第7話 姑の嫌み
明美は楽しそうに塗り絵をしていた。そんな明美の顔を見て昭恵は小さな声で呟く。
「昼間、千津子さんと話したように……やっぱり私たち親子、似てないわよね……でも娘が老け顔になったら困るから……良かったわ、私に似てなくて」
昭恵は深く考えることもなく、夜になると敦士が帰ってきた。
昭恵は最近、帰りが遅い敦士に問い詰める。
「あなた!いつも帰りが遅いわね…もしてかして女が居るのね?!」
「ま……まさか……何を言うんだ」
「あなたは男前だから心配なのよ!悪い女がつかないか!」
「本当に違うよ……」
敦士は昭恵からの問いかけに焦る。
昭恵の言うとおり、敦士は非常にハンサムで過去に女性関係が派手だった。
一方で、千津子は娘、佳純のお着替えをさせていると……。毎回のごとく、伸子が嫌みを言う。
「千津子さん、前から思ってたのだけど、佳純ちゃんにもう少し可愛い服を着せたらどうなの?」
「素朴ながらも可愛いと思いますが……それに高い服はうちでは買えませんよ?」
「それは、息子の稼ぎが悪いと言いたいのかしら?」
「お義母さん!そう言うつもりではありません…」
「だからあなたみたいな嫁は嫌いなのよ……可愛げっていうものがないわ」
伸子は千津子のことが、とにかく気に入らなかった。
佳純は子供ながらに、母が悲しそうにしているのを見て、辛かったのだった。
夫の保が帰ってくると千津子は伸子のことを相談した。
「あなた……お義母さんのことだけど、私に対する当たりが強く感じるの……」
「母さんが?あー気難しい人だからね、あんまり気にするなよ?」
「そうじゃなくて……きっと、私のことが嫌いなのよ…」
「どうしようも出来ないだろう?母さんの性格なんだから」
「ねえ……私、辛いわ……あなたから、何か言ってくれないかしら?」
「分かったよ……あんまり効果ないと思うが」
保の態度に、もう少し優しくしてくれても良いじゃない……と思う千津子だった。
その夜、美智子は夢を見てうなされていた。夢の中で昭恵は問い詰める。
「美智子?何で?友達なのに、こんな仕打ちを!」
「昭恵!違うの!子供を取り替えたのは理由があるの!お願い!分かって!」
「いいえ!許せないわ……あなたを苦しめてやる!」
「やめて!昭恵……苦しいわ……離して……息が、息が出来ない……」
「あなたを殺さないと気が済まないわ!美智子……私と一緒に死ぬのよ!」
ハッ!と美智子は目が覚める。全身冷や汗がひどく、手が震えていた。
「夢だったのね……怖かった」
美智子は昭恵に子供を取り替えたことがバレた夢を見ていたのだった。
隣に眠る夫、宏を見てこの幸せを絶対に壊したくはない……そう強く思う美智子。