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別界勇者  作者: 隠岐供契
第一章:森
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第十二話 匂いに釣られた者

 シャリオン、玲、アリアドネのオリヴィアを除く三名が、オリヴィアの言葉により頭を悩ませていた。

「うむ……桜……か、聞いたことない魔法じゃの」

 アリアドネが床で横になりながら顎に手を当て考える素振りをする。

 先の生まれる者(ナートル)の親玉との戦いで見事勝利を収めたものの、アリアドネ自身の魔力もそれと同時に底をつき気絶してしまい、今オリヴィアの介護のかいもあって立ち上がれずともこうして普通に会話ができているのである。

「桜といえば……そうだ、歴史書で見た限りじゃと、ニホンの木?じゃったような……レイ、違うか?」

 突然の質問を投げかけられ少し戸惑いはしたものの、すぐにその問いに頷く。

「あ、えぇ、そうですよ、日本の象徴といっても過言ではないです……あ、今は、過言ではなかった……の方がいいですかね……」

「……」

 そういうとこの避難した洞窟内の空気が一瞬重くなったのがわかった。

「その……すまんの、思い出させてしまったかの?」

 アリアドネがそういうと玲はすぐに横に振り否定しようとアリアドネの方を見ると、何故かまたそのまだ自由ではない体を起こし、鼻をつまもうとして来ていた。一体この行動にどのような意味があるのだろう。

 聞いてもまた顔を赤くして話をそらされるだけなのでやめることにした。

「こちらこそすいません……変なこと言ってしまいました」

「……いや、おめーが謝ることじゃねーよ、おめーはどっちかっていうと被害者だろ」

 その重い空気を最初に断ち切ったのは他でもないシャリオンであった。

「んでレイ、お前その桜の魔法、それってどんな魔法なんだ?」

「え、ん……そう言われても……すいません、実はよくわかってなくて……気づいたら生まれる者(ナートル)達が倒れていたというか……」

 その様子を見てアリアドネは更に考え込む。

「しかも当の本人は使った自覚がないと見える……うむむ……わからんの……」

 すると閃いた様子で人差し指をピンと伸ばし、オリヴィアが考えを言う。

「これはあくまで憶測にすぎませんが、本人が使った自覚がないのなら、他の()()がレイ様に魔法を使わせた……或いは何らかの条件を満たしたことで自動的に発動した……とか」

 それを聞いてアリアドネはちらと玲の魔剣を見て口を開く。

「魔剣と関係があるのかもしれんのっ———」

 ドゴオオオオオオン!

 アリアドネが言い終わるか、その直前に何か大きなものが洞窟の前に()()()来て、大量の土埃が舞う。

「なにごとだ!」

「何かが落ちてきた……?」

(レイ様をお守りできました……!)

 シャリオンはアリアドネを、オリヴィアは玲を守りながら洞窟の入口を警戒しながら呟く。

「この感じ……まさか……また奴が……」

 シャリオンの背後で横になっているアリアドネが言う。

 どんどんその土埃が晴れてくると同時に、その姿が見え始める。

「またあの親玉か……!」

 シャリオンが愚痴を零す。

 決して当たっては欲しくなかったそのアリアドネの予想は見事に的中してしまった。目の前にはアリアドネの魔力が尽きるまでに追いつめた、あの生まれる者(ナートル)の親玉的存在が洞窟の前になん十体も立っていた。



 十分前、場所は■■———

「全機、投入準備完了……いつでも出せます」

 電子パッドを片手に女性は言う。

「よし、よくやった……では……」

 巨大なモニターを見据えながら男性が言い、次の支持を仰ごうと女性を見ると、女性は何か言いたげな表情をしていた。

 そのモニターには洞窟の中で話している四人の姿がはっきりと映し出されていた。

「ん?どうした?」

「あの、本当によろしいのですか?」

 女性は少し不安の表情をした後、男性に聞く。

「今更何を……俺の言った通りの座標に投入すればいい」

「でもあそこは……」

「いいから、するんだ……ようやく見つけたんだ、取り逃したら次はいつ出会えるかもわからないんだぞ?君もそう思っているだろう」

 複雑な表情で女性は頷き、俯きながら言う。

「はい、私も取り逃したくはありません……でもこれはあまりにも……」

 それを聞いて男性は後ろで組んでいた腕を下ろし、女性の方へ体を向ける。

「優しいな、お前は……でもやるしかないのも事実……」

 少し間を置き、続ける。

「やっと見つけたんだ……()を———」

 その姿を見て女性も決心したように男性の目を見る。

「あなたがそういうのなら……わかりました」

 そういうと女性は再び手に持っている電子パッドを見て操作を始める。

 男性はようやく決心がついた様子の女性を見て安心したのか、はたまた決心したのか、微笑みながら誰も聞き取れないほど小さな声で呟く。

「……ごめんな……」



「炎魔法・五つの刃(サンク・ラム)!」

 シャリオンが向かってくる生まれる者(ナートル)の親玉達になんとか対抗している。

「風魔法・(ランス)!」

 それに合わせてオリヴィアがシャリオンと同じ標的を狙う。

 炎と風の刃と槍が生まれる者(ナートル)の親玉を襲う……が、頭が崩れたと思えばすぐに再生する。

「くそ、こいつ……レイ!魔法は!」

「やってますけど……!出ないんです!」

 先ほどから玲は剣を振るなり頭の中で魔法が出るイメージを何度もしているのだが、一向に出る気配がしない。

「レイ様!くっ……(シールド)!」

 魔法を出すのに必死だったためか、横からの攻撃に気づかずやられそうになったが、オリヴィアがなんとか守ってくれた。

「オリヴィアさん……!ありがとうございます……」

「お気になさらず!」

「アリアドネ様は!いつ復活できそうですか!」

「わしはもうすぐじゃ、おそらく三十秒ほどあれば復活じゃ」

 それを聞いてシャリオンは玲に命令を出す。

「レイ!アリアドネ様の援護をしろ!」

「は、はい!」

 そう言われ、すぐに洞窟の入口に立ち援護の体制をとる。

「くそ……なんで出ないんだよ……」

 玲が魔剣を握りしめながら愚痴を零していると後ろから肩をちょんちょんと突かれる。

「のう、レイ」

「うわ!ア、アリアドネさん……ど、どうしました?」

 玲が驚いた姿を見て満足したのかいたずらな笑みを浮かべ、すぐに真剣な表情になる。

「ちと、アドバイスをやろうかの」


 炎の剣が親玉を斬って、消滅し、また顕現させ、斬って、消滅する。

 それを何回もしていくうちに徐々に魔力が尽き始める。

「お兄様!」

 オリヴィアがこちらに走ってくる。

 来るな、そう叫ぼうとしたとき、急に電池が切れたように膝が九十度に折れ、地面に手をついてしまった。

「カ……ハ……ッ」

 見るとオリヴィアの背後には、親玉が接近していた。本人は気づいていない。

「グ……く……そ!」

 足もほとんど使えない状態にまでボロボロになっていた。

 腹部からは血が流れ、親玉による打撃で目の焦点が合わない。

 それでも立とうと努力するが、立てない。目の前でこちらに走ってくるオリヴィアがあの親玉にやられる所を見なければならないのと悟った時、目の前が光に包まれた。

 ついに天に召されたかと思ったが、違う。オリヴィアを襲おうとした親玉の頭に、誰かが乗っていることがわかった。

「……レイ……なのか……」

 地面に倒れたまま顔だけをその頭に向け、自分自身への確認をするように呟く。

「あと……アリアドネさ……ま?」

「よ~し!いいぞレイ!そのまま!」

「は、はい!」

 玲がアリアドネを背負って指示通りに何かをしている。

 数秒動きを止めたのち、アリアドネが後ろから背中を押すようにして手を這わせる。

「……よし、レイ!今じゃ!」

 そう叫ぶと同時に玲の目から稀残香(ラール・プリュム)が出る。しかし前回初めてそれが出た時よりも幾分か細く見える。が、それでいてその存在感は保っている。

 周りの親分達が一斉に玲の方を見ると同時に、魔剣を振る。

「———桜魔法……桜斬(おうざん)!」

 その刃はまるで柔らかい何かを切るように、素早く、そしていて豪快に周りにいた親分達の首を跳ね飛ばした。


———数時間後―――

「つまり……どうして急に使えるようになったんだ?その、桜魔法ってやつはよ」

 先ほどアリアドネが寝ていた場所に今度は何ならアリアドネの時よりも満身創痍となったシャリオンが寝ていた。その状態のまま目線だけ玲に向け、問いかけていた。

 質問された玲は頬をポリポリ搔き、返答を考える。

「わしが言おうかの」

 玲の後ろからひょっこり頭を出しそう言う。

 アリアドネはあれからずっと玲の背中に居心地がいいのかおんぶ状態でしがみついている。横からものすごい熱を帯びたオリヴィアの目線が気になるがそれはきっと気のせいである。

 コホンと一息つき、続ける。

「まぁ言えば簡単なんじゃがの、つまりはレイはまだ制御しきれてないんじゃよ、桜魔法をな。じゃからわしが一部玲の魔力を吸い取り、一時的にレイの魔力を体に適応させることで魔法が出せるようになったんじゃよ」

「なるほど……だから背中に……」

 オリヴィアが納得したように目を伏せ、こちらを一瞥する。

「な、なんじゃ……そんなに見つめよって……」

「いえなんでも」

(私もレイ様の背中に居候していたいというのにぃ……!)

 明らかに少し拗ねている。

「まぁ、てことはこれからしばらくはアリアドネ様がいれば問題なく使えるんだな?」

「はい、そうなります」

 シャリオンが自分の体を少し見た後、力なく頭を地面にゴツという音を立て目をつぶる。

「ま、俺はこの状態だからな、しばらくは鍛錬もできないし……仕方ないか……」

 すると横からその姿を心配そうに見つめるオリヴィアが手を挙げる。

「あ、あの……私がしましょうか……?」

 言うと、シャリオンがすぐに手をひらひらと振り否定する。

「いや、お前の魔法はちょいと構造が違うから、教えるのは無理だ。それにレイの場合体に魔力を適応させるために物理的に筋力をつけないとだからな。気持ちはありがたいよ。ありがとう」

 少し身じろぎをし、伸びをする。

「すまん、俺寝るわ。魔力が底をついた上に疲労が溜まりすぎた……」

 皆が見守る中、シャリオンは深い眠りにつく。



「はぁ……!はぁ!」

 ん……誰だ……

 体が上下に揺れていることがわかる。一定間隔で胸に何かあたっている。

「なんで……こんな……!」

 レイ……?

 シャリオンが目を開けると、目の前には玲の後頭部が見え、同時に自分が今おんぶされていることに気付く。そして、

「レ……イ?なんで走ってるんだ?」

「はぁ……あ、起きたんですね!よかったです……!でもすみません!説明してる暇ないかもです!」

 何をそんなに……

 そう思い後ろを見やると、アリアドネを抱えたオリヴィアも玲同様必死の形相で走っている。

 その後ろには―――

「なんだ……あれ……」

「シャリオンさん!少し揺れます!はっ!」

 そう宣言するとともに体が少し浮く感覚を覚えた。

 目線を前に戻すと、空であった。

「うわああ!?」

 どうやらそれほど高くはない崖から飛び降りたようだ。

 上を見ると同じく飛び降りたオリビヴィアが少し赤面しながらスカートを抑え、隣でオリヴィアに抱えられながら落ちているアリアドネは顔を青ざめさせ、泣き叫んでいた。

 そしてさらに上から降ってきたのは―――

「トカ……ゲ?」

 足は八本で、目は一つ、全身には包帯が巻かれ、周りに生えている大木の何倍もあるその巨体を見るとそれはまるで、トカゲのようにも見え……狙った獲物を絶対に逃がさんとする、猛獣の様でもあった。

皆さんこんにちは!隠岐供契です!

今回の話も読んでくれてありがとうございます!

第十二話、いかがでしたでしょうか??

よければコメントやブクマお願いします!してくれたら作者が飛んで喜びます!

「別界勇者」は毎週金曜日の20時投稿です!乞うご期待ください!!

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