第13話 各家庭の教育方針
敦士は恭子にどちらが大切か迫られるも、困ったように言葉を濁す。
「恭子……僕には家庭があるんだ……もちろん、愛してるのは君だけだ!でも家庭を捨てるわけにもいかない……分かってくれるだろう?」
「分かったわ……私のことを愛してくれてるのね?でも会えないのは寂しい」
恭子は寂しげに呟いた。
「今は待ってくれないか?いつか君と二人だけの生活をしたい」
「どのぐらい待てば良いの?8年もあなたの愛人なのよ?」
「ごめん……できるだけ、君と会えるようにするから……」
「うん……敦士さん愛してるわ」
敦士は恭子をなだめるように抱き寄せると、二人は熱いハグを交わす。
一方で、千津子は久しぶりに昭恵に電話をかけた。千津子は明るい声で言う。
「もしもし?昭恵さん?」
「久しぶりね、元気?」
「元気よ……子どもたちを連れて、会いましょう?」
「良いわね、今日なんかどう?天気も良いし」
「良いわ……じゃあ、いつもの公園で」
そうして、それぞれ娘を連れて公園で会う……千津子と昭恵は会うとすぐに、久しぶり!、と話す。そして明美と佳純は以前、喧嘩はしたものの、徐々に仲良くなった。
明美が申し訳なさそうな態度で言う。
「佳純ちゃん……この前はごめんね」
「良いよ……私ね、明美ちゃんと仲良く遊びたい!」
「うん!遊ぼう~」
「明美ちゃん……こっちこっち!」
「佳純ちゃん……見つけた!ねえねえ?」
「なあに?」
「これあげる……お菓子だよ」
「わぁ……くまさんクッキーだ、ありがとう!明美ちゃん」
明美は自分の大好物である、『くまさんクッキー』を佳純にも分けてあげる。
仲の良い二人を見て、千津子と昭恵は優しく見守りながら語り合った。
「二人とも仲が良いわね」
「そうね……微笑ましいわ」
それから二人の娘は友達になり、遊ぶことが増えていった。鬼ごっこなどの活発な遊びをしたり……秘密基地を作って楽しく会話をしたり……色々なことをして過ごした。
そして3年の月日が流れる……2005年。
佳純と明美は9歳になっていた……。学校では勉強もだんだん、難しくなってくる頃だ。
昭恵の家庭では娘の将来について話し合っていた。敦士に必死そうに相談した。
「あなた、明美は将来……あなたの後を継いでもらいたいから……今から勉強に熱心にした方が良いわ!」
「昭恵、明美はまだ9歳だぞ……そういうのは中学に入ってからでも遅くないよ」
「ダメよ……明美には秀才になってもらわなくては……今習ってる他にも、塾に通わせましょう?」
「明美のやる気次第だな……強要はしたらダメだぞ?」
「分かってるわ」
その頃、美智子夫婦も同じように話していた。
「あなた……透も小学生になったことだし、家庭教師をつけたらどうかしら?」
「そうだな……勉強も透1人じゃ不安だしな?良い考えだ」
「決まりね!早速、透に話してみるわ」
美智子は2階に上がり透の部屋に入り、いかにも教育ママという風貌で、伝える。
「透……家庭教師をつけようかなって、お母さん考えてたのよ?」
美智子の言葉を聞くが、透は乗り気の様子ではなかった。