第4話 入れ替わった運命
昭恵は、美智子の抱いている赤ちゃんの顔をじっと見つめた。 美智子は震えをこらえ、なんとか立っていた。
「あれ?美智子、どこに行ってたの?」
「昭恵が……遅かったから、心配して探しに行ったのよ……」
昭恵は、赤ちゃんが入れ替わっていることに全く気がついていなかった。
「あ~、ごめんね……初産だったから、ちょっと体調を崩しちゃって……」
「明美ちゃん、渡すね……」
美智子はそっと、明美(実際は佳純)を昭恵に手渡した。 昭恵はにこにこしながら、明美(実際は佳純)を抱きしめる。
その頃、佳純(実際は明美)は泣き始めた。 その声ですぐに目を覚ました千津子は、「どうしたの?」と娘の体を見た時、足に火傷の痕があることに気づいた。近くを見ると、ヤカンが倒れている。
「佳純!ごめんね!ヤカンの水がかかっちゃった?!あー、本当にごめん……」
千津子は慌てて先生を呼んだ。幸い軽い怪我で済み、処置を受けて事なきを得たが、千津子も娘が明美と入れ替わっていることには気づいていなかった。 千津子はひどくショックを受けた。自分のせいで娘に火傷を負わせてしまった……と、激しく自分を責めた。
「私は酷い母親よ……佳純……ごめんね……」
そこへ、保と伸子がやって来た。
「まあ!佳純ちゃん、大丈夫?痛かったでしょう?」
「佳純……大丈夫か!」
そして伸子と保は言った。
「千津子さん!あなた、何をしていたの?!母親が付き添っていながら、こんなことになるなんて!」
「お義母さん……ごめんなさい……私が付いていたのに……」
伸子は千津子を厳しく責めた。
「まあ……無事だったんだし……母さん、そんなに責めるのはやめなよ?千津子だって辛いんだよ……」
「何よ……あなたがそうやって甘やかすからダメなのよ!」
保と伸子は言い合いを始めた。
一方、昭恵の夫、敦士は出張から戻り、急いで病院に駆けつけた。
「昭恵!待たせたな!ごめんよ……」
「敦士さん……遅いわよ!まったく……何をしていたのよ……」
昭恵は敦士に不満をぶつけた。
「ほら……私たちの娘、明美よ」
「明美か……パパだよ!よろしくな?」
敦士も当然、何も気づかず、明美(実際は佳純)を自分の子と思い込み、優しく抱っこした。 側で見ていた美智子は、常に不安げな表情で二人を見守っていた。
「あなた?美智子さんがね、ずっと私のことをサポートしてくれてたのよ!」
「ああ……そうでしたか……美智子さん、妻のことを、ありがとうございます」
「いえ……昭恵とは長い付き合いですから……」
敦士の感謝の言葉に、美智子は複雑な気持ちを抱くのだった。