第6話 再会、そして小さな綻び
ある日、千津子の携帯電話が鳴った。画面には『昭恵』と表示されている。
「もしもし?千津子さん?」
「昭恵さん、久しぶりね?」
「ええ、ここ数ヶ月会ってなかったわよね?明美を連れて行くから、どこかで会わない?」
「良いわね!分かったわ……今日、時間あるかしら?」
千津子と昭恵は6年の間、何度か会ったりはしていた。
二人は場所を決め、久しぶりの再会を果たすことになった。 待ち合わせの公園で、二人は笑顔で抱き合った。
「久しぶりー!」
「元気だった?」
二人には、それぞれ娘の明美と佳純が寄り添っていた。
「明美ちゃん、久しぶりだねー」
「久しぶりー!」
子供たちは笑顔で挨拶をすると、遊び始めた。ベンチに腰掛け、子供たちを見守りながら、二人は近況を語り合う。
「成長すると、顔って変わるものね。赤ちゃんの頃はあんなに似ていたのに」
昭恵がしみじみと言った。
「本当、そうね!なんだか少し、佳純ちゃんは落ち着いた顔になったかしら?」
昭恵の言葉に千津子が答える。
「そうかもね……それにしても明美ちゃんは本当に美少女になったね?」
「そうなのよー。私の娘だから、おばさん顔になるんじゃないかって心配してたのに……不思議なものね。もしかして、旦那の美形の遺伝子かしら?」
昭恵は、娘の明美が想像以上に美しく成長したことに驚いていた。 その時、子供たちの間で言い争いが起きた。
「痛い!明美ちゃん、離してよ!」
佳純が泣きそうな顔で訴える。
「だって、これは私のオモチャだもん!」
明美は譲らない。
「明美ちゃん、それ本当は私のものなのに……」
オモチャの取り合いの末、明美は佳純を叩いてしまったのだ。
「こら!明美!佳純ちゃんを叩いちゃダメ!」
昭恵は声を荒げた。
「だって、欲しかったんだもん!」
「オモチャなら家にいっぱいあるでしょ!本当に明美はわがままな子!」
昭恵は娘を厳しく叱った。
「佳純……大丈夫?」
千津子が心配そうに声をかけると、佳純は涙を拭いてにこりと笑った。
「うん……大丈夫だよー」
「千津子ちゃん……ごめんね?おばさんも謝るから……ほら!明美も謝りなさい!」
「やだー!」
「謝りなさい!」
昭恵が促すが、明美はそっぽを向く。
「昭恵さんも、明美ちゃんも、気にしないで。佳純も怒ってないし……」
千津子は穏やかに二人を宥めた。
一方、美智子は数年前、昭恵の紹介で、宏という会社の社長と結婚していた。
宏との間には、4歳になる息子、透という可愛い子供にも恵まれた。 ずっと前から、愛する人との子供が欲しかった美智子の夢は、昭恵のおかげで叶ったのだ。
「あなた……愛してるわ……」
美智子は夫に抱きつき、甘える。
「やめろよ……照れくさいな……」
宏は照れながらも、嬉しそうに微笑んだ。お金持ちになったことよりも、愛する宏という伴侶を得られたことの方が、美智子にとっては何よりも幸せだった。
「今日も早く帰ってきてね?」
美智子は明るい声で言った。
「できるだけそうするよ」
宏はそう答えると、家を出て行った。
その頃、昭恵は自宅に戻り、今日の公園での出来事を思い出していた。特に、娘の明美の顔について考えていた。