいおいおいおいおい!くそっ!」

「なんなんですかあれ!」

 二人は必死にその()()()を避け、それが通り過ぎた建物の壁には玲が出した魔法よりもさらに大きな切れ目ができており、そこを起点に周りの窓が割れた。

「わからん!が、見えない斬撃……違うな……なんなんだこれは……いやそれよりも……」

「逃げてもむぅーだ♡」

 再度アルムが手を二人の方へ掲げ、叫ぶ。

「裂!からの~裂!またまた~!」

 魔法をこれでもかと使うアルムからなんとか逃げつつ、リョウマは魔法の分析をする。

 二人の背後の建物はもうほとんど跡形も残っておらず、見物に来ていた各国のお偉方も逃げて行った。

「え~もっと見ていきなよ~」

 アルムが周囲の人々が去って行く姿に不満を覚えつつ、魔法を出す手はやめない。

「ふぅ、ふぅ……いいか玲」

「なんでしょう」

「二手に分かれるぞ。魔法ってのは威力が高いほど体の負担がかかる、それを利用する……これは……」

「消耗戦……ですね」

「……」

 先に言われリョウマは少し不満を抱いたがすぐに頷き、今まで逃げていた方向と反対に足を曲げ、一気に走る。

「うにゃ?二手……ですか」

「アルムとか言ったな!お前のその魔法こそデッドライン超してるんじゃねーのか?」

「お気遣いかんしゃしまぁす!」

 アルムは両手をバッと広げ、にやりと笑みを浮かべる。

「まさか……」

「私の体が小さいからってなめんじゃねぇですわぁああ!斥力魔法!畏怖させる壁(エクスピュルセ)!」

 アルムがそう叫ぶと、なにか見えない()()()()()()()が迫ってくる()()がした。

 咄嗟に二人共魔剣を抜き防御の姿勢をとるが、その()は恐ろしく大きく、両者の距離がさらに引き剝がされ、左右の壁に激突する。

「こいつは……やばいな……」

「どう……すれば……」

 苦悶の表情を浮かべていると、またもや一瞬で移動し、リョウマの目の前まで来る。

「リョウマくぅん。あっち、見てみなよ」

 言われた方向を見ると、そこには心配そうに見ているシュシュの姿があった。

「シュシュ……がどうした」

「あの子ねぇ?可哀そうなの。だってぇ、ずっと仕えてた王子様が、咎人を庇うんですもの~、信用だって失ったってぇ。ねぇねぇ、どうするぅ?」

「そんな……わけないだろう……」

 リョウマは確認を取るようにシュシュの方を見やる。

 するとシュシュは、居心地悪そうな苦い表情になり、目を背けた。

「なっ……うそ……だろ」

「き……ひゃひゃ!きゃは!きゃははは!信用って面白ぉい!こんなにも簡単に堕ちるんですものぉ」

 狂ったように身を捩り、頬を手のひらでなぞるようにして恍惚な表情を浮かべる。

「そんなはずない!ヴィーヴルはどうなんだ!あいつなら……」

 待ってましたと言わんばかりに表情を絶やすことなく、さっきのイヤホンとはまた違う端末を渡してきた。

「録音再生~」

 アルムが再生ボタンを押すと、数秒後何者かの声がした。

『……あのリョウマ様が……咎人を庇うなんて……見損ないました』

「ハイ終わり~あ、でもそんなに落ち込まないでぇ?これは至極当然の事でぇ……」

 アルムが背後に迫ってくる何かを人差し指でちょんと押し返すと、その場で爆ぜた。

 後ろで玲が魔剣を抜いて息を漏らしている。おそらく玲が撃った魔法だろう。

「みんなが食事をすることぐらい……当然なんですよって言おうとしたのにぃ……」

 少しイラっとした表情が垣間見えたが、すぐに笑顔に戻り、リョウマに詰め寄る。

「あんなこと言われてたけどぉ、まだ君にはチャンスがあるのでぇす……」

「なんだ……」

 リョウマはじりじりと迫ってくるアルムに比例して後ろに下がるが、すぐ後ろは先ほどのアルムの魔法で吹き飛ばされた衝撃によって抉れた壁があり、背中がついてしまう。

「そ、れ、はぁ~」

 アルムは体をリョウマに密着させ、耳元に唇を持ってきて囁く。



碓氷玲(咎人)をここじゃなくって……処刑場(フィオン)でぇ……殺すの♡」

皆さんこんにちは!隠岐供契です!

今回の話も読んでくれてありがとうございます!

第二十二話、いかがでしたでしょうか??

よければコメントやブクマお願いします!してくれたら作者が飛んで喜びます!

「別界勇者」は毎週金曜日の20時投稿です!乞うご期待ください!!

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