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それが争う訳

()()()()()……ねぇ」

「宗教じみた言葉だが、無視は出来んな」



 異形の言葉を嚥下する。


 今世にて、虚はまだ宗教のような概念は確認していない。

 最初に接触した組織が規則などで全体を纏めることが主な東部管理局だったこともあり、何かを信じる心や神託、お告げなどの自分たちの外へ救いを求めるような人間は見たことがなかった。



『生前はそこら中に宗教団体が溢れていたものだがな、こっちでは宗教的な神のような存在の話も聞いたことは無い』

『しかし伝承や神話が残っているということは概念自体はあるのか?』

『今の私ではあまりにこの世界に対して無知すぎるな』



 思考を止め、異形との会話に戻る。


 虚が顔を上げると、どうやら虚の隙を伺っていたようで、異形たちの態勢がすぐに逃げることが出来るようなものになっていた。



「逃げるのは構わないが、聞きたいことが増えたのでな」

「すぐに追いかけるぞ」


「アッ、ハい。逃ゲナイです」



 逃げようとしていた姿勢を戻し、虚と正面から対話するものになった。


 虚の「追いかける」という言葉を聞いて何を思ったのか、これ以降の質問には真面目に、すんなりと答えるようになった。



「私が聞いた話では、お前たちは対話には応じるが、途中で急に襲ってくることがある。という話だったんだが」

「私との会話中にそういった素振りは見せないのだな」

「心変わりでもしたか?」



 虚の問いに異形は気まずそうな雰囲気を醸し出しながら、歯切れ悪く答える。



「イエ、あノ……そレは、」


「知性を付けたバカリの若者ガ、物珍しさと興味本位デやっタコトだ。我々全体がソウいった衝動を持ってイる訳ではない」


「若者か、お前たちにもそういった区分があるのだな」



 今まで黙っていた少々人間に造りが近い異形が声を発した。


 造りが似ているからなのか、先ほどまで話していた者よりも言葉が流暢に聞こえる。



「この戦いの火種はどっちだろうな」

「開拓に来ていた管理局側か、管理局を攻撃してしまったそちら側か」

「どちらも悪いと言えば悪いし、全体を見ればどちらも悪くないようにも見える」

「先んじて攻撃したその若者とやらを差し出せば終わりそうなものだがな」


「それハできナイ」


「ほう、なぜ?」



 虚が"元凶を引き渡せばいい"と言った瞬間に異形たちの雰囲気が変わった。


 警戒や敵意ではない。いうなれば家族を守ろうとする親心、であろうか。



「知性ヲ持っタ仲間と言うノハ、我々ニとッテ我々ノ中で知性を持タない全員ヲ失ったトシテでも守リたい存在ナのでス」


「知性のない奴らであればいくラでも引き渡すことハ出来るガ、知性のある者を差し出すコトハ出来ない。種族全体の問題なのダ、理解してクレ」



 虚は考える。


 正直な話、虚としては種族が一つ消える程度はどうでもいいし、管理局が負けることに関しても特に気にしない。


 自分の邪魔をしなければ世界情勢なんてどうでもよいのだ。


 だから、今ここで虚が悩む理由など欠片もないはずなのだが。



『利用価値のない他者を捨てて利用価値のある者を取る、その気持ちは分からなくはない』

『交渉に乗ってやるくらいは構わないか?』



 他人に対して関心を持たず、自分の周囲のことだけを気にする虚にとって、この異形たちの事情など知ったことではないはずなのだが、なぜか無視することが出来なかった。


 同情か、心変わりか、いずれにしろ普段の虚と異なる行動を取っていることに変わりはない。



「先ほど、戦っている理由がはっきりしていないと言ったな」

「はっきりしていないのに戦う理由はなんだ」

「ただ応戦しているだけなのか?」


「数体ノ知性のある者をアの者らによって失っタ。ソ奴らの弔イの為ニ戦っていたのダ。はじめはナ」


「初めは、ということは今は違うのか」



 そういった後、異形は口を閉じ、迷うように顔部分を左右へと捻る。


 話したくないのかとも思うが、そういった様子ではない。



「少し戦ってかラ、戦う必要がないのカモしれないト考えるようにナッテな。棲み処ヘ帰ろうとシタのだが、そのタイミングで知性のない者ドモが異常に発生スルようになって、未だに戦いが終わらないノダ」


「お前らだけでも引けばよかったじゃないか」

「あくまで知能の無い奴らが異常発生しただけなのだろう?」


「そレが……」



 またもや発言を止めた。


 今度は悩む様子などもなく、話したくない話題なのだと言外に虚に伝えている。


 しかし虚はそんなことを気にして質問を止める生き物ではない。


 目線で続きを急かすと、躊躇いながらも続きを話始めた。



「敵側へ向かっテいク者どもト共にいルト、戦わナケレば、とイう本能ノヨうなモのが刺激さレルノです」


「先ほどアなたを攻撃したのモ、ソノ衝動に逆らえずに行ったこトダ。知性を持つ我々にとって本能に逆らえないトイウのは恥以上ノ何物でもナイ」



 この言葉は、この知性を持つ異形が、人類と同等の知性を持つということの証明。知性を持たぬ異形をどうにかすれば、戦争が早々に終わる可能性があることを示唆していた。

      この先、星があるぞ     

     あぁ、星  おそらく星   


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