第14話 馴れない環境
透に家庭教師をつけることを話す美智子だが、乗り気の様子ではないことを察して心配している。
「いい?透……家庭教師はあなたのためなのよ?分かってくれるわね」
「わかったよ……」
「いい子ね、透は」
透は嫌々、返事をするのだった。
美智子は自室に戻ると、パソコンで家庭教師の情報をサイトで探していた。そしてある家庭教師に目をつける。
「この人、真面目そうで良いわね……経歴も悪くないわ」
美智子は、目を細めながら呟く。
一方、明美は新たに塾に通うようになる。
そこの塾では色々な子が通っている。大企業の娘や貧しい家の子など、年の近い子ばかりで明美は安心した。
しかし、明美のわがままな性格が出てしまう……。
塾に通い始めてから数日が経ったある日、隣の席の男の子のズボンを見て、悪気なく言う。
「ねえ?何で穴の空いたズボンなんか?恥ずかしくないの?」
その男の子は質素な格好をしていたが、決しておかしくはなかった。
「なんだよ!悪い?お金がないんだよ」
「そうなの?私の家はお金持ちよ?ズボンぐらい買ってあげる~」
明美は自慢気な表情だった。
「何で、赤の他人のお前にそんなこと言われないといけないんだよ!変わったヤツだな……俺の田舎では穴の空いたズボンなんて普通だぞ!」
「私はただ、心配で言っただけだもん……」
「心配って、お金持ってるからって自慢かよ……気分わるいな……話しかけてくるなよ」
「何よ……意地悪ね!」
明美は不貞腐れていた。
その後も、明美は他の子たちにも話しかけるが、他の子のしている遊び方が分からず、みんなと打ち解けることができなかった。
自宅に帰ると、明美は暗い表情をしていた。そんな明美を見て昭恵が聞く。
「明美、塾で何かあったの?」
「塾なんて嫌……学校の方が楽しいわ」
「どうして?」
「貧しい子の気持ちが分からないわ」
「貧しいって……あなたは立派な社長の娘よ?堂々としなさい」
明美は俯いて黙り込んでいた。そして昭恵は敦士に明美のことを相談した。
「あの子、塾が楽しくないみたい」
「そうか……どうしてなんだ?」
敦士は疑問に思い、問う。
「周りの子と打ち解けられないみたいなの」
「そうか……でも最初はそんなものじゃないか?」
「そうなのかしら……でも勉強は熱心にしてほしいし、困ったわね」
その頃、佳純の家庭でも塾の話が出ていた。千津子が保に相談をした。
「あなた?最近、塾に行ってる子が多いそうなの……佳純も塾へ行かせてあげたらどうかしら?」
「塾?うちにはそんなお金はないよ」
「私のパート勤めのお給料で何とかなるわ……」
「分かったが、佳純は頭が良いから塾なんて行く必要あるのか?」
「成績が良くなれば、いい学校へ行かせてあげられるかも知れないわ」
「好きにしろ」
「あなた!ありがとう」
その話を影から聞いていた、伸子と真知子は話し合う。
「また、千津子さんのお節介な性格が出ているわね」
「義姉さんは、娘思いなのよ……良いことでしょ?」
「でも、息子は嫌々承諾してるじゃない……千津子さんは自分勝手なのよ」
伸子は千津子のやることがとにかく気に入らなかった。