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別界勇者  作者: 隠岐供契
第一章完結記念:幕間
16/23

第一章完結記念:幕間 Mild season(前編)

こちらは第一章完結記念の幕間になります。

多少一章の内容も含みますが、一章を読んでいない方でも楽しめる話となっていますので、ぜひ最後まで読んでいただけると幸いです!

二章で新たに出てくるキャラも含んでいますので、今後どんな展開になるかを予想しながら楽しむのも一つかもしれません!

「ん、ん~……はぁ、気持ちのいい朝ですわね」

 女性は自室のベッドから見える外の景色に見惚れながらやはり寝起きだからだろう、その重い腰を上げ、自室を後にする。

「今日の朝食は何でしょうか……昨日のシチューは格別でしたから、またシチューがいいですわね」

 女性は今日の朝食メニューを予想しながら長い廊下を歩く。

「……あら?」

 女性が我々のために並べてくれたのであろう縦長の机の上座の隣に座る。

 しかしまだ誰も来ていなかったのである。

「今頃お兄様なら速攻この場にいらっしゃるはずですのに……どうしたんでしょう」

 そこで少し嫌な予感が女性の脳によぎる。

「まさか……」

 女性は席から立ちあがり、シェフに後でと簡単に伝え、とある場所に速足で行く。

「……!やっぱり!お兄様!」

 呼ぶと、男性が振り返る。その顔は少し涙ぐんでいた。

「お兄様!また迷ってたんですか?」

「うぅ、ごめんよ……だってこの城、無茶苦茶広いんだもん……仕方ねーじゃん……」

(こんな人がお兄様だなんて……妹として恥ずかしいです)

「はぁ、では行きましょうか……」

「あ、ありがとう……」

 はたから見ればただの仲のいい兄弟のじゃれ合いに見えるだろうが、女性からしたらもうこりごりであった。

 それはそうだ、お兄様がまだ幼いかわいらしい子供ならまだしも、この人はもう十八なのだ。いい加減食卓の行き方ぐらい覚えてほしいものだ。

「いいですか?もうあなたはいい大人なのですから、もうそろそろ覚えてくださいね?」

「わかってるよ……」

 そうこうしてる間に食卓に着いてしまった。その時間約二分。どれほど近いか、この時間でわかるだろう。

 ちなみにお兄様の部屋から食卓への道順はというと、扉を出て、右にまっすぐ進み、最初の角を左に曲がれば大きな扉が見える。そう、それが食卓なのだ。

 そんな簡単な場所にあるというのになぜ数十年この城で暮らしてきて覚えられないのだろうか。

 女性は少し呆れながら先ほど簡単に事情を説明した執事に軽くおまたせと会釈し、シェフに合図を送る。

「はぁ、では、お座りくださいお兄様」

「どうも……」

 お兄様は女性の向かい側に座る。

 程なくして、食事を乗せたカートを押したメイドが近くまで来て、丁寧なお辞儀をする。

「では、オリヴィア・グレイス様、並びにシャリオン・グレイス様、本日アリアドネ・アイゼア様はご欠席との連絡がございましたので、早速始めさせていただきます」

 オリヴィアと呼ばれたのが、今まで話していた女性で、第三王女候補でもある。そして、言わずもがなシャリオンと呼ばれた人が、このお兄様である。こう見えてもこの国の第二王子なのだ。

 そして、今日欠席のアリアドネ・アイゼアという人物は、この城の、この国の王女である。しかも初代ときた。このアリアドネという人物は何の原因でその体になったのかわからないが、まぁ簡単に言うと突然見た目が子供になってオリヴィア達の前に姿を現したのだ。中身は……まぁ、100年以上前の国の初代王女をまだ受け持っているのだ、大体予想つくだろう。どこかの蝶ネクタイで声を変えて事件を解決する男の子を連想させられるが、全くの別人なので気にしないように。

「え!あのアリアドネ様が欠席!?」

 オリヴィアが突然立ち上がり、メイドに問う。

「は、はい、確かに珍しいのですが、今日は忙しい……とおっしゃられてましたので……」

 するとシャリオンが横から割り込むように口を開く。

「まぁ、あの方も()()()()忙しい時ぐらいあるだろ、なんでそんなに驚くんだ?」

 確かにそうだ、そうなのだが……

「し、しかし、あのアリアドネ様が朝食をスキップされるなんて……」

 そう、アリアドネという人物はいつもオリヴィア達よりも早く席に着き、子供のように(まぁ見た目は完全に子供なのだが)フォークとナイフを両手に持ち、王女とは思えないぐらい朝食を楽しみにしていたのだ。欠席をして驚くのも無理はない。

「……まぁ、言っても仕方ありませんわね、ヴォレット、すみません中断させてしまって」

「いえ、お気になさらず」

 ヴォレット、本名ヴォレット・ボー・オワゾニア。先ほどアリアドネの欠席を伝えた若き女性メイドで、二か月ほど前に雇われた新人メイドである。

 ちなみに前のメイドはというと、アリアドネの好き嫌いが多すぎて怒ってやめてしまったのだそう。

「では改めて、オリヴィア様、シャリオン様、本日の朝食をご紹介いたします」

 それを合図に三名のシェフがヴォレットの後ろに並ぶ。

「まずはパンにレアえびを乗せ、周りをチーズで囲ったものをそのままオーブンで焼いたカニヤタンでございます」

「おお、今日は()()のえびか!うまそうだな~」

「はい、かなり数は減っていたものの、数匹ですが仕入れることができました」

 この星は昔からやけにチキュウと呼ばれる食べ物や、食材を好む。理由は定かではないが、風の噂ではチキュウの食べ物の方がこの星で作れる食べ物より何百倍もおいしいからだと聞いたことがある。

 だが、無くなったチキュウの食材なんて当時ならまだしも、何百年と経っている今手に入れるなんて夢のまた夢である。なのでこうして現在は人工で魚や、植物、野菜を作る技術を使って人々はおいしく食事をとることができるのだそう。

 まぁ、クオリティは低いものもあれば、高いものがあるので、価格がつけにくいというのが難点である。

「昨日のはジェラルシータケのスープでしたからね。あれもかなりおいしかったのですが……今回のはどんな味なんでしょう」

 そう、先ほどのクオリティの違いを何とかして明確にしようと試みたのが、ジェラルやレアなどのレアリティと呼ばれるもので判断している。一番良いものから順に、トワール、ルミナ、レア、ジェラル、コルモ、スマルとなっている。もちろんこれにより価格も大きく変わる。スマルが一だとすると、トワールは五百倍ぐらいの価格がつく。それほどトワールは貴重性が高く、事実このアリアドネ国の王子、王女ともに人生で一度しか口にしたことがない。

「さ、冷めないうちにどうぞ召し上がってください」

「では……」

 シャリオンとオリヴィアが両手を合わせ、祈りをささげる。

「この地で生まれた食よ、今この場で食せることに感謝します」

 短い祈りを終え、オリヴィアがゆっくりと目を開けると、シャリオンが真っ先にパンに食らいついていた。

「はぁ……お兄様、はしたないですよ……」

「いんだよ!なんならこの食べ方の方がうまそうでいいんだぜ!?な!」

「え!?えぇ、と、ん……」

 突然目を向けられたヴォレットは気まずそうにオリヴィアに目を向け密かな助けを求める。

「はぁ、お兄様……新人を困らせないでください」

 少し睨みながらシャリオンの方を見ると、その視線に気づいたのかシャリオンがすぐに黙り、黙々と食を進める。

 あきれながらもオリヴィアはそのカニヤタンの香ばしさにまだ食してもないのにもう頬がとろけそうだったので手に取り、丁寧にサクッと落ち葉を踏んだような音を奏でる。

 レアえびの焼かれた匂いと、チーズ特有の匂いがベストマッチしており、レアでもここまでおいしさを引き出すことができるのかと感心しながら、その味を楽しむ。


「いや~うまかったな~レアが食えるなんて思ってもみなかったぜ」

「ですね」

 朝食が終わり、片付けをメイドに任せ部屋を後にしたシャリオンがオリヴィアに話しかけるが、なにかおかしいと気づく。

「なぁ、オリヴィア~なんでそんなに冷たいんだ?」

「別に冷たくないです」

「なんでだよ~理由は?」

 すると突然オリヴィアが立ち止まる。

「わからないんですか?」

「え?えぇと、メイドを困らせたこと……か?」

 オリヴィアが一歩前に出て、シャリオンに近づく。

「そうです!あなた、前のメイドも、その前のメイドにもあの態度でしたよね!その度に私、注意してますよね!」

 気まずそうに頬をポリポリと搔きながら答える。

「う、す、すまん……それは……い、いやでも俺も悪気はないんだぜ?」

「じゃあなんです」

「ほ、ほら、楽しませようと……したというか……」

 その答えに呆れたのか、オリヴィアは深いため息をつき、そそくさと歩いて行ってしまう。

「お、おい!まてよ……悪かったよ……な?」

 なんとかオリヴィアに追い付こうと試みるが、一瞬シャリオンの目を見るだけで、すぐに顔を背けるだけで、自分の部屋に入っていってしまった。

「……あんなに怒んなくても……ま、俺が悪いのはわかってっけどよ……」

 シャリオンはオリヴィアとの会話を一旦諦め、自分も自室に戻り、資料の整理でもしてメイドにどう謝ろうか考えることにした。


 オリヴィアは自室のベッドで横になり、細長い枕を抱きしめながら考えていた。

「……言い過ぎたでしょうか……い、いいえ!お兄様にはあれぐらい言わないと……ですよね?パフェン?」

 そう話しかけている相手は枕であった。所謂ゆるキャラというものだろう。巷で今人気といわれているなんともかわいいとは言いにくいデザインをした猫のような熊のような見た目のキャラクターである。

 今抱きかかえているのがオリヴィアの一番のお気に入りの抱き枕なのだそう。困ったときや、心配事が起きると、いつもこうして一人で自室にこもり、この抱き枕を抱えていた。

 本人はもう忘れているかもしれないが、この抱き枕は、昔五歳の時に王女候補になったお祝いとしてシャリオンからプレゼントしてもらったものだ。

「一旦頭を冷やすべきです……」

 オリヴィアが抱き枕に顔を埋め、もうすぐで寝落ちしそうになった時、外からドタドタとあわただしい音がしたので、すぐに起きてしまった。

 その音は部屋の前で止まり、ドンドンと扉を何者かが叩く。

「……お兄様ですか?それなら今は話す気はありませんので!引き返して……」

「オリヴィア様、ヴォレットでございます。一つ、よろしいでしょうか?」

 扉を開けると、そこには申し訳なさそうにしているヴォレットがいた。

「どう、しました?あ、中にどうぞ?」

「すいません……」

 部屋の真ん中にある丸い机を二人で囲み、オリヴィアがレアコーヒーを出す。

「あ、そんな……私が用意いたしましたのに……」

「ふふ、いいんですよ、今のあなたは私の客人なわけですから」

 レアコーヒーの熱さを感じながらヴォレットとオリヴィアの席の前に置く。

「お砂糖は?」

「大丈夫です。ありがとうございます」

 一応使うかもしれないと思い、机の真ん中に砂糖の入ったカップを置く。

「……それで、えっと、お兄様のことですよね?」

 それを聞いてゆっくりと首を縦に振る。

 やっぱりとオリヴィアは素早く謝罪をした。

「私のお兄様が本当にごめんなさい……」

「あ!い、いえ!そういうことではないんです……」

 思ってた回答と違い、オリヴィアは疑問の顔を作らざるを得なかった。

「えっと……では、どうしてここに……?」

 当然シャリオンのことで相談を持ち掛けられたとばかり思っていたので、本当の理由は何かと尋ねる。

「えっと……ですね……実は……」

「……?」

 おかしい。オリヴィアは真っ先にそう思った。なぜならあのいつも凛々しい顔つきで、何に対しても従順にことを済ませるあのヴォレットが、今は乙女の顔になっていたのだ。

 まるで、誰かに恋をしているかのような、そんな顔に。

「まさか……」

 その意図を察したのか、ヴォレットはどんどん顔が赤くなっていく。まるで別人みたいだった。


「はい……私……シャ……シャリオン様のことを……その、好いていまして……」


 オリヴィアは頭が真っ白になった。


皆さんこんにちは!隠岐供契です!

今回の話も読んでくれてありがとうございます!

Mild season・1、いかがでしたでしょうか??

本当は一話で完結させる予定だったのですが、あまりにも長くなってしまいましたので、二話にわけることにしました。

※二話目は少し長くなるかもです。


よければコメントやブクマお願いします!してくれたら作者が飛んで喜びます!

「別界勇者」は毎週金曜日の20時投稿です!乞うご期待ください!!

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